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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第3章・ジン編
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ゴールドブレッド

 レベッカは静かに立ち上がると、スカートに付いた砂埃を手で払い、シルバーブレッドを握り締めた。

(かつて、存在だけは知っていましたが、まさか、アレを試す日が来るなんて)

 レベッカの瞳が、ギースの体を捉えていた。まるでカメラのレンズのように、ギースの体に視線を集中させていた。


(規則正しい形には綻びがある。そしてその綻びこそが、その生命の終わりの部分。壊れゆく場所)

「行きますわよ」

 レベッカはギースの体に一発発砲した。弾丸はギースの前で一度停止すると、レベッカの右ひざ目掛けて跳ね返って来た。

「ああ・・・・」


 レベッカは右ひざを押さえて蹲った。そして再びギースの体に視線を合わせた。

「どうした。その眼は。絶望しているのか、それとも恐怖でおかしくなったか・・・・」

「はあ・・・・はあ・・・・」

 肩で息をしているレベッカの肩の上に、一匹の鳩が留まった。彼女はそれを指先に乗せて、そのまま空に向かって放してやった。彼女の瞳が、鳥の腹部にある赤い点のようなものを捉えていた。

「・・・・」


 レベッカは立ち上がると、静かにシルバーブレッドの銃口をギースの額に向けた。

「ありがとう。鳥さん」

 レベッカの瞳が涙で潤んでいた。鳩は日光に照らされて何処かに消えてしまった。鳥が教えてくれたのだ。殺界の使い方を。殺界とは物体の視る方法の一つだ。ただ見るのと、視るのとでは次元が違うのだ。物体の形を捉える。物体それ自体を見るのではなく、物体の輪郭などに意識を向けるのである。


「何だ?」

「最早シルバーブレッドではない。今日からはゴールドブレッド」

 レベッカはシルバーブレッドをギースに向けると、ニヤリと不敵に笑っていた。

「今から、この黄金の弾丸をあなたの額にお見舞いしますわ。避けたければどうぞ」

「何?」


 ギースは両腕を組んで、怪訝そうに顔を歪めていた。

(この女。私を挑発しているのか。何故だ。撃った銃弾が当たらんのはとっくに学習したはず。それなのに、何故、今更そのような駆け引きが必要なのだ)

「貴様、私を挑発してどうしたいのだ?」

「これは警告ですわ。この一撃はきっとあなたにとっての脅威となる。この銃弾を受ける勇気が無いのならば、避けなさい」

「馬鹿な」

(避けるだと。避けなくても問題は無いのだ)

「面白い撃ってみろ」


 レベッカは静かに銃口をギースの額に合わせた。そして静かに引き金を引いた。


(視えましたわ。壊れゆく場所が。ギースの生命の限界が)

 ギースの体には無数の赤い点が浮かび上がっていた。そしてそれこそが、ギースの限界。壊れゆく場所だった。

「ごふ・・・・」

 ギースの額に一発の銃弾がめり込んだ。彼の体が大きく仰け反り、そのまま背後に倒れた。

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