決戦。ギースと仁その2
まるでホテルのように煌びやかな部屋の中で、血生臭い闘いが行われようとしていた。仁がガイアを旅立ってから一か月が過ぎていた。ギースとの決着は、恐らく1時間と掛からないであろう。誰もがそう思っていたし、事実それは当たっていた。
「撃って来いよ。一撃を許す」
「お前、何を企んでやがる・・・・」
仁は階段を一歩後ろに降りた。ギースは仁の能力を知っているだろうが、仁達はギースの能力を知らない。彼の堂々とした態度を見て、このまま正面から挑むのは危険だと、仁は考えていた。
「ふん、つまらんなあ。ならば、もう少し広い場所に移動しよう。貴様らの処刑には、階段の上は相応しくない」
ギースは階段を上ると、そのまま半開きになっている鉄の扉の中に入って行った。
「野郎、何処に行ったんだ?」
「恐らくビルの屋上でしょう。部屋はここで最後ですから・・・・」
「ジン、さっき何が起きていたの?」
ルミナスは仁の元に駆け寄ると、彼の唇の切り傷を見てそう言った。
「頼りないことを言うが、俺も何をされたのか分からなかった。俺は確かに奴を殴ったはずだ。奴は一切手を動かしてはいなかった。だが、殴られていたのは俺の方だった」
仁の言葉に、全員が首を傾げていた。
「それって、どういう・・・・」
「聞きたいのは俺の方だぜルミナス。アイツの顔を殴った時、見えないバリアーみたいなものがあった気がする。そこが分からない。アイツの能力の正体を掴まない限り、俺達に勝機は無い」
仁達は階段を駆け上がると、狭い廊下を抜け、その先に設置されていた梯子を上った。
「屋上か」
空は漆黒の闇に包まれており、ネオンの輝きが街を照らしていた。ギースはフェンスを跨いで、眼下に街を見下ろしていた。
「フフフ、我が街で決着を着けようではないか。世界の命運を決める闘いが、こんな寂れた建物の屋上で行われる何て、些かロマンに欠けるからな」
ギースはそれだけ言うと、ビルからビルへ飛び移り、夜の闇に消えて行ってしまった。
「俺達も行くぞ」
「うん。これに掴まって」
ルミナスは右腕に取り付けたブラッドヴォイスから、血で作った縄を取り出すと、それを屋上の柱に括り付けて、救命用のロープのように使用した。
仁達は縄を伝って街中に出た。こんな街でも、喧騒というものは存在するらしい。体や顔に金属を埋め込んだ異様な姿の人々が、互いに行き来し合っている。
「この広さ。二手に分かれるのは危険でしょうか?」
「いや、大人数で行ったとしても、それが却って不利になるかも知れん。街の奴らには悪いが、一般人に紛れていた方が、襲撃はしやすい。まあ、住人達の格好が特徴的すぎて、全然溶け込めそうにないがな」
仁達はパーティーを二手に分けた。一つ目が仁とジャンヌ、もう一つがルミナスとレベッカである。
「ふん、来るがいい。全員とも葬ってくれる」
ギースはビルの屋上から、レベッカとルミナスを見下ろしていた。