光の剣、力の片鱗
「セン」
リオンはセンの元に駆け寄ろうとしたが、それをクルスの剣が阻んだ。
「リオン様」
リリイとレイナが馬の鞭を打った。そして、我が君主を救うべく、リオンの元に走った。
「二人とも来るな」
リオンは心配する二人に怒鳴ると、今度はクルスの方をじっと睨み付けた。
「良い眼になりましたな」
「一騎討ちか。受けて立とう」
リオンは腰から剣を抜いた。それを見てリリィが叫ぶ。
「なりません。リオン様」
「すまないが、少し遠くにいてくれないか?」
リオンはリリィの方を見ずに言うと、クルスと対峙した。そして、そのまま右に向かって、ザッザッと地面を踏み、ゆっくりと歩いた。
「行くぞ」
「良いでしょう」
リオンはクルスに向かって飛び掛かった。あの温厚な彼からは想像もつかない動きに、ディタール側の人間達の方が、寧ろ戦慄していた。クルスは彼の一撃を、同じく剣で防ぐと、彼の腹を足で蹴り、距離を取った。
「秘技、ショックセイバー」
クルスの剣に雷が落ちた。センに放ったのと同じ技である。しかし、今度は地面に突き刺すのではなく、剣に雷を付加した状態で、リオンに斬り掛かった。
「地面に雷を流すよりも、直接斬撃にて流す方が高威力だ」
「うおおお」
リオンは剣を振り回すと、クルスの一撃をそれで受けた。しかし、金属はよく電気を通すらしく、彼の体は剣を伝い、雷を全身に浴びた。
何かが裂けるような音がした。四方からリオンに向かって叫び声が飛んだ。中には涙している者さえいた。リオンは驚くほどゆっくりと、地面の上に倒れると、持っていた剣を放した。
「先生…」
耳元で生徒達の声が聞こえた。これは間違いなく幻聴だ。しかし、この悲しさは何なのだろう。何故、生徒達はこんなにも寂しそうに僕を見るのだろう。リオンは薄れ行く意識の中で自問自答していた。生徒達を守らなければならない。彼の胸に熱い想いが込み上げて来た。
昔、まだ教育実習生だった頃、木の上の蜂の巣が気になって、授業に集中できない生徒がいた。リオンはその生徒のために蜂の巣を取ろうとした。しかし、そのせいで蜂に刺され、一度死に掛けた。その時に見た生徒達の心配そうな表情は生涯忘れることは無いだろう。リオンは思った。死んでいる場合ではない。
リオンの祈りが天に届いたのか、それとも彼の潜在能力の開花なのかは分からないが、彼の右手には金色に輝く剣の形をした光が握られていた。それは物体には見えず、何かを握っている感覚は無く、ただ暖かかった。
「何だそれは。まさか…」
クルスは何かに気付いたらしく、急に怯え始めた。リオンは無意識に光の剣を降り下ろすと、肩から斜めに真っ直ぐと、クルトの体を引き裂いた。