Episode33:眠れない・・・
かなり久しぶりの更新です。
これからも、またよろしくお願いします。
時計の針は5時30分を示している。
双葉は結局俺を一睡もさせずまだ文化祭について語っている。
俺は眠たいのを必死に堪え耳を傾けている。
でも、正直に言えば何を言ってるのかは理解できてない。
右耳から入ってそのまま左耳から抜けていく状態だ。
こんなに眠ければ当たり前なのだけど・・・
「なぁ、双葉・・・」
双葉が一生懸命に話をしているのを遮って俺は話しかけた。
「何?」
「まじで眠い・・・もう、お前の話も理解できない・・・」
「ふ〜ん」
「ふ〜んって何だよ・・・」
「別に寝ても構わないわよ。でもそうしたら朝起きれるかしら?」
「・・・・・・・・・・・」
それを言われたら辛いものがある。っていうか既に朝みたいなもんだろう。
おそらくいつも通り学校に通う双葉は俺を6時30分には起こすだろう。
つまり、今から寝ても1時間ぐらいしか眠れないことになる。
それなら、眠らないほうがましなのかもしれない。
「でも・・・やっぱり眠りたい」
少しでも睡眠はとるほうがいいと俺は踏んだ。
だけど・・・
「駄目よ、起きてなさい。話は終わってないんだから」
「えぇ・・・お前、寝てもいいって言ったじゃん」
「やっぱり駄目よ・・・学校で寝なさい」
風紀委員のこいつからこんな言葉を聞こうとは・・・
「そして取調室に連行してあげるわ」
「・・・・・・・・・・」
自分で提案したことで捕まえるのかよ・・・
「はぁ」
俺は呆れて大きな溜息をつく。
おそらくこの溜息は今までの人生のトップ5に入るほどの大きさだと思う。
「何よその露骨な溜息は」
「だって・・・こんな場面で溜息つかない奴なんていないだろ・・・」
「あんたは仮にも男子のリーダーなんだから頑張ってよね」
「まぁ、分かってるよ」
「そう」
双葉はそう言うとまた熱心に文化祭について語り始めた。
勿論、俺は話を聞きながらも理解はしていなかった。
こうやって俺の秋月邸での夜は明けていった。
階段を双葉と下りていくと既におばさんはおきていた。
弁当を作っているらしくそこには俺の分もあった。
おばさんの弁当に嬉しく感じながら、俺は困っていた。
まだ腕はほとんど治らないままで弁当を食べれるか微妙なところだからだ。
おばさんは俺達2人に気付いたらしく笑顔で挨拶をしてきた。
「おはよう佑君、双葉」
「おはようございます。おばさん」
「おはよう」
俺と双葉はそれぞれ昨日座った席に腰を下ろす。
テーブルの上には既に美味しそうな朝食が用意されている。
「いただきます」
隣に座る双葉はそう言って自分の分をはじめる。
俺もそうしたいのだが生憎まだ腕が動きそうにない。
俺が食べようとせずただ座っているのを見て双葉が口を開いた。
「まだ腕動かないの?」
「あぁ、これじゃ今日1日は動きそうにない・・・」
「可哀想ね・・・」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「あんたでしょ?自業自得じゃない」
確かに俺が悪いけど・・・
あんなペナルティを課したお前もどうかと思うけど・・・
俺がそう思いながら溜息をつくと双葉が驚く提案をした。
「食べさせてあげようか?」
驚き双葉の方を見ると顔が少しだけ赤くなってる。
「お前、いきなりどうしたんだ?昨日は嫌がってたくせに」
「今よ嫌よ。でもお母さんは今忙しいし、
それにその腕がそうなったの私にも少し責任があるし・・・」
「・・・・・・・・」
俺はあまりにも驚いて黙ってしまった。
「何で黙ってんのよ?」
双葉はなぜか怒りながらそう聞いてくる。
「いや、別に。驚いただけ・・・」
「なによ、人が優しくしてあげてるのにさ」
「悪かったよ、双葉」
「本当に思ってるの?」
「思ってる。本当に悪かった」
「そう」
なんとも素っ気無い返事が返ってくる。
「・・・・・・・」
何て言っていいか分からず俺はまた黙ってしまった。
そんな俺を無視するかのように双葉は俺の前に置かれてる箸をとった。