Episode30:お誘い
今日二度目のペナルティを実行中・・・
さっきと同じ腕立て500回・・・
せめて腹筋か背筋にしてほしかったと思う・・
さっきより時間をかけペナルティを終えた時には放課後になっていた。
ほとんど腕は死んでいて1秒でも早く帰りたいところだった。
だけど、文化祭の準備があるから出来るはずがない・・・
今更だけどこの高校選んだの間違いだな・・・
「遅いわよ、佑斗」
教室に入ってすぐに双葉の声がとんできた。
お前があんなペナルティをやらせるからだろ・・・
思わず口に出そうになったがなんとか堪える。
双葉にまず口げんかで勝てる気がしない・・・
俺は大人しく作業に取り掛かった。
「ねぇ、皆集まって」
俺が作業に参加してから1時間経った頃、双葉が皆を集めた。
クラスメイトが集まるのに1分はかからなかった。
双葉の力はここまで大きくなったのか・・・
俺が素直に驚いていると双葉が話し始めた。
「本番まで後10日ほどしかないの。
だけど、まだ肝心のどんな喫茶店にするか決めてないわ。
このままで行くと普通の喫茶店になっちゃうわ。
だから、金曜日までに1人1つ案を考えてきてね」
1人1つってそんなに多くの案が必要なのかな・・・
「何か質問や意見ある?」
どうせ、何を言っても自分の意見を貫くくせに・・・
皆、俺と同じ事を考えているのか口を開く人はいなかった。
「ないみたいね。じゃあ各自作業に戻って」
双葉の言葉を聞き全員がゾロゾロと動き出す。
もうほとんどロボットのように見えてくる・・・
「皆、もうちょっと立ち向かえよ・・・」
誰にも聞こえないように俺はそう呟いた。
あれから30分ほどして下校時間となった。
腕立て合計1000回と作業で俺の腕はとうとう死んでいた。
少しも上に上がらないし無理に上げようとしてら激痛が走った。
早く家に帰ってシップでも貼ろうと思いながら学校を出た。
腕を振ることができない俺の歩き方は誰が見ても可笑しなものだった。
そのために俺はなるべく人通りのない道を歩きながら帰った。
そのせいでいつもより1・5倍ほどの時間をかけて俺は家に着いた。
家に着いてすぐにお風呂に入りその後シップをはる。
その後はベッドに倒れこみそのまま眠りにつこうとした。
3分ほどで疲れきった体は眠る体勢につこうとしてた。
だけど、それを邪魔したのは一本の電話だった。
それは俺があと少しで夢の世界という時にかかってきた。
画面を見ると双葉と表示されている。
こんな時になんだよと思いながら電話を取る。
「もしもし」
「もしもし。佑斗、晩御飯って食べた?」
「いや、食べてない。ってか食べれない・・・」
「食べれないって?」
「大体分かるだろ。あんなに腕立てさせやがって。腕が動かねぇよ」
「それはあんたが悪いでしょ。でも、どうしよう」
「どうしたんだ?」
「お母さんがさ久しぶりに佑斗と晩御飯食べたいとか言い出してさ」
「おばさんが?」
「うん。それで電話したんだけどさ。腕動かないんだよね?」
「まぁね。でも、おばさんのお誘いだし一応行くよ」
「そう、分かった。じゃあ待ってる」
「あぁ、おばさんによろしく」
「はいはい。じゃあ後でね」
「あぁ」
俺はそう返事して電話を切った。
その後、シップを隠すように長袖のTシャツに着替えて家を出た。