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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第4章 レン編
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エステで大変身前篇

 レンとフローラ、そしてマックスは三人並んで登校していた。レンの熱もすっかりと引いて、血色の良い顔色に戻っていた。そんな彼女の横顔を、マックスは嬉しそうに見ていた。


(可愛いぜレン。お前はそうやっていつも強気でいるが、俺になら甘えても良いんだぜ)

「あ~あ。もっと休みたかったな学校・・・・」

「もうレンちゃんたら・・・・」

(お前が次に熱なんて出したら、俺が一日中看病してやる。そして俺に惚れさせるんだ。他の男には見せない女の顔を、俺だけに見せてくれ)


 三人はエンシャント学園に行くには避けては通れない、心臓破りの坂を越えて、ようやく校門に辿り付いた。いつもは辛いこの道も、マックスにはレンと歩ける貴重な場所だった。


「なあマックス。なんでお前喋らないんだ。キモいよ」

 レンがマックスのことを見ながら言った。

「へへへ、うるさいより良いだろ」

(くそ、可愛いなこいつ。俺とお喋りしたかったのか)


 教室に付いたレンを大勢の男子達が囲んだ。

「レンちゃん。無事だったんだね。良かった」

「ああ、やっぱりレンちゃんがいないと、学校に華が無いよな」

 馬鹿な男子達の戯言をレンは笑って誤魔化した。

「大げさだな。オレ一人でそんなに変わるかよ」


 相変わらず大人気のレンを女子達が冷たい目で見ていた。しかしそんな視線を気にするほど、レンも細かい性格では無い。


「ちょっとレンさん・・・・」

 休み時間、レンの席にに一人の女子が訪れて来た。彼女はワカメのような黒髪のロングヘヤーで、前髪が目元まで垂れていたので、やや不気味だった。

「何、パメラさん?」

「あなた天中殺という言葉を知っているかしら?」

「え、知らない。何それ美味しいの?」


 パメラはレンの椅子に半分座ると、彼女の耳元でそっと囁いた。

「あなた、今日から半年の間、人生最悪の不幸に見舞われるわ」

「はあ?」

「私の予言に出ているのよ。何とかしなきゃ手遅れになるわ」

「まさかぁ。パメラさんったら」


 レンはパメラの背中を叩いた。元男だけあって、それなりに力を入れて叩いていた。まだレンは、女子同士の人間関係を理解していないらしい。パメラは竦み上がって、その場から逃げだしてしまった。


 レン自体は、その予言を一切信じていなかったが、この時から彼女の受難が始まった。簡単に説明すると、やること為すこと、全てが上手くいかないのである。学校帰りに近道をしようとすれば、犬の糞を踏み。宿題を間違えてやったり、カフェで客の頭上にコーヒーをぶちまけてしまったり、他人から見ても異常さが伝わるほどに、レンは絶不調になっていた。


「外に出るの怖いから。今日は家で寝てよ」

 休日になると、レンは朝から布団を敷いて、その中で丸くなっていた。外に出ると次々と嫌な出来事が起こるので、家から出ないように工夫したのだ。

「これで安心・・・・」

 レンは布団の中で自分にガッツポーズをすると、そんな彼女を嘲笑うかのような出来事が起こった。


「ん?」

 レンの視界が暗くなった。思わず天井の方を見ると、部屋に置いてあった本棚が、彼女の頭上目掛けて倒れて来たのだ。

「うああああ」

 レンはゴロゴロと転がって布団から出ると、数秒前まで彼女が寝ていた場所に本棚が倒れていた。

「ああ・・・・助けて」

 レンは半べそ掻くと、そのままパジャマ姿のまま家を飛び出した。向かう先はただ一つ。それはフローラの家でも、マックスの家でも無い。それはパメラの家である。


「ああ、レンじゃん」

 突然、レンの目の前に包帯で顔を巻いたミイラが現れた。ミイラは包帯のせいで声が曇っていたが、どうやらレンに好意を持っているらしく、フレンドリーな態度で話し掛けて来た。

「誰だよ。お前?」

「僕は、まあ君とは直接会ったことは無いけど。良く知ってるんだ。名前はターニア」

「ターニアだと・・・・」


 レンはターニアのことを仁から聞いていたので、すぐに臨戦態勢になった。

「掛かって来い」

「ちょっと待ってよ。この怪我を見て。マックスの奴にやられたんだ。もうあんたらと喧嘩するのは真っ平だよ。それよりも僕にできることは無い?」

「あるよ。オレの前から消えることだよ」


 レンはターニアを無視すると、そのまま坂道を下ってパメラの家を目指した。

「うわああああ」

 坂道で足を滑らせて、雪だるまのごとく坂を転げ落ちて行くレン。かつてこれほどまでに不幸な目に遭った試しは無い。ゲスラーに殺されかけて性転換させられた時が、今までの人生最悪だったが、今回の

ことで記録が更新されたらしい。


「痛・・・・」

 幸い、全身傷だらけではあったが、大事な頭部をぶつけること無く、下まで降りることができた。ある意味では幸運なのかも知れない。

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