悪逆の果てに・・・・
ギースの体は大気圏を貫いて、宇宙空間へと放逐されていた。辺りは漆黒の闇に包まれ、凍て付くような寒さが、ギースの体を蝕んでいた。しかし、それはまだ序の口で、真に彼が恐怖するのは、それから数分後のことだった。
「はあ・・・・はあ・・・・。空気で逆に押し出されるとは意外だったぞ。しかし銃弾以外のダメージは無い。このまま奴らの元へ戻ってやる」
ギースはレッキングヒルズの方向へと、軌道を変えようとした。しかし、全身が強張り、全く言うことを聞いてくれない。それどころか、彼の体はまるで衛星のように、ある方向へと、まるで川に溺れているかのように、流されて行った。そしてそれは、レッキングヒルズとは真逆の方向である。
「ああ。俺は何処に向かっているのだ。このままでは、レッキングヒルズの場所を見失ってしまうではないか」
いくら全身に力を込めても、ギースの体は常に一定の方向に向かっていた。そしてしばらくして、彼の正面に、真っ赤な光に囲まれた巨大な星が姿を現した。
「う、嘘だろ。馬鹿な。俺は、俺はギースだぞ。世界の帝王だ。帝王にこんなことが起きるわけ無いのだ」
ギースの体は正面にある巨大な炎の星。人々が一般的に太陽と呼ぶソレに向かっていた。
「まずいぞ。太陽の熱を弾いても、弾く先が無い。ここは漆黒の闇だ。お、俺は終わりなのか・・・・?」
ギースの体は氷のように冷たく固かった。いくら手足をバタつかせようとしても、指一本たりともそこから動いてはいない。そして、ついに太陽の熱が、ギースの不死身の肉体を溶かし始めた。
「ぎにゃあああああ。もう少しで、もう少しで世界が手に入ったというのに、あんなちっぽけな奴らのせいで、ぐああああ。蛆虫どもがぁぁぁぁぁぁぁぁ」
表面から放出される太陽の熱光線は、100年以上の長きに渡り、生き延びて来た彼の肉体を、一瞬にして、灰すら残らぬほどに焼き尽くしてしまった。そして太陽そのものに激突するよりも早く、周りの熱によって、ギースという存在は、地上からも宇宙からも完全に姿を消した。今度こそ、本当に彼は滅んだのである。