Episode20:賭け
「あれ、双葉。それに壬柳君も」
そう言いながら西条さんがよってきた。
普段から敵対しているからか、それとも違う何かなのかは分からないが、
俺は心の中で来るなと念じていた。
「こんにちは。今日はどうしたんですか?」
双葉がそう聞いた。
「買い物の帰りだよ。そっちは?」
「私達は文化祭の話し合いの帰りです」
「へぇ、それで決まったの?」
「はい。定番って感じですけど喫茶店になりました」
「そうなんだ。どう、良いのできそう?」
「分かりませんが頑張ればできると思います」
「そう、頑張ってね」
「はい。それで西条さんのクラスは何をするんですか?」
「僕のクラスはミニゲーム屋だったかな」
「楽しそうですね」
「そうかな。一応上手く出来そうだから見にきてよ」
「分かりました。こっちにも来て下さいね」
「あぁ、行かせてもらうよ」
こいつら、俺を忘れてないか?
20分ほど二人で話に花を咲かせた後、
「そういえば壬柳君。テスト勉強はしてるの?」
「え、まぁ・・・少しは」
勿論、全然やってませんよ。
「そう、その調子で頑張ったほうがいいよ」
「何かあるんですか」
「まぁね。本当は内緒なんだけど君には教えといてあげるよ」
「はぁ」
「この学校はさ、テストで赤点3枚以上取るとペナルティーあるから」
「・・・・・・3枚以上ですか。全部じゃなくて?」
「うん、3枚以上。多ければ多いほどペナルティーは過酷になるんだけどね」
「そうなんですか・・・」
「今回は中間テストで5教科しかないし大丈夫だろうけどさ」
「そうですね・・・」
何も良くない・・・絶対・・・ペナルティーだ・・・
「言っとくけど漢字の書き取りなんて比べ物にならないと思うよ」
「え?どんな事をさせられるんですか?」
「さぁ、校長先生直々に言い渡されるらしいから」
「校長先生直々ですか?」
「うん、今まで見たことないんだけどね」
「良かったですね、西条さん」
双葉が話に入ってくる。
「え、どうしてだい?」
「佑斗だったら確実に全部赤点ですよ」
「それのどこがいいんだよ」
「だって、西条さん見ることができるじゃない」
「それも、そうだね」
何を納得してるんだよ・・・
「とにかく頑張ってくれ。君と君の友達には期待してるから」
海斗の事だろうか?それと何を期待してるんだ?
「それじゃあ、僕はもう行くよ」
「あ、はい。さようなら」
双葉は返事をしたが俺は無言で見送った。
西条さんが見えなくなってから双葉は俺のほうを見て、
「中間テストがとっても楽しみね」
「嫌味な奴だな。言っとくけどお前だって可能性はあるんだぞ」
「私が?本気で言ってるの?」
「あぁ、本気だ。誰にだって可能性は平等にあるぜ」
「確かに可能性はあるわね。平等ではないけどね」
「本当に嫌味な奴だな。お前がペナルティーもらったら、
これでもかって程に笑ってあげるよ」
「そんな日来ないわよ。私はテスト9割は堅いから」
・・・どっから来るんだよ・・・そんな自信・・・
「何ならかけるか?」
「面白いわね。どんな条件?」
「お前の9割以上のテストの枚数と俺の赤点ではないテストの枚数」
「・・・言ってて恥ずかしくないの?」
「別に恥ずかしくないけど。とりあえず多いほうの勝ちだ」
「いいわよ、受けてたつわ」
「じゃあ、何かける?」
「そうねぇ、1ヶ月の間、勝者のしもべになるってのは?」
「う〜ん、それでいいぜ」
「じゃあ、決定ね。今なら撤回させてあげてもいいのよ」
「するかよ。お前も後で後悔すんなよ」
「何とでも言ったらいいわ」
俺達の運命の戦いの始まりを告げた。