アイアンメイデンの進化
フローラは仰向けに倒れると、煙に包まれて、どうなっているのか、外からは確認できなかった。
「あはははは。僕の勝ちだね。こんなに簡単に始末できるとは思わなかったよ」
「始末だと。テメー何か勘違いしてないか?」
仁はターニアの背後を指してニヤリと笑った。ターニアの背後にはアイアンメイデンが浮かんでいる。しかしその表面にはひびが入っており、緑色の表面が剥がれ、中から金色の光が漏れていた。
「何だ。これは。壊れかけじゃないか」
ターニアはアイアンメイデンを右足で蹴り飛ばした。アイアンメイデンはピンボールの玉のように壁にぶつかり、跳ね返ると、表面が完全に砕け、表面の色が緑から金に変化した。
「何だ。意味が分からないぞ」
「すぐに分かるさ」
いつの間にか、地面の上に倒れていたフローラが起き上がっていた。彼女は指を鳴らすと、アイアンメイデンを自分の頭上に誘導した。
「お前はアイアンメイデンに狙撃されたはず」
「確かに狙撃されたけど、これは私自身の能力よ。自分の能力に攻撃されてダメージを受けるということは、蜘蛛が自分の毒で死ぬようなもの。有り得ないの」
アイアンメイデンはターニアの額に照準を合わせていた。
「ありがとう。あなたのおかげで私のアイアンメイデンは進化できた」
アイアンメイデンの穴から弾丸が発射され、ターニアの額を狙い撃ちにした。
「がはああああ」
ターニアは背後に吹き飛ぶと、そのまま、近くの民家の花壇のレンガの上に立った。
「はあ・・・・はあ・・・・。僕の能力は私自身を瞬間移動させることはできないが。僕の足元にあるレンガを移動させることはできる。このレンガを移動させれば、その上にいる僕も瞬間移動できる」
「まずいぞ。フローラ早く撃て」
アイアンメイデンの弾丸よりも速く、ターニアはレンガごと消えてしまった。
「ジンさん。逃がしちゃいました」
「いや、上出来だ。生き延びただけでもな。しかし驚いたぞ。君のアイアンメイデン。性能は上がったようだが、威力が以前より落ちていないか。以前ならば、額への集中攻撃の時点であいつは死んでいた」
「それが、進化したアイアンメイデンは、私の目玉の一部のように、アイアンメイデンから見た場所を、私自身が見ることができるのですが、代わりに弾丸一発の威力が下がっちゃってるみたいで」
仁は立ち上がると、フローラに支えられてゆっくりと歩いた。
「前みたいに音を頼りに無差別攻撃することは無くなったが、代わりに威力が落ちたのか。だがこれで、少なくとも、関係無い人や味方を撃つことは無くなったな」
「はい。敢えて名付けるとすれば。アイアンメイデンLEVEL2とでも名付けておきます」
「とにかくだ。急がないとあの女、レンの所に行くかも知れないぜ。こいつは急がねえとな」
仁とフローラはコロンコロンに向かって歩き始めた。ターニアは果たして何処に消えたのか、仁は嫌な予感がしていた。