決戦。ギースと仁その4
レベッカはシルバーブレッドを構えていた。跳ね返った銃弾が、持ち手の部分にめり込み、止めどなく血を垂らしていた。
「馬鹿な真似は止めろ。当たらんと言っているだろう。この蛆虫が」
「はあ、はあ、わたくしは退けませんの」
「下らん。それで貴様が死んでどうするのだ」
レベッカが死を覚悟したその時だった。突然、両者を引き裂くような小さな爆発が起こった。そして、黒い煙がモクモクと昇っていた。
「何だ?」
ギースは慌てて、周囲を見渡すと、レベッカの人影がその場から消えていた。
「ルミナスか。あいつの能力を忘れていたな」
ルミナスはレベッカに肩を貸すと、近くのビルの間にある路地裏に、彼女を隠した。
「ごめん、レベッカ。君を爆発で傷付けてしまって」
「平気ですわ。あそこで退かなければ、わたくしは死んでいました」
「僕の爆発は、きっとギースには通じないけど、弾丸みたいな固体ではないから、跳ね返されないと思うんだ。確証無いけどね」
ルミナスは路地裏を出ると、ギースの元に走った。そしてブラッドヴォイスを構えると、近くの電柱などに身を隠しながら、慎重に行動していた。
「はあ、はあ…」
この旅が始まって、ルミナスは自分の成長を感じていた。かつての自分ならば、レベッカを置き去りにして、自分だけが助かろうとしていたかも知れない。しかし、今は違う。仲間を守るために行動している。それが、彼に勇気をくれた。
「ギース」
今、ルミナスの前には、かつて屈した相手がいる。
「殺されにわざわざ戻って来たか」
「僕は負けない」
「フフ、私の前で尻を振り、可愛く鳴いている方が、お前には似合っていると思うがね」
ルミナスはブラッドヴォイスから、血液を放出すると、それを紐の形にして、ギースの周りに小さな円を描いた。
「血の導火線だ」
ルミナスは指を鳴らした。同時に、血の導火線は端から次々と小さな爆発を起こし、ギースの体を呑んで行った。
「止めろ。時間の無駄だ。私には効かない」
ギースは煙の中からルミナスの鳩尾目掛けて、強烈なストレートを放った。
「ごふ」
ギースの拳が真っ直ぐにルミナスの腹部を貫いていた。彼はそのまま腕を振り回し、ルミナスを投げ捨ててしまった。
ルミナスの体は宙を舞い。ごみ捨て場の上に落下し、そのまま虚空を見つめたまま、動かなくなっていた。
「まずは一人始末したぞ。そして次はレベッカを殺し、残る二人も処刑すれば、私に仇となる蛆虫の駆除は終了だな」