Episode31:秋月邸でハプニング
「ピンポーン」
インターホンを押しすぐに双葉がドアを開けてくれた。
「以外に早かったわね。入って」
「あぁ」
俺は返事をしてから家の中に入る。
子供の頃はいつものように来ていた場所。
第二の家みたいなもんだったと思う。
でも今はたまにしか来なくなっている。
俺達も大きくなったのかと思った。
家に入り双葉についていき食卓へと向かう。
既におばさんは料理の準備を終え座っていた。
「佑君、久しぶりねぇ」
最近、おばさんと会うときはいつも最初にこの言葉を聞く。
この調子だと明日会っても聞くことになりそうだなと思う。
「お久しぶりです。おばさん」
「今日は腕を振るったからたくさん食べていってね」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃあ、座って」
「あ、はい」
俺は返事をしてから椅子に座る。
俺の隣の席には双葉が腰を下ろした。
俺達2人が席に座ったのを確認してからおばさんが口を開いた。
「じゃあ、いただきます」
それに続いて俺と双葉もいただきますと言った。
おばさんの料理はいつも通りどれも美味しそうだった。
だけど腕が死んでいる俺は食べることが出来ない。
そんな俺を見ておばさんが口を開いた。
「どうしたの、佑君?」
おばさんの顔を見るとどこか悲しげだ。
俺は悪い気持ちになりながら、
「今日、罰で腕立てを1000回ほどして腕がまったく動かないんです」
と、言った。
「そうなの?それは大変ね」
おばさんの顔から悲しげな感じが消え俺は少しほっとする。
俺がほっとしているのも束の間、おばさんはとんでもない提案をする。
「双葉、佑君に食べさせてあげなさい」
「・・・・・・・」
俺達2人は絶句してしまった。
「そうしたら佑君もたべられるわ」
「お母さん・・・そりゃそうだけど・・・それはちょっと」
双葉が呆れながらそう言う。
「別に嫌じゃないでしょう?佑君はどう?」
「え、あの・・・・なんというか・・・」
突然、話をふられ俺は上手く対応できない。
「お母さん、私達高校生なのよ。そんな事できないわ」
俺が困っていると双葉がそう言った。
「でも、幼馴染なんだしねぇ」
おばさん、幼馴染はあまり関係ないよ・・・
「そんなこと関係ないわよ」
俺と同じ事を思ったのか双葉がそう言った。
「じゃあ佑君はどうやってご飯を食べるの?」
確かにこれは大きな問題である。
っていうか食べないという選択肢はないのだろうか・・・
俺がそんな事を考えると双葉が驚くことをいった。
「お母さんが食べさせてあげたら?」
「・・・・・・・・」
俺はその言葉にまたもや絶句する。
しかし、おばさんは
「それもそうね。佑君、私が食べさせてあげるわ」
「・・・・・・・」
もう、俺は何も言えない・・・
「良かったわね、佑斗。ご飯食べれて」
こいつ微妙に笑ってやがる・・・
結局俺はおばさんに食べさせてもらう羽目になった。
美味しかったのだけど双葉の目の前で・・・
弱みを握られたなと俺は思った。
ご飯を食べ終わった後、俺はさすがに疲れもあって帰ろうとした。
しかし、おばさんはそれが不満らしく俺を引きとめようとしていた。
「佑君、もう少しゆっくりしていったら?」
「でも・・・その、明日は学校もありますから」
「・・・・・・・・」
おばさんは本当にがっかりしているようだ。
さすがに俺もどうしようかと迷ってしまう。
俺がそう考えているとおばさんが突然表情を輝かせこう言った。
「じゃあ、今日は泊まっていって」
「はい?」
「それなら遅刻することもないでしょ?」
「それもそうですけど。悪いですし」
「何言ってるのよ。私達と佑君の仲でしょ」
「はぁ・・・」
やばい・・・このままじゃ泊まるはめに・・・
嫌ではないけどそれだけは絶対に避けたい・・・
双葉と朝早くからの登校が決定してしまう・・・
あんな朝早くから学校なんて生きたくない・・・
でも、よくよく考えてみれば、
この1ヶ月間は双葉からは絶対に逃げられないんだよな?
それだったらこっちの方がいいのかもしんない。
でもな・・・どうしよう・・・?
俺がどうしようか悩んでいると俺の考えを無視するかのようにおばさんは言った。
「双葉、佑君泊まることになったから。部屋の準備お願い」
「いや、おばさん・・・・」
「いいじゃない。たまには、ね?」
お世話になってるおばさんにそんな風に頼まれたらさすがに断れない。
俺は泊まることを決心した。
「分かりました。お世話になります」
「はい。楽しんでね」
こうして俺は双葉の家に泊まることになった。