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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第4章 レン編
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私は捕まらないよ

 仁はレンから離れると、倒れているウィリアムにゆっくりと近付いた。彼は本当に気を失っているのだろうか、それを確かめる必要があった。

「おい、起きてるか?」

 応答は無い。彼は眼を瞑ったまま、セミの抜け殻のように動かなくなっていた。

「最悪だ・・・・」

 ぼそりと低い声で愚痴めいた言葉が、ウィリアムの方から聞こえて来た。

「こいつ、起きているのか」


 仁はウィリアムから少し離れると、彼の次の攻撃に備えた。今のところ分かっているのは、彼の能力が酸素を発火させる能力だということだけだ。その能力のリーチや弱点に関しては全く分かっていない。


「私のバーストショットは。遠くからでも使える、本当に便利な能力だが、人を一撃で殺す必殺力に欠けるな。君を焼き殺すのに、一体何回能力を発動すれば良いんだ」

「お前・・・・」

「私は捕まらないよ。せっかくやり直せるチャンスなんだ。今日のところは、君らの勝ちにしてやるが。おかげで悟ったことが一つある。もっとこの町で能力者を増やさなければ、私が死ぬということを学んだよ」


 ウィリアムは立ち上がると、ポケットに指を突っ込んで、何かの液体で湿っている和紙を一枚取り出した。そしてそれをグチャグチャに手で握って丸めた。


「本当は嫌なんだ。私にとっては切り札とも言える能力を、ここで君らに披露するのは。いくら自分が強いからと言って、手の内を全て晒すのははっきり言って怖い」

「何言ってやがる」

「僕のもう一つの能力。カウントダウン」

 ウィリアムは丸めた和紙を、軽く仁達の頭上目掛けて投げた。そしてニヤリと笑った。

「カウントダウンは、触れた物体を好きなタイミングで発火させることができる。そしてその威力はバーストショットの約3倍。さらに付け加えれば、その和紙には油が塗ってあるんだ。良く燃え広がるだろうな」


「レン、伏せろ」

 仁は咄嗟にレンの方を振り向くと、彼女の頬を思い切り殴り付けた。

「あうう」

 レンの華奢な体はいとも簡単に吹き飛び、そのまま仁よりも数メートルは離れた路上に投げ出された。残された仁の頭上に、一枚の和紙がフワッとゆっくり落下していた。瞬間、彼の眼前に火柱が現れた。

 ウィリアムはクルッと仁達から背を向けて、その場から歩いて立ち去った。そして、彼の背後は紅蓮の炎で真っ赤に燃え盛っていた。


「うおおおお」

 仁は咄嗟に炎の反対側に向かって走ると、気絶しているレンを抱き上げて、路地裏の中に逃げ込んだ。背後では人々の悲鳴と炎の燃え盛る音が聞こえており、町中は久しく無いパニック状態に陥っていた。

「はあ・・・・はあ・・・・危なかったぜ。能力で自分の皮膚を強化したからな。そう簡単に焼かれる心配は無いが。野郎に勘付かれた以上、今までよりも遥かに多くの人間がエヌによって、能力者になって行くだろうぜ」

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