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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第3章・ジン編
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レッキングヒルズ

仁は、ルミナスとの再会を喜ぶ暇も無く、最後の聖剣を自らの手で抜いた。これで全ての世界が聖剣から解放されたのだ。


「これからどうする?」

 仁がジャンヌに訊ねたその時、突然仁達の目の前に、何処から現れたのか、真っ黒なリムジンが姿を現した。リムジンの運転席側の窓が開き、スーツ姿の白髪の老人が外に顔を出していた。彼は人の良さそうな顔で、仁達に向かって手を振っていた。


「あれは自動車ですね」

 ジャンヌはリムジンを見てそう言った。このパーティーで自動車を知っているのは仁とジャンヌだけなので、他の連中は、リムジンを馬車か何かだと勘違いしているらしかった。

「後部座席にお乗りください。あなた方をレッキングヒルズにご案内します」

 老人はそれだけ告げると、後部座席の扉を開けた。仁は無言にそれに乗り込むと、警戒していたジャンヌ達も後に続いて、リムジンの中に入って行った。


「私はギース様の執事をしております。コーマと申します。ギース様のご命令で、あなた方をレッキングヒルズ、つまりギース様のお住まいへと案内するように仰せ付かりました。どうぞ、足を伸ばしてください。冷蔵庫に冷たいドリンクを用意しておりますので、ご自由にどうぞ。ああ、それとも音楽でも聞きますかね。テレビゲームもありますよ」


 ギースはともかく、ジャスティスを始めとする、他のメンバーは皆、キョロキョロと落ち着かない様子で車内を監察していた。リムジンの中には赤いカーペットが敷かれており、天井は金箔で塗られ、ピカピカと光っていた。まるでバブル全盛期のような雰囲気に、ジャスティスやルミナスなどは、完全に

に呑まれていた。


 仁は冷蔵庫を開けると、中から缶コーヒーを取り出してフタを開けた。

「ジン。毒が入っているかも知れません。その容器を渡してください」

 ジャンヌは仁から缶コーヒーを受け取ると、眼を赤く光らせて、その中身をじっと睨み付けていた。

「呪文・トレースアイ」


 ジャンヌは缶コーヒーを仁に渡すと、自分も冷蔵庫から同じ飲み物を出した。

「どうやら安全なようですね。カフェインぐらいしか検出されませんでした」

「ね、ねえ。僕も何か飲みたいよ」

 ルミナスは仁の服の裾を引っ張った。

「自分で開けりゃ良いだろうが」

「あの箱ってどうやって開けるの?」

「ああ、もう面倒だな」


 仁は冷蔵庫を開けると、オレンジジュースの入った缶をルミナスに渡した。すると、またも彼は眉をひそめて、缶を仁に返した。

「開けて」

「おい。マジで言ってんのか。そんなことまで俺にやらせるのかよ」

 仁は缶のフタを開けると、ルミナスに渡した。今度こそ彼は満足したのか、嬉しそうにオレンジジュースを飲み始めた。


「おい、運転手の爺さん。なんでこんなに優遇してくれるんだ?」

「おほほほ、それはギース様の仁徳ゆえですよ。ギース様はあなた方を高く評価しておられます。ぜひ会いたいと仰っています」

「ほお、俺には興味無いがな。ギースって奴がどんな奴だろうと。俺らはそいつをブッ飛ばすだけだ」

「中々に威勢が良いですな。次元の壁を越えるので、シートベルトをしてください」


 リムジンは空間を突き抜けると、乱気流に呑みこまれたかのように激しく揺れた。

「ええ、もう平気ですよ。揺れまして申し訳ない」

 リムジンは次元を越えて、旅の終着点、レッキングヒルズに到着した。仁達は眼を瞑って、今までの旅路を思い返していた。


(結奈待ってろよ・・・・)

(後悔はない。人間に転生して、この者達と一緒に闘えるのだから)

(シュトレーン家の娘として、わたくしは負けられませんわ)

(お父様、お母様見ててください。僕はもう逃げません)

(僕は真の勇者だ。それをこの闘いで皆に知らしめて見せるぞ)

(ピピッ、充電完了)

 それぞれの想いを乗せて、リムジンはレッキングヒルズの入り口に静かに停まった。

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