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下着

なんとか無事に正月休みを切り抜けると、ユイの服を買いに行く。


ユイは中学生くらいに大きくなっている。

なぜ?考えてもわからない。

神の気まぐれだとしか思えない。


とにかく服だ。


女性陣に囲まれた服屋は痛かった。

近くのシティモールに来たのだが、さすがに女物の売り場は女の子ばかりだ。

俺は食いついてきた店員に、彼女へのプレゼントだと嘘を――実際には嘘ではないが――をついて、なんとか売り場にいる状態だった。


そこで服を買うと、今度は恥ずかしそうに、ブラとパンツも欲しいと抜かしやがった。

そんなことできるわけないだろう?!

一人で女性下着屋にいたら、それこそ変態扱いだ。

「サイズがわからないだろっ?!」

と言うと、ユイは、

「わかる、大丈夫だから、お願い」

と言う。


ユイに言われた通り、彼女へのプレゼントに下着をあげたい、という理由で俺は店内に立っている。

幸いにも、店員さんがすぐに来てくれて、まるで従者のように俺の言うことを聞いてくれたので、変質者扱いはされなくて済んだものの、やはり女性からの視線が痛い。


俺はプレゼント包装されたC65の下着を二着、ショーツ(パンツはショーツと言うらしい)二組ずつ買うと、大汗をかきながら店内を後にした。


もうこれで二度と勘弁だ、と思うが、結局後からもまた買い足しにいくことになるわけだが。


オナホを買うときより、百倍以上恥ずかしかった。

もう二度と来たくない。



とりあえず買うものは買ったので、またお炊きあげをする。

値札がついたまま抱き上げようとすると、値札は外せ、とユイがおっしゃる。

前回は値札がついたままだったので、ついたまま着なくてはならなくて難儀したらしい。

値札を一つ一つ外して投げ込む。

他人が見たらなんと思うだろうか。

規制の緩いアパートでよかった、と思う瞬間だ。


するとユイが、今度はブーツを買い忘れたと言い出した。

俺は適当にウェブで調べてそのまま注文した。


ブーツが届く。

そうか、最初から通販にしておけば、あんなに恥ずかしい思いをしなくて済んだんだ、と今頃思ったが遅かった。


ブーツのお炊きあげはかなり時間がかかった。

合皮なだけあって、なかなか燃えず、木切れを何回も追加する。

やっと燃え尽きる頃には夜になっていた。


しかし、ただ燃やすものを買うなんて勿体ない。

でも、ユイが必要としている。

俺はお金でも抱き上げたかのような気持ちになる。


「そんな顔しないでよ、バイト代で足りたでしょー?」

と言うユイに俺は弱かった。

「うん、そうだね……ま、いっか」

毎度毎度、ユイには変なところでポジティブにされてしまう。


こうして冬は過ぎていった。


卒業も迫る3月。

俺とユイが同棲を始めてから8ヶ月。

俺は相変わらずバイトに来ている。

俺の絵はなかなか売れず、売れたと思っても安値だった。


とりあえず、中学の教師免許はとれたので、あとは配属されるのを待ちながら絵を描くことに没頭できそうだ。


バイトは慣れたもので、もうレジの精算まで俺はこなすようになっていた。


そんなある日、バイト先の後輩に呼び出される。

なんかイヤな予感はしていたのだが、案の定――

「好きなんです!よかったら付き合ってくださいッ!お願いしますッ!」

俺はなぜか返事を保留にした。

なぜか?

それは、ユイがいてくれたとしても、その先に未来はないから。

俺だって生身の人間だ。

人間同士の温もりが欲しい夜もある。


ユイには言えなかった。

言ったら悲しませるだろう、せめてユイが成仏してからにすべきだろう。


悩んだ末、俺は後輩を断った。

そして考え始めた。

ユイが成仏することを。

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