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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第3章・ジン編
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高い位置を目指せ

 仁達は聖剣を前に膠着していた。突然現れたベンサムという男は、聖剣の前に腰掛けており、絶対に動かないと態度で示して来た。


「ジン様・・・・ここは・・・・私行く」

 リンは突然、ベンサムに向かって駆け出した。そして右手の人差し指を彼に向けると、それを弾丸のように発射した。

「スクリューフィンガー弾」

 リンの人差し指が回転しながら、ベンサムの喉元に炸裂した。

「ぐむ・・・・」

 ベンサムは一瞬よろめいたが、すぐに立ち直ると、リンに向かって走って行った。

「もう一発」

 リンは反対の人差し指も発射した。


 スクリューフィンガー弾はベンサムの額に突き刺さると、彼を背後に倒した。そのうちにリンは聖剣の元に向かい、手を伸ばすと、後1メートルほどで手が剣に届きそうな位置だった。


「止めろ。私は死んでもそれを守る」

 ベンサムはリンに向かってタックルすると、彼女ごと岩盤から転がり落ちて行った。恐るべき執念。ベンサムは溶岩まで、もう少しという位置で岩石の壁に指を突き入れて、何とか落ちずに踏ん張った。


「くうう、危なかったぞ。もう少しで溶岩に呑まれていた。もし、私の反射神経がもう少し鈍かったら、このまま滑り落ちていただろうな」

 ベンサムの両足にはリンが掴まっていた。彼女もベンサムが壁に捕まると同時に、彼の両足を両手でガッチリと掴んでいたのだった。


「離さない」

「ふっ、君は私よりも低い位置にいるな」

「ああ」

 突然、リンの足がグルグルと回転、そのまま右回りに捻じれて行った。そしてその捻じれは両腕にまで広がっていた。

「激痛のはずだが、君は無表情だ。それにその姿も見たことがある。茶髪のおかっぱ頭にカチューシャ、ギース様のホムンクルスか」

 ベンサムはリンの顔を足で踏み付けると、強引に彼女を振り落とした。リンは全身を捻じりながらそのまま落下していた。

「そして、私だけが生き延びる」


 ベンサムは壁を登り切ると、聖剣の前に腰掛けた。以前状況は変わっていなかった。


「おい、リンは・・・・」

 仁がジャンヌの方を向いて訊ねると、代わりにベンサムが答えた。

「彼女は溶岩に呑み込まれて跡形も無く消えた。それが真実だ。ありがとうございます」

 ベンサムは再び90度のお辞儀をしていた。そしてチラッと仁の方を見て不敵に笑った。彼は明らかに挑発している、そして彼の聖剣を死守しようという執念は凄まじい。今までで一番かも知れない。ここにいる誰もがそう思っていた。


「遠距離からの攻撃ならば、私のシルバーブレッドが適任ですわ」

 レベッカはベンサムの前に立つと、銃口を彼の額に真っ直ぐ向けた。そして引き金にゆっくりと手を掛けた。

「そうは行かない。私も必死だ」

 ベンサムは突然、刺さっている聖剣の柄に、右足を掛けた。その瞬間、レベッカも含むベンサム以外の全員の足が捻じ曲がった。


「ぐああああ」

「いやあああ」

 あまりの激痛に、レベッカはシルバーブレッドを落としてしまった。そしてそのまま岩盤の上にうつ伏せに倒れると、足の痛みに歯を食いしばって耐えていた。

「私がほんの少しだけ高い位置にいれば良いのだ。この程度でもな」

「クソが、ガキの頃流行っていた、たかおにを思い出したぜ。確か一番低い位置にいる奴が鬼だったな」


 仁は木刀を掴むと、捻じれが全身に回る前にベンサムに投げ付けた。

「甘いぞ」

 べンサムは木刀を手で圧し折ると、聖剣の柄に片足を乗せたまま、苦しむ仁達を無表情で眺めていた。

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