裸の付き合い
ヒョウは階段から真っ逆さまに落ちると、床に頭から突っ込んで、フラフラと立ち上がった。
「やるな。落ちた先が板でなく、コンクリートだったら、死んでいたかもな」
「そこも計算して落としたの。ありがとうは?」
「ムカつくぜお前。だが嫌いなタイプじゃねえ」
ヒョウは自分の周りの空気を急速に凍らせた。バリバリと耳障りな音が聞こえる。
「やば」
レンは二階の窓から、木の枝に飛び移ると、猿のように次々と木から木へ移動して行った。
「わっ、ちょ」
途中、うっかり足を滑らせたレンは、煙突に落下。知らない民家の中に入ってしまった。
とある民家の中で、一人の冴えない小太りの男性がいた。彼はその容姿から、女性とは無縁の環境で生きて来た。
「ああ、神様。可愛い女の子を僕に下さい」
男の祈りが天に通じることは無いが、突然、彼の部屋の暖炉の中に、上半身裸の美少女が降って来た。
「痛てて、ああ、もう最悪」
美少女は尻をぶつけたらしく、手で押さえていた。
「ぬおおお、空から可愛い女の子が。神様ありがとう」
泣きじゃくる男を無視して、レンは立ち上がった。そして、目の前で感動している男を横目で見た。
「ねえ、勝手に入って悪いんだけど、今、落ちた時に尻を打った。傷になってないかな?」
レンは男に背を向けると、スカートからパンティーをずらして、尻を突き出した。白い小振りな白桃が、男の視線を直撃した。
「神様ありがとう。俺、もう彼女とか要らねえ。こんな幸せ耐えられねぇよ」
男は鼻血を噴射しながら、ひっくり返り、泡を吹いていた。
「おい、大丈夫か?」
レンは倒れている男を左右に揺さぶった。窓に白い霜が付着し、ピキピキッと音を立てていた。
「もう来やがった」
レンは部屋のカーテンを千切ると、それをバスローブのように、体に巻いた。そして、気絶している男を引きずって、攻撃に巻き込まれないように、クローゼットに入れた。
窓にひびが入り、勢い良く割れた。レンは慌てて振り向くと、近くのテーブルの下に隠れた。
「おい、ここにいたのか。さっさと凍らせてやるからな」
窓の中からヒョウが現れて、足元の床を凍らせた。まるでスケートリンクのように、床一面銀色の世界へと変わった。
「そら、見つけたぜ」
足を滑らせないように、テーブルの脚にしがみつくレンを見つけて、ヒョウは氷の床を走り、レンの元に向かった。ヒョウ自身は氷に滑ることは無いらしく、とても軽快な足取りだ。
「うああああ」
レンは叫びながら床を叩いた。床の氷が砕け、一部、氷の塊が氷柱のようになって、レンの足元に転がった。
「終わりだ」
ヒョウの蹴りがレンの顔目掛けて、真っ直ぐに放たれた。同時にレンは砕いた氷の塊を掴んで、それをヒョウに向けた。
「氷の塊は物質だ。プリンスでこいつをハンマーにする」
レンの両手には大きなスレッジハンマーが握られている。氷の塊を能力によって、変化させたらしい。
「喰らいな」
「ごふ」
レンのスレッジハンマーが、ヒョウの顔面を右から殴り付けた。彼は口から涎を垂らしながら、床の上を顔で滑って行った。