ショッピングに行こう
レンは家から1分ほどの距離にある、銅像公園にいた。娯楽の少ないグリーンマイルでは、休日多くの人が訪れている。
「ふう」
レンはベンチに腰掛けて、子供達が遊んでいるのを見ていた。この前の一件以来、外出の際は、猫耳フードを頭にすっぽりと被っている。朝、エスティーに見せたら、あまりの可愛さに卒倒した。
「あ、仁さん」
レンは何だかソワソワしている仁の姿に気付き、ベンチの上から手を振った。彼は気付いてはいたみたいだが、すぐに目を背けて、公園の出口に向かって歩き出した。
「仁さんてば、無視しないでよ」
レンは仁の後に走って追い付くと、上目遣いに彼を睨んだ。
「おっと、お前だったのか、気付かなかったぜ」
「嘘でしょ」
「いや、マジだ。随分と変わったな」
仁は不思議そうにレンを見ていた。無理もない。頭には猫耳フードを被り、服は胸元を強調したシャツに、スカートはミニのタイトスカートである。すっかり女らしくなったレンに違和感を覚えていた。
「これは仕方なくやってるだけです。本当は凄い恥ずかしいんですから、皆、こっち振り向くし、見るならもっと上手くやって欲しいですよ。性的な目で見てるのバレバレ」
「まあ、俺には関係無いがな。これから買い物に行くんだ」
「へえ、オレも連れてってくださいよ」
仁は眉に皺を寄せると、レンを無視して踵を返した。
「遊びじゃねえよ。マジでヤバイんだ。下手すりゃ命に関わる」
「バーゲンセールですか?」
「俺はマジだぜ。死にたきゃついて来ても良いが、家に帰った方が身のためだ」
「そう言われると、行きたくなりますよ」
結局、レンは仁の後について行くことにした。仁は地図を片手に人通りの少ない路地を通って、周囲を見回していた。
「仁さん。買い物なら、もっと開けた場所に出た方が…」
「いや、ここで良い。俺が買いに来たのは情報だからな」
「情報?」
「ああ、俺達を攻撃して来やがったターニアに、口を割らせたところ、あいつはこの先にある闇市場で、エヌを手に入れたらしい。今からそこに行き、商人からエヌの仕入れ先を聞く」
仁とレンは路地を抜けると、住宅地に囲まれた、コンクリートの広場に辿り着いた。そこでは、バザーが行われており、中には質の悪そうな客が多く入り乱れ、そのほとんどが、白髪頭の老人か中年の男性だった。
「おい、この薬を知らねえか?」
仁は赤いテントの前に座っている老人に、赤いカプセルを見せた。
「ああ、知ってるよ。今は無いが、この前に、帽子を被ったガキが買ってったんだ」
「失礼だが、この薬を何処で仕入れた?」
仁の言葉に老人は警戒を強めたが、彼の態度に圧され、やがて、ゆっくりと話し始めた。
「確か、短い金髪の男だったよ。何と言うか、インテリ臭いって言うか、賢こぶってそうな声をしていたな。いきなり現れて、挨拶無しに、こいつを売れば儲かるって、この薬を渡して来たんだ
仁はそれだけ聞くと、情報量として、老人に金を渡した。そして、レンを連れて市場から出て行った。