目覚めろアイアンメイデン
仁は老婆を病院に連れて行った後、自分はコロンコロンに向かっていた。
「急がないとな。次に狙われるのは二人だ・・・・」
「あ、先生」
背後からフローラがこちらに走って来た。彼女は右手に買い物袋を持っていた。
「先生、肩から血が・・・・」
フローラは仁の怪我に気が付くと、顔を青くしていた。
「気にするな。今はそれどころじゃない。ついに帽子の奴が現れた。名前はターニアと言うらしい」
「え、じゃあその人にやられたんですか?」
「ああ、少しだけ傷付いたぜ。体よりも心がな。正直侮っていた。まさか俺を襲撃しに来るとはな」
フローラは買い物袋を腕に掛けると、仁の体を右から支えた。
「大丈夫だ。俺は放っておいてくれ。それよりも君が危ない」
仁は空を見上げると、頭上から鉄棒が二人に向かって降って来た。数は全部で7本ある。
「避けろ」
仁はフローラを突き飛ばすと、7本の鉄棒を拳のラッシュで全て撃ち落した。
「はあ・・・・はあ・・・・」
仁は全てを避けたが、先程のダメージが効いていたらしく、その場に崩れ落ちた。フローラはすぐに立ち上がると、仁の元に駆け寄った。
「先生。私のために」
「アーツで拳の骨を強化しておいた。しかし、能力を使うには怪我が酷過ぎたようだ。しばらく動けそうにない。空からの攻撃に気を付けてくれ。そしてアイアンメイデンを出して逃げろ」
「無理です。こんな状態の先生を置いて行けません」
フローラは自分よりも遥かに大きい仁を背中に抱えようとしたが、そのまま彼の重みに潰されてしまった。
「おいおい、先生の言うことは聞くもんだよ」
遠くから茶化すような声とともに、ターニアがフローラの前に現れた。
「マズイ・・・・逃げろフローラ」
「逃げません。私が闘います」
フローラーの頭上にアイアンメイデンがプカプカと浮いていた。そしてターニアの額に照準を合わせた。
「君の能力は知っている。アイアンメイデン。音の大きな方を優先的に攻撃する。でも私は音を立てずに攻撃できる」
ターニアは火炎瓶を右手に持っていた。そして不敵に笑った。
「さよなら」
「アイアンメイデン」
「遅い」
ターニアは火炎瓶を放り投げると、フローラの頭上にそれは出現した。そしてフローラーの頭上で割れると、彼女の体を真紅の炎に包んだ。
「あはははは。勝ったわ。やっぱり僕の方が格上だったね。そして君への攻撃はまだ続く」
アイアンメイデンがフローラーに照準を合わせた。音のする方を攻撃する。アイアンメイデンの悪い部分が出たのだ。
「く、逃げろフローラ」
仁の叫びも空しく、アイアンメイデンはフローラの顔目掛けて、機関銃の如き弾丸を発射した。