学校へ行きたい
ゲスラーはよほど驚いたのか、金魚のように口をパクパクと開閉していた。
「どうした。死にそうだぞ」
「あの方に子供だと。そ、その上、息子だと。どう見たって女にしか見えない」
「お前がガイアに逃亡した時、勢い余ってナイフで刺しちまった奴がいただろう。そいつと同じ人物だ」
「うへへ、信じらんねえ。あの方の子供を刺しちまうだなんて。俺はもう終わりだ。今日まで、あの方のために生きて来たというのに」
「良いじゃねえか。ギースはもうこの世にいないんだからな」
仁はゲスラーの襟から手を離すと、そのまま手刀でゲスラーの後頭部を思い切り殴った。
「げふ・・・・」
ゲスラーはうつ伏せに地面の上に倒れると、ポケットから拳銃を取り出して、立ち上がると同時に、仁に銃口を向けた。
「うひひひ。馬鹿か。手加減なんぞしやがって。俺を生きて捕らえようだなんて考えたテメーのミスだぜ」
「撃って来いよ」
「生憎、こいつに弾は入っていないんでね。ほれ、お前にやるよ」
ゲスラーはポイッとゴミを捨てるように、拳銃を仁に向かって投げた。瞬間、彼の瞳が一瞬光った。
「ブルーインパクト」
拳銃が仁の目の前で粉々に吹き飛んだ。同時に拳銃の破片が彼の顔や腕に突き刺さって行った。
「ぎゃはははは。俺の勝ちだ」
「ちっ、何勝手に勝ち誇ってやがるんだ。テメーに何の能力も無いと思うほど、俺は馬鹿じゃねえ」
仁は顔に刺さった金属片を手で抜くと、それをゲスラーの口に目掛けて思い切り投げた。
「俺の能力はアーツといって、触れた物体を強化できるんだ。この破片も強化した」
「あががああ」
金属片に舌を貫通され、ゲスラーは口内に血を滲ませながら、白目を剝いて背後に倒れた。
「何とか生かした状態で捕らえることができたぜ。おい、もう出て来て良いぜ」
仁は木陰から顔だけを出しているレンにそう言うと、彼女はオズオズと彼の元へと歩いて来た。
「この男は、お前の父親のかつての部下だ。お前の父親はこうやって、世界各地に部下を派遣していた」
「オレの父親はそんなに悪い奴だったんだ」
「お前が気にすることじゃないさ。それに、お前の父親を殺したのは俺だしな。父を恨むよりも俺を恨みな」
「恨めないよ。このゲスラーとかいう男を見てて分かる。俺の父親は悪だったんだ。仕方ないよ」
仁は胸ポケットから小さな紙切れを出すと、それをレンに渡した。
「これからお前が通うことになるエンシャント学園への地図だ。父のことは忘れな。いきなりは無理だと思うが、この世界で平凡に暮らすんだ。俺も陰ながらだけど祈ってるぜ」
「ありがとう・・・・」
「じゃあな」
仁はゲスラーを肩に掛けるように持ち上げると、そのまま彼のポケットから金色の玉を取り出した。
「こいつはゴールドオーブといってな。ブリタニカとガイアを行き来するための道具だ。これさえ天界から盗まれなきゃ、お前もこいつに襲われずに済んだんだがな」
仁はオーブを天高く掲げると、その場に出現した金色の扉の中にゲスラーとともに入って行った。