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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第1章・リオン編
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発想の違い

 リオンの姿が川の中に消えた。周りの兵士達は愕然とした表情でそれを見守っていたが、すぐにジェイが叫んだ。

「王を助けなければ。しかし私は本陣を守らねばならぬ。セン行け」

「な、俺が?」

 まさか自分が指名されるとは思っていなかったセンは激しく戸惑っていたが、日頃から慕っているジェイに言われては仕方がない。すぐに彼も馬を走らせて、川へと突っ込んで行った。そしてそれを合図に、次々とディタールの兵士達は後に続いて行く。まるでその先に光があるように。


 その頃、エクスダスの領土の入り口となるホール砦では、よもや、これから夜襲をされようとは、夢にも思っていない、酒に酔った兵士達が櫓に上って騒いでいると、そのうちの一人が川の方を見て、思わず眼を見開いた。

「おい、魚かなありゃ。凄い速さでこっちに何か来るぞ」

「お前、飲みすぎなんだよ。あれは魚ちゃんだよ。魚くんの可能性もあるがね」

 彼らが酒を飲みながら笑っていると、魚達はホール砦に渡って来ていた。その先頭にいるのはリオンで、彼はずぶ濡れの服を雑巾のように絞りながら叫んだ。

「行くぞ。砦に火を付けろ」

 あっという間にホール砦が真っ赤に燃えた。元々泥酔していた兵士達は、そのまま全員焼け死んでしまい。またディタールに睨みを利かせる名目で建てられた砦も、その意味を失くしてしまっていた。

「幸先は良いぞ」

 リオンは砦を占領すると、部下にテントをそれぞれ張らせて、そこを遠征の拠点とした。侵攻戦という都合上、寝床の確保と兵糧の維持が最も重要なのだ。


 次の日の早朝、生き残った伝令がエクスダスの城門を潜った。

「げほ、げほ。クルス様・・・・」

 たまたま廊下を歩いていたクルスに伝令がすがり付いた。

「どうした。何があったのだ・・・・」

「昨日の夜中に、げほ、ディタール軍にホール砦を奪われてしまいました」

「何と・・・・」

 クルスは唇を血が出るほどに噛みしめると、伝令を他の兵士に任せて、自分は皇帝の元へと走った。

「陛下、陛下はおられますか?」

「どうした、クルスよ。私はここだ」

「陛下、大変です。ホール砦がディタールの手に墜ちました」

「何・・・・?」

 皇帝は顔面を蒼白にすると、そのまま椅子から転げ落ちそうになった。それをギリギリのところでクルスが支え、彼を椅子に座り直させた。そして身を屈めると、子供に言い聞かせるように続けた。


「大丈夫です。あなたには私がいます。次は私が出陣し、ディタール王の首をここに持って来ますから。どうぞご安心を。しかしその前に、陛下には仕事がございます。今回の騒動の原因である。ギース・ブラッドの処分です」

「うむ、それは私も考えていた。この際、奴は田舎の役所にでも送るかな」

「さあ、それはどうでしょうか。あれほどの男です。きっと恨みに思うでしょう。いっそのこと死罪に処すのも手かと・・・・」

「うむ、そちに任せる」

「はっ」

(悪く思うなよ。これが国家のためなのだ。ギース、君がいたらこの国は滅んでしまう・・・・)


 手術台の上に仰向けに固定されていたギースは、瞼の辺りにチラついているライトで目を覚ました。

「縫合手術が終わりました。しばらくは痛みますが、すぐに昔のように動かせるようになるでしょう」

「ドクター、感謝するぞ。俺は医者をこの世で最も尊敬している。そして見事に傷一つ無く、我が右腕を取り戻すことができた」

 ギースは白衣の老人に頭を下げると、そのまま手術室を後にしようとした。しかしそこに、やけにドシドシと慌ただしい音を立て、武装した兵士達が手術室の扉を蹴破った。

「ぬっ、何だ貴様らは・・・・」

 ギースは構えたが、負傷した右腕ではどうしようもない。あっという間に床に抑えつけられると、そこに遅れてクルスがやって来た。

「ギース殿、陛下のご命令だ。君を牢獄に送らねばならなくなった」

「貴様、この俺が床に這い蹲っているというのに、上から話しかけるな」

「おっと、君の高慢さと自尊心の強さは凄まじいな。しかしだ。君は斬首刑に処されている。牢獄で最後の余生を送るが良い」

「くそ、放せ。この蛆虫どもが、肉に集るしか能の無いクセに。俺の宿命に絡んで来るなぁぁぁ」

「残念だよ。僕と君とでは発想に違いがありすぎる。君は自分のことしか考えていない。そんな奴とはやっていられないのだ」


 ギースは馬車に乗せられると、そのまま二頭の馬がゆっくりと歩き始めた。それもただの馬車ではなく、馬も乗り物も全てが鉄でできていた。馬も生きているわけではなく、魔法で動く道具に過ぎなかった。

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