表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第1章・リオン編
16/243

流麗なるもの

「皆、無事か?」

照りつける太陽の光が、リオンの視界を遮った。グロス城に備え付けられた大砲は、既に青い光を吸収し、第二波を撃つ準備をしていた。

「リオン様」

リリィが泥だらけの体に鞭打って、リオンの元に駆け付けた。彼女も落馬したようで、体には至るところに擦った痕があった。

「早く、ここから逃げるんだ。あの大砲はマズイ」

傷だらけの二人の前を一人の少女が駆け抜けて行った。

「ここはあたしに任せな」

それはホムンクルスの少女リンだった。彼女は一人だけ無傷で、手には大きな斧が握り、大砲に向かって走った。


「何故、彼女は無傷なんだろう」

「きっと、彼女がホムンクルスだからです。ホムンクルスは魔法によって造られた存在、故に魔法には耐性かあるのです。つまりあの大砲から発射されているのは、魔力の塊」

リンには、赤魔賊に拾われた以前の経験が無かった。ホムンクルスである彼女を生み出したのは誰なのか、男か女か、どんな声なのか、どんな顔なのかも分からなかった。感情を持たない人形であるリンに、楽しいことや悲しいことを教えてくれたのは、皮肉にも社会の底辺である盗賊であった。


「目的があるのは楽しい」

リンは誰かのためになることで、自分の存在意義を見出だしていた。赤魔賊から離れた今、彼女の生きる目的は、自分を拾ってくれた人達を守ることだった。

「将軍、可愛い女の子が斧持って走って来ます」

兵士は震え声で叫んだ。

「まるで鴨かネギ背負ってやって来たみたいな言い方だな。構わん。撃て」

既に十分な魔力を蓄えた大砲から、青い光線が発射された。避ける必要はない。リンはそれを真っ向から受けた。


「痛みはないよ。あたしにはね」

青い光が、リンの肌を僅かに削った。削られた皮膚の部分は青く光っており、所々ひび割れていたが、数秒後には皮膚に戻っていた。

「これで終わり」

リンは斧を振り上げると、巨大な竜巻を発生させた。そして竜巻の力で大砲を破壊してしまった。

「馬鹿な…」

グロス城の要とされた大砲が機能を停止した。


「僕らも後に続こう」

リオンが号令すると、皆一丸となってグロス城の内部へと侵入して行った。要を失った要塞はいとも簡単に落ちた。そして、城の中から軍服を着た、大将と思わしき女性が、リオンの元に引っ張り出された。

「くっ、離せ」

女性は美しい容貌を歪ませ、小犬のように吠えていた。

「君、名前は?」

「ふん、猿に名乗る名前はないわ」

「そう…」

リオンは視線を下に落とした。それを見た女軍人は何を思ったのか、急に慌て始めた。

「ま、まさか。私を犯すつもりか。皆の前で辱しめて、エッチなことをするのか?」

「そんなことはしないが、これをエクスダスの皇帝に渡して欲しい」


リオンは手紙を女軍人に渡すと、彼女を解放した。果たして手紙の内容とは。彼の部下も気になっていたが、リオンは黙して語らなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ