Episode13:遊びに行こう
「おい、佑斗」
海斗から電話のあった次の日。
双葉とぎくしゃくした為に久しぶりに遅刻してきた俺に、
1番最初に声をかけてきたのは海斗だった。
「どうかした?」
「お前、約束すっぽかしたな」
「約束?そんなのしたっけ?」
「しただろ。中央公園前に12時集合だって」
場所と時間は確実に聞いてませんが・・・
そんな事を思いつつ俺は暇つぶしに惚ける事にした。
「知らないよ。お前、夢でも見たのか?」
「夢じゃねぇぞ。電話の内容も覚えてるぞ」
本当にそう思ってるのかよ・・・
伝えてない事も伝えたと勘違いしてるくせに・・・
「そうなのか・・・俺は全然覚えてないんだけど」
「嘘つくな。顔が嘘だと言っている」
お前はいつからそんな芸当を身につけた・・・
勿論、こんな事で引き下がる俺じゃないから。
「馬鹿言うな。顔が馬鹿だと言っている」
言ってみて自分自身まったくもって意味が分かりません。
「何だと」
馬鹿には意味が分かるのかな?
「とにかく俺は知らないよ・・・」
「ったく・・・次からは忘れんなよ」
「おう、忘れたも何も約束自体なかったけどね」
「・・・もういいよ。馬鹿に付き合うと疲れる・・・」
こいつに馬鹿扱いされてしまった・・・
教室に入るとHRは既に終わったらしく先生の姿はなかった。
教室に入り自分の席へと向かう。
双葉は俺に気付いているようだったけど何も言わなかった。
「本当に最近どうしたんだろうね?」
クラスメイトの女子が話しているのが聞こえる。
「壬柳君と双葉の争い毎回楽しみにしてたのにね」
お前ら・・・俺たちは見せ物じゃないんだけど・・・
耳を傾けるのも馬鹿らしくなり無視して椅子に腰掛ける。
特にする事がない俺は考え事を始める。
最近、連行されないから気が楽だけど・・・
双葉とぎくしゃくしたままってのは嫌だな・・・
あんな悪戯・・・本当にしなければよかった・・・
俺の頭は授業が始まるまでずっと同じ事を悩んでいた・・・
1時間目の日本史の授業が始まった。
歴史などにまったく興味ない俺は寝ることを決める。
どうせ・・・連行されないし・・・
そう思うとなぜか胸がチクリとした。
何もないまま1時間目が終わり、2時間目の数学に入った。
1時間目さすがに寝すぎたかこの時間は目が覚めてしまった。
このまま眠ってしまいたい所だけど眠れないまま、
1時間ずっとさっきと同じ考え事をしていた。
3時間目も変わらない時間が過ぎていった。
昼休みになって弁当を食べていると声をかけられた。
「壬柳君」
俺は呼ばれた方向を振り向いた。
「あれ、桜井さん。どうかしたの?」
珍しく、というより初めて彼女から俺に話しかけてきた。
「今日って暇?」
「まぁ、別に忙しくは無いけど」
「じゃあ、遊びにいかない」
・・・・・・・・・・
「何処に?」
恐る恐る聞いてみる。
「前と同じ場所だけど」
・・・やっぱり
「また行くの?」
「うん。今回はきっと迷わないから」
なんか行く目的変わってないかな・・・
「まぁ、別にいいけど」
俺が承諾の返事をした。
そして、それと同時に俺を呼ぶ声がまた聞こえた。
今回の声の主は海斗だった。
「お〜い、佑斗」
海斗は俺を呼んだ後、俺の前にいる桜井さんに気付いた。
「佑斗、この人誰?お前の彼女」
「違うよ。彼女は桜井さん」
「ふ〜ん。俺は新藤 海斗っていうんだ。よろしくね」
海斗はそう言って桜井さんに自己紹介をした。
フレンドリーな奴だな。
「私は桜井 琴音。よろしくね」
「で、今は何の話してんの?」
海斗はいきなり俺に話をふってきた。
「別に、ただ遊びに行く約束してただけ」
「へぇ、俺との約束は忘れるくせに」
朝はもういいとか言ってたくせに・・・しつこい奴・・・
「そんな話もあったな」
「まぁ、いいや。その遊びに俺も参加」
何か勝手に決めちゃってるし・・・
「いいの?桜井さん、こんな馬鹿」
「うん。別にいいんじゃない」
「じゃあ、決定」
本当に嬉しそうな顔をしています。
「あ、そうだ」
突然、何かを思いついたのか海斗はそんな事を言った。
「どうしたんだ?」
俺が聞くと驚きの返事が返ってきた。
「双葉も誘おうっと」
そう言うとすぐに双葉の方へと走っていった。
何となく嫌な予感がするな・・・