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Episode26:テスト返却-III

「ピンポーン」

まだ早すぎる朝に嫌いな音が耳に飛び込んでくる。

時間を確認すると6時半。

毎度思うが嫌がらせにしか感じない。

思い足取りで玄関に向かいドアを開ける。

ドアの先にいたのは見慣れた幼馴染の姿だった。

「双葉か。どうしたんだ?」

「迎えに決まってるでしょ」

「何でまた、今日に限って来るんだよ」

「今日来ちゃ悪かったの」

「俺はテストの結果やリーダーになった事で精神的に辛いんだよ」

「ペナルティーも決定してるしね」

笑顔でさらっといいやがって・・・

「あぁ」

「そんな事はどうでもいいの。早く準備しなさい」

「はぁ・・・もう少し眠りたいんだけど」

「ふ〜ん。今日はいつもより過酷な罰にしてあげようか?」

「分かったよ・・・・」

「ならさっさと準備してよ」

「分かったよ」

言われたとおりにさっと準備を終わらせ家を出る。

いいなりって情けないな・・・


「それより何で迎えにきたんだ?」

「今日の0時間目は何か知ってる?」

質問に対して質問で返すとは・・・

「そんなもん知るわけねぇよ」

「でしょうね」

そう言って双葉は溜息をつく。

そんなに悪いことなのか?露骨に溜息つくぐらい・・・

「今日の0時間目は政経よ」

「ふ〜ん。それがどうかしたのか?」

「テストが返ってくるでしょ。これで賭けの結果も決まるし」

「お前・・・それだけの為に起こしにきたのか?」

「うん。だって早く結果知りたいじゃない」

「別に俺がいなくても分かるんじゃないか?」

「欠席の人にはテスト返せないし。先生が他人に教えるはずないじゃない」

「言われてみればそうだけど、他の日でも・・・」

「さっき言ったでしょ。早く知りたいって」

「そうだったな・・・お前、凄い我が侭だな」

「それは褒めてるのかしら」

「120%ないと思うけど・・・」

「まぁ、あなたに褒められても嬉しくないんだけどね」

「あ、そう・・・」

学校行きたくないな・・・


学校について見慣れた皆のリアクションを見て席についた。

さっき思ったけど、最近は皆の驚く時間も短くなっている。

喜ばしいこと・・・だよな?

一人でくだらない自問自答をしていると肩を叩かれた。

後ろを振り向くとそこには予想しなかった人物がいた。

「桜井さん・・・どうかしたの?」

「特に何もないけど。朝早くから壬柳君がいるのって珍しいと思って」

「それでわざわざ声をかけたの?」

「そんなとこね」

「じゃあ、これといって用事はないの」

「そういう事になるわね」

「・・・・・・・・」

「どうかした?」

「いや・・・何でもないよ」

「じゃあ私は教室に戻るわね」

「あ、うん」

「それじゃあ」

「じゃあね」

俺が戸惑いながら挨拶を返すと

「あ」

桜井さんは突然止まってそう言った。

俺がどうしたんだろうと思っていると、

「今日、放課後空いてるかしら?」

そう、尋ねてきた。

「文化祭の準備の後なら空いてるけど」

「それでいいわ。ちょっと時間とってもらえる?」

「別に構わないけど」

「それじゃあ、お願い」

「分かった」

「じゃあ放課後ね」

「あぁ」

俺の返事を聞いた後、桜井さんは自分の教室へと戻っていった。


賭けの結果が分かる運命の政経の時間になった。

「お願いします。赤点を免れていますように」

俺は誰にも聞こえないほどに小さい声でそう呟いていた。

「壬柳 佑斗」

先生が俺の名前を呼んだ。

俺は祈りながらテストを受け取りに向かう。

ペナルティは決定的なんだからせめてこれだけでも・・・

そう祈りながら・・・

先生からテストを受け取り点数を見てみる。

「33点・・・・赤点だよな・・・・」

点数を見てうな垂れる俺を見て山本が声をかけた。

「どうしたんだ?そんなに落ち込んで」

「いや、赤点だったから」

「へぇ。何点?」

「33点」

「ふ〜ん。ならもしかしたら逃れられるかもよ」

「まじ?どうやって」

「テストの点数が正しいか確かめれば?」

「は?」

「は?ってお前・・・普通確かめるだろ?」

「いや、そんな事一度もしたことないけど」

「あ、そう。お前らしいかもな」

「で、具体的にどうすれば?」

「点数の計算が間違ってないかとか、正解してるのに間違いになってたりとか」

「あぁ、なるほど」

「分かったんだな。じゃあ、頑張れよ」

「あぁ」

「俺としては赤点の方が面白いんだけど」

「うっせえよ。それよりお前は何点だったんだ?」

「俺?90だけど」

「聞かなければよかった」

「社会系の科目は得意だからな」

「あ、そう」

俺の返事を聞いてから山本は席に戻っていった。

「よし、確かめてみるか」

俺は自分の席へ戻り最後の希望の確かめを行うことにした。

「ここは当たってる。ここも、ここも」

そんな事を呟きながら俺はテストを見直していった。


そして・・・


「結局、私の勝ちだったわね」

「あぁ・・・」

最後の希望の点数の確かめのあと俺の点数は下がっていた。

先生が計算を間違え点数を上げていたのだった。

その事は報告せず俺は結局33点に終わってしまった。





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