Episode24:テスト返却-I
テストが終わった翌週の月曜日。
土日は、双葉の提案で文化祭の準備をして疲れている中、
恐れていたテスト返却を迎えていた。
月曜日、テストが返される最初の授業1時間目の国語だった。
ちなみに0時間目は美術だったが俺は欠席だった。
いつものように遅刻していたからだけど。
「壬柳君」
先生の名前を呼ぶ声が聞こえた。
席から立ち上がり先生の元へと向かいテストを受け取る。
恐る恐る結果を見てみると・・・
「47点・・・赤点・・・だよな」
見事に赤点1枚目獲得。
「はぁ」
大きな溜息をついていると、双葉が寄ってきて
「どうだったの?」
と、どうせ分かってるわよみたいな顔をして聞いてきた。
「47点だよ」
「あら、予想よりは高いわね」
「どんな点を予想していたんだよ?」
「18点」
なんかリアルだな・・・
「あ、そう」
「でも、これは賭けには関係ないんだから」
「そりゃ、そうだけど。お前はどうだったんだ」
「私?自分で確認したら」
そう言って俺にテストを渡す。
俺はそれを見て衝撃を受けた。
「198点・・・」
「あんまり大きな声で言わないでよ」
「しょうがねぇだろ。驚いたんだから」
「そう」
「それにしても凄いな」
「あんたが褒めるって珍しいわね」
「俺は素直に思ったことを言ってるだけだよ」
「あ、そう」
何だよその興味ないわよみたいな感じは・・・
「そうなの」
「じゃあ、ありがとう」
「どういたしまして」
俺がそう言った時に先生が声をかけてきた。
「壬柳君、秋月さん座りなさい」
「分かりました」
二人揃ってそう言って、お互いの席へと戻った。
その後、クラスの最高得点が発表された。
名前は発表されなかったが俺には誰だか分かっていた。
2、3時間目は連続して家庭科の授業だった。
その後は昼休みが続き4時間目は生物の授業だった。
「はぁ、テストって憂鬱だ・・・」
生物室へ向かう途中、俺がそう呟くと
「へぇ、意外だな」
そう言って、山本が話しかけてきた。
「何が意外なんだ?」
「お前がテストの事を気にしてるからさ」
「あぁ、他の奴には言われたよ」
「何かあったのか?」
「まぁな。とてつもない嫌な事がな」
「へぇ、大変そうだな」
「今は大変じゃない。どちらかというとこれからだ」
「可哀想だな。文化祭の準備を忙しくなるのにさ」
「だよな・・・本当に憂鬱だわ」
「まぁ、頑張れって」
「あぁ。どうも」
俺の礼の言葉を聞くか聞かない内に山本は違う友達の方へと行った。
山本と別れたあと席について3分ほどして鐘がなった。
すぐに先生がテストらしきものを持ちながら入ってきた。
あそこに俺の赤点のテストが混じってるのか・・・
そう考えるととてつもなく疲れがたまった気がした。
「壬柳」
生物の教科担任が俺の名前を呼んだ。
一瞬、笑いが含まれたような気がしたのは気にしないでおく。
テストを受け取り分かっていながらも希望を抱き結果を見る。
「・・・・・・・・」
先生が笑ってしまいそうになる訳だ・・・
多分、採点してる時は爆笑したかもしれない。
本当にそうだったら先生としてどうかと思うけど。
「何点だったの?」
突然、ご機嫌な声で話かけられた。
「双葉・・・」
「どうしたの?さっきより変よ」
「別に・・・ただペナルティーを思い出しただけ」
「そう。じゃあ生物も赤点だったのね?」
「まぁな」
「何点?」
何故そんなに興味津々なんだろうか・・・
「別に何点でもいいじゃん」
「教えてくれたっていいじゃない」
「だったらお前から教えたらどうだ」
「いいわよ」
そう言いながら双葉は俺の前に自分のテストを出す。
「100点・・・?」
「うん」
「お前、これ100点満点のテストだぞ?」
「あんたじゃないんだから知ってるわよ」
「お前、満点なのか?」
「えぇ」
「マジ?」
「しつこいわね。見たら分かるでしょ」
「・・・・・・」
「あんたは何点なのよ?」
「4点・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「どうやったらそんな得点取れるの?」
あまりに衝撃だったのか沈黙してから双葉がそう尋ねた。
「勉強しなかったら」
「しなくてもそれはないと思うわよ」
「俺はほとんど授業も聞いてないんだよ」
「別に威張ることじゃないわよ」
「・・・・威張ってねぇよ」
「・・・・・・・可哀想ね・・・・・」
本当に哀れそうな目をしながら双葉は言った。
「もう黙れ・・・惨めだから・・・」
俺がそう言うと双葉は本当に可哀想な人を見るような目をしながら、
自分の席へとゆっくり戻っていった。
「本当にどうやったらこんな点数取れるんだ」
取った本人である俺の呟きは誰にも聞こえなかった。