結奈の行方
ホール内で巨大な爆発が起こっていた。それは上の階にいるギースとジャンヌの耳にも届いていただろう。仁の制服は黒こげになり、所々穴が開いていた。
「げほ、げほ。高い制服を破きやがったな。こいつは許せんな」
仁は煙の中から出ると、ヘラヘラしているビートを睨み付けて言った。
「安心しろ。すぐにそんなこと忘れるぐらいにブッ飛ばしてやるから」
「さて、それはどうかな?」
仁はニヤリと笑うと、その場にしゃがみ込んだ。そして彼の背後からシルバーブレットを構えたレベッカが、真剣な眼差しで、ビートの額に照準を合わせていた。
「させるか。肉の鎧」
ビートの全身をラクトアイスのような肉が、グルグルと包み込んで厚い層をなしていた。しかし、レベッカは臆するどころか、そのまま引き金を引いて、ビートに向かって発砲した。
「そんな豆鉄砲・・・・」
ビートは肉片を全身から飛ばして、弾丸を絡め取ろうとしていたが、弾丸はそれらの肉片を全て避けて、真っ直ぐにビートの額の直線状を捉えていた。
「わたくしのシルバーブレットは、弾丸の軌道を自由に操れる。あなたの負けですわ」
「そ、そんなああああ」
弾丸はビートの額に真っ直ぐとめり込むと、そのまま仰向けに倒れた。
仁は制服に付いたゴミを手で払うと、レベッカとルミナスの元に駆け寄った。いよいよ残る敵はギースただ一人である。早速、最上階への最後の階段に向かおうとしたその時、突然、仁の頭の中で、聞き慣れない女性の声が聞こえて来た。
「おい、今何か言ったか?」
仁は背後のレベッカの方を不思議そうに振り向いたが、彼女も同じように不思議そうな表情で、仁を見返している。どうやら彼女では無いようだ。
「ジンよ。私ですマリアです。あなた方に深く関わることは本来禁止されていますが、今回だけ特別に、言っておかねばならないことがあります」
マリアとは、統制者の一人である。仁達にジャスティスを紹介した女性で、ゴッドドラゴンの妻に当たる人物。
「神様か?」
「ええ、そうですね。あなた方が神と呼んでいる者です。以前も一度だけ会いましたね。我々は精神的な存在。天界や冥界、宇宙を離れることはあまりできません。しかし、天界の者を何人か派遣し、良い知らせを持って来ました。ガイアや他の世界から拉致されて来た人間達は生きています。レッキングヒルズ内の牢獄に閉じ込められています。今、私の部下が牢獄に向かい、人質を保護していますので、あなた方は安心して、ギースの元へ向かってください」
マリアの言葉に、仁の顔が少し明るくなった。結奈は生きている。その情報が何より嬉しかった。彼は何か吹っ切れたかのように、力強く仲間達の方を向くと、拳を二人に突き出した。二人は少し戸惑っていたが、理解したのか、同じように拳を突き出して、互いの拳を付けた。そして互いの顔を見合わせていた。普段は見ているようで見ていないお互いの顔。仲間達と最後の決戦に挑むのである。