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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第4章 レン編
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マックスお前もか

 マックスは頭に無数の瘤を作ったまま床に倒れていた。近くには先端がボロボロになった箒が立て掛けてある。お粥を食べ終えたレンは、気持ち良さそうに寝息を立てていた。エスティーは眠っているレンの頬を指で軽く突いた。


「可愛いわ。本当に。レンちゃんを傷付ける人は誰であろうと許さないわ」

「エスティーさん。だから誤解ですって。俺は頼まれて体を拭こうとしただけで、やましい気持ちはありますが、別にどうしようとか、そういうつもりはありません。所謂思春期独特の健康的な欲求です」

「言ったでしょ。早く帰りなさいって」

「待ってくれ。許してくれるまで俺は帰リたくない」


 マックスとエスティーは無言で睨み合っていた。しかし彼女の顔があまりにも険しいので、マックスは諦めてしまった。


「分かりましたよ。俺は帰ります」

 マックスは学校のバッグを肩に掛けて、部屋を出ると、そのままコロンコロンから出て行った。

 外は完全に陽が落ちており、各家の前には松明の火が掲げられていた。


「マックス・・・・」

 背後から女性のものと思われる不気味な声が聞こえて来た。

「おいおい、誰だよ」

 マックスは平静を装って返事したが、内心はかなりビビっていた。というのも、エスティーがナイフを片手に自分を襲いに来るのでは無いかと、外に出てからずっと考えていたからだ。


「僕の名はターニア。君達よりも一応一つ年上なんだけど、まあ関係無いね」

「先輩、何の用っすか?」

「コロンコロンってどっちに行けば良いんだっけかな。僕、隣町に住んでいるから、グリーンマイルについて良く知らないんだ」

「へえ、でももう店仕舞いですよ。今から言ったってね」


 マックスはそれだけ告げると、クルリとターニアから背を向けて歩き始めた。ターニアは小さく舌打ちをすると、丁度、自分の近くにあったゴミ箱のカゴに手を向けた。

「ピンポイントショット」

 ゴミ箱が一瞬にしてマックスの頭上に出現した。

「な、危ねえ」

 マックスはゴミ箱の存在に気が付くと、それの前に手を向けた。


「ビートダウン」

 マックスの掌から炎弾が放たれて、ゴミ箱を一瞬にして消しカスに変えてしまった。

「う、嘘だろ・・・・?」

 その現象に一番驚いたのはターニアである。マックスが超能力者であるなど、疑いすらしなかったからだ。恐らく、仁などの、彼の周りにいる人間達もその事実を知らないだろう。


「超能力を使えたの?」

「超能力って言うのか。俺が小さい頃からあった力だ。周りは誰も持っていない。親すら知らない秘密だったんだが、咄嗟に使っちまったぜ」

「こいつは驚いたよ。生き別れの兄弟と再会したような衝撃だ」


 ターニアは懐の鉄棒を3本ばかり撫でると、それをマックスの頭上に出現させた。


「テメーも芸が無いな」

 マックスは鼻で笑った。そして今度は全身に力を込めて体から高熱を放出した。あまりの熱さに、レンガ作りのオシャレな床が、全て溶けてしまった。

「燃えな」

 マックスに刺さるはずだった鉄棒が、彼の体に触れるよりも速く溶けてしまった。


「もしかしてよ。俺とお前以外にもコレを持っている奴っているのか?」

「いるも何も、お前の身近にいる奴らはほとんど持っているよ。例えばフローラやレンとかね」

「レンも持っているのか・・・・」


 マックスは心なしか嬉しそうだった。鼻の下を伸ばしてにやけていたのだ。この状況で笑えるのも大した神経だが、それよりも彼の笑った動機の方が、ターニアは気になっていた。


「実はよ。お前に話してもしょうがねえけど。レンに惚れちまったんだ。マジで好きなんだぜ。ルックスとか越えて、彼女の精神に惚れてるんだ。男勝りと言うか、可愛いけど女々しく無い部分が特にな」

「お前のことなんか、僕には興味が無いんだよ」

 ターニアは地面に落ちている石を拾おうと手を伸ばした。


「おおっと。そうはさせないぜ」

 マックスは拳を握りしめると、ターニアの目の前にまで走って行った。そして彼女が顔を上げるよりも速く、彼女の顔面に熱を帯びた拳を叩き付けた。

「がは・・・・」

「ほらよ」

 顔を殴られてよろけるターニアの顔に、今度は強烈な回し蹴りを喰らわせた。

「がはあああああ」

 ターニアは顔の皮膚をドロドロに溶かしながら、別のゴミ箱のカゴに頭から突っ込んで行った。


「ふううう。俺以外に力を持った奴がいたなんてな。これは面白くなって来たぜ」

 ビートダウン。それは熱と炎を自在に操る能力である。

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