Episode16:日常
教室のドアを開け中に入ろうとしたら右腕を掴まれた。
突然の事でなすすべもない間に手錠をはめられていた。
「・・・・・」
余りにも久しぶりに事で一体何が起こったのか理解できなかった。
「今日も遅刻ね。佑斗」
「双葉、てめぇ・・・」
「文句でもあるの?私は風紀委員よ」
「う・・・」
「さぁ行くわよ。ペナルティがあんたを呼んでるわ」
「そうか?俺はあっちから俺を呼ぶ声が聞こえるけど」
「でも残念ながらペナルティが優先です」
「・・・・・」
俺は何も言えず引っ張られていった。
教室の中を見ると久しぶりの風景に皆笑っていた。
他人事だと思いやがって・・・
取調室に入り椅子に座った。
「この椅子に座るのは久しぶりだな」
ついつい、そう言ってしまった。
「これからいっぱい座ることになるわよ」
勿論、これを言ったのは双葉です・・・
「そうかもな」
反論できない俺はそんな曖昧な返事をした。
5分ぐらいしてから西条さんが入ってきた。
「あれ、双葉。どうしてここに?」
「あ、西条さん。こいつを連行したところです」
こいつって・・・何だよ。
それより西条さんが双葉を呼び捨てにしてる事が気になった。
同時に複雑な気持ちを抱いていた。
俺以外の男が双葉を呼び捨てにしないでほしい・・・
この気持ちは一体何なのだろうか・・・
俺がそんな事を考えていると西条さんの声が聞こえた。
「今回は久しぶりだし、グラウンド50周にしてあげたら」
・・・・50周?・・・・久しぶりじゃなかったら?
「そうですね」
ってかお前も納得しないで。50周ってありえない・・・
「じゃあ行くから」
「はい」
双葉の返事を聞いて西条さんは出て行った。
「佑斗聞いてたでしょ。グラウンド50周ね」
「もうちょっと減らしてくれない?」
無理だと分かりつつも頼んでみる。
「60週に?」
真顔で双葉がそう言ってくる。
「お前国語苦手なの?俺が教えようか?」
なるべく真顔を装って言ってみる。
「はやく50周走りなさいよ」
きれいに無視されました。
「はぁ」
「あからさまな溜息つかないで、さっさと立つ」
「分かったよ」
俺は渋々立ち上がり歩を進める。
歩きながらこんな事を考えた。
俺は前の日常にやっと戻ってきた。
馬鹿やって双葉に注意され逃げたり捕まったり。
少し大変だけど俺らしい日常が戻ってきた。
でも、何かが少しずつ変わっているのは気付いている。
その何かが分かりはしないのだけど・・・