鬼ごっこしようよ
レンと仁は銅像公園に戻ると、ベンチに腰掛けていた。
「随分と早い買い物でしたね」
「必要な情報は手に入った。疑惑が確信に変わったってやつだ。とにかく、俺は帰る。お前も宿題やれよ」
「へへ、その前に」
レンはポケットから、ラップに包まれたサンドイッチを取り出して、嬉しそうにラップを外していた。
「エスティーさんが作ってくれた、ミートボールサンドです。デミグラスソースがパンに溶け込んで最高なんです」
「良かったな。じゃ、俺は帰るから」
仁はそのまま公園を出て行った。
「じゃあ早速、頂きま…」
言い掛けた矢先に、レンの手からサンドイッチが消えた。正式には、横からかっぱられたのである。
「へへ、ラッキー」
サンドイッチを右手に掴んだ、見るからに生意気そうな少年は、見た目、10歳から12歳程度に見えた。半ズボンを穿き、鼻水を垂らしている。
「こ、こら返せガキ」
レンはベンチから立ち上がると、ガキを後ろから追い掛けた。
「けけけ、嫌だよ」
「今なら怒らないから。早く返して。ミートボールサンドの味が、しょっぱいか甘いかの区別しか着かないようなガキに分かるはずがないよ」
ガキはその発言に気を悪くしたのか、その場で立ち止まると、レンをキリッと睨み付けた。
「こいつが欲しいのなら、僕と鬼ごっこしようよ。もちろん、あんたが鬼だ。一回でも、僕の体に触れることができたなら、こいつは返しましょう」
ガキの雰囲気が変わった。まるで一流のギャンブラーのような眼だった。
「馬鹿馬鹿しい」
レンはクルリとガキに背を向けると、突然、振り返って、ガキに向けてロープを投げた。
(服の紐をロープに変えた。ちょっと卑怯かな?)
ロープはガキの体をグルグル巻きにするはずだったが、何故か、ガキの体に触れることはできず、その場でズタズタに裂かれてしまった。
「え、嘘?」
レンは呆然としていた。ガキはそんなレンを見て、ニヤリと口元を歪めていた。
「騙し討ちとは酷い奴だ。年上のクセに。僕を捕まえたければ、イカサマ抜きでお願いします」
「テメー何者だ?」
「察しは付いているでしょ。あなたと同じ仲間ですよ。僕の能力名はメジャーハート。僕を今から24時間いないに捕まえないと。あなた、くく、死にますよ」
レンの額に汗の粒が浮かび上がった。このガキは能力者で、自分はまんまとその罠にハマってしまったのだ。
「ルールを言いますよ。僕はあなたと違って清い人間だからね、まず、あなたは僕を捕まえるまで、この公園からは出られません。もちろん、僕も同じ。助けを呼ぼうだとか、そんなことはできないわけだ。腹が減ったら、そこらに生えてるキノコでも摘まんでください。僕にはミートボールサンドがありますから」
「うるさい奴だな。さっさと始めれば良いのに」
「良いでしょう。では行きますよ。レッツスタート」