決戦。ギースと仁その3
ルミナスとレベッカは二人で行動していた。街中を覆う煙は、夜になると少し落ち着いた。
「ルミナス、危ない」
レベッカは突然、シルバーブレッドを構えると、ルミナスを屈ませて、彼の背後に向けて、銃弾を10発ほど撃ち込んだ。
「フフ、よく気付いたな」
ルミナスの背後にはギースが立っていた。彼の周りには、何故だか、レベッカの撃った10発の銃弾が浮いていた。銃弾の尖った部分が、ギースの方を向いた状態で、空中に固定されていたのだ。
「これが我が能力、ジャッジメントだ。全てを支配する能力とでも説明しておこう」
ギースは目の前に浮かぶ弾丸を指で摘まむと、それを弾いて地面に落とした。同じように、他の弾丸を睨み付けると、それらもパラパラと地面の上に転がって行った。
「これがあなたの現代魔法ですね」
「現代魔法とは、貴様ら魔道士側が勝手に名付けた呼び名だろう。私はこの才能を、全ての生物を超越する力、略して「超能力」と呼んでいる」
ギースはゆっくりとレベッカに近寄ると、近くにいるルミナスの頬を、思い切り平手打ちした。
「あう」
ルミナスの小さな体は、いとも簡単に吹き飛び、ビルの壁に激突した。
「少し寝てろ。まずはレベッカ。貴様から処刑してやる」
「シルバーブレッド」
レベッカはギースの額目掛けて、さらに発砲した。あの位置ならば、当たれば確実に即死。レベッカはそう考えていた。
「馬鹿が。効かんと言ったろう」
銃弾はまたしてもギースの眼前で止まった。
「私が自惚れで帝王を名乗っていると思うのか。私はこの能力に目覚めてから、この世には私に匹敵する存在がいないことを知った。そして、自分自身がこの世を支配できる唯一無二の存在であることを、嫌でも自覚させられたのだ」
ギースは弾丸を、レベッカの手元に向けて跳ね返した。レベッカの手に銃弾がめり込んで、思わず、シルバーブレッドを地面に落としてしまった。
「この世界にある、あらゆる害悪は全て私の前から弾かれる。そして、あらゆる善は私の元に集まって来る。不幸、傷、病気、死。全てを克服したのだ」
「何を言っている?」
「仮にだ。今ここに核爆弾が落ちるとする。するとどうなるか。私を取り囲む大地は全て消し飛び、私は無傷のまま、気持ち良く寝ているわけだ。そして、もし、毒ガスでこの世界が満たされたとする。貴様らは毒ガスを吸い、そのまま死ぬだろうが。私は毒ガスの中にある、僅かな良質な酸素を取り入れることができるのだ」
レベッカは、血で震える手にムチ打って、シルバーブレッドを拾い、再びギースに銃口を突き付けた。