ビルの内部へ・・・・
ジャスティス達はローズを倒すと、仁達を待たずに黒いビルの目の前へと到達していた。
「あの、仁達をここで待ちますか?」
ジャンヌはジャスティスの横顔をチラッと見ながら言った。
「考えたくないことだが、もし彼らがすでに全滅していた場合、それは時間の無駄だ。それに、せっかくここまで来たんだ。少しでも早く世界に光を取り戻したい」
「そうですね・・・・」
ジャスティスはビルの入り口へと足を踏み入れた。その瞬間、彼の体が突然硬直した。全身の筋肉が収縮し、酷く緊張していた。ビルの内部にある、2階へ繋がる階段の所に、人型のシルエットが立って、こちらを見ている。
「な、ああ・・・・」
ジャスティスは無意識に段差を降りていた。背後にいるジャンヌとリンは、そんな彼を見てきょとんとしていたが、彼には分かった。そこにはギースがいたと。
「汗が止まらないよ。情けないな僕は・・・・」
声が上擦って震えていた。この段差を乗り越えたら、もう後には引けない。最悪の場合、死ぬかも知れない。そんな不安がジャスティスの心を占めていた。
「大丈夫ですか?」
ジャンヌは不安そうなジャスティスの様子を察したのか、落ち着いた声で彼に声を掛けた。
「ありがとう・・・・」
ジャスティスはジャンヌの姿を見て、いくらか安心した。彼女はやはり聖母だったと、心の底から実感したのだ。
「さあ行こう。最終決戦だ」
ジャスティスは段差を上り、自動ドアを通り、ビルの内部へと入って行った。ビル内部は人が全くおらず、静寂に包まれていた。受付のエントラスにも、受付嬢はいないし、ただ、階段とエレベーターが無尽蔵に設置されているだけだった。
「どうする。階段か。それともあっちの個室か?」
「個室とはエレベーターのことですね。もちろん階段で行きましょう」
ジャンヌ達は階段を上り、2階に到達すると、さらに階段を上り、3階、4階、5階へと進んで行った。まるで、針の蓆だった。三人は口をつぐんで、ひたすらに自分達の足音だけを聞きながら、ギース目指して上り続けた。
階層が二桁に到達しようというその時、ジャスティスは異様な雰囲気を上から感じ取り、思わず足を止めた。
「あ、あそこにいる・・・・」
ジャスティスが指した先には、禍々しいオーラとともに、人型のシルエットが階段の上から顔を覗かせていた。そして彼らを見つけると、ゆっくりと階段を降りて来た。まるで彼らを嘲笑うかのように、やけに静かに、コツコツと足音を立てて降りて来た。
「来るぞ。ああ・・・・」
ジャスティスは無意識に後ずさっていた。ジャンヌとリンは上からやって来る足音に、全神経を傾けていた。
永遠とも呼べる時間が過ぎ、ついにシルエットがジャスティス達の眼前に姿を現した。そして口元を歪めて、彼らの前で足を止めた。