雪と氷の世界
空は曇天模様で、雪が絶え間なく降り注いでいる。冷たい空気が鼻腔をツンと刺激した。仁達は6本目の聖剣の眠る、スノービークにやって来ていた。
「うう、寒いと言うより痛いですわね」
「この寒さはキツいな。皆、大丈夫かい?」
すっかりリーダー気取りのジャスティスは、先頭を歩きながら、後方の仲間達を心配していた。造られた存在であるリン以外は、皆、極寒に体を縮ませていた。
不意にドサッと、何かが落ちる音が聞こえて来た。木に積もった雪の塊が落ちたのだろうか。仁は背後を振り向くと、そこには、頭にまで雪を積もらせているジャンヌが、俯せに倒れていた。
「ジャンヌ、おい」
仁達は一斉にジャンヌの元に駆け寄った。彼女はこの寒さだというのに、顔を赤く火照らせて、息遣いを荒くしていた。
「凄い熱だぜ。まるで沸騰したヤカンみたいによ」
仁はジャンヌの額に手を付けていた。
「とにかく、早く休める所を見つけましょ」
仁はジャンヌを背中におぶった。幸運なことに、吹雪が少し弱まり、辺りの景色がよく見えるようになった。
「皆、安心しろ。村が見えて来たよ」
ジャスティスは双眼鏡片手にそう言った。ジャンヌは仁の背中で、小さく呻いた。
「うう」
一刻も早く村に着きたいと思った。
仁達は村に到着すると、宿屋の主人に事情を話し、ジャンヌを宿屋に泊めさせてもらっていた。仁は聖剣を使って、次の聖剣の場所を突き止めていた。村人から聞いた話では、村から東に進んだ先に、氷の洞窟があるらしい。
「レベッカ、俺は一人で行ってくる。ジャンヌの看病は任せたぜ」
「ええ、気を付けて」
仁は宿屋を出て、早速村の出口に向かった。
「おい、君、待て」
背後からジャスティスが、仁の右肩を掴んで止まらせた。
「なんだ?」
「何を勝手に決めているんだ。リーダーは僕だ」
「下らない論争だ。仲間がヤバいんだ。早々にこの世界から出たい」
仁はジャスティスの手を振り払うと、呆然とする彼を無視して、村を出て行った。
「くそ、何故、僕の言うことが聞けない」
「あんたが弱いからだろ?」
ジャスティスのは背後から、突然、刀を持った男が現れた。男はスキンヘッドで、鷹のように鋭い眼をしていた。
「いつからいた?」
「けけけ、教えてやんねーよ。どうせお前は死ぬからよ」
「名を名乗れ。僕はジャスティスだ」
「俺はディズィー」
二人は雪を踏み締めながら対峙した。