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帰ってきてもファンタジー!?  作者: 月見ココア
修学旅行編 第二章「彼が行く先はこうなる」
273/286

アースガントでの事件1






 魔法大国アースガント、その王都たるダマントは文字通り国家の中心地。

この国で最も繫栄し、最も魔法研究・研鑽が盛んで、最も流麗な都市がここダマントである。


王族の住まいであり国家運営の中枢である、荘厳たる天にそびえる王城を中心に

そこからいくつもの層が重なるように構成されている。およそ王城、上流階級、

富裕層、一般市民層、城壁層の五層が存在し上空から眺めることが出来るのなら

人が営む都市の形とは思えぬ美しい五重の円が見れるだろう。


それは奇しくも“形だけは”とある世界の基本的な都市構造と似ているのだが

優先順位の違いから中身は別物に近い。それでも明確な外敵という共通点が

あるせいか最大円を描く城壁層の役割は似通っていた。違いがあるとすれば

防衛を担う軍だけでなく国家が認めた魔法使いの住居が存在している点か。


名称としては国家認定特級魔導士という国がその実力と人格を認めた魔法使いに

住居、年間の研究費や必要素材・道具の優先的入手権、それらとは別に給与も

与えられるという特権を得る代わりに指定都市の防衛戦力として常駐する義務を

持つ者達である。


王都防衛はその中でもさらに花形。

そんなダマント外壁層東部の特級魔導士住居区画に住まうのは一人の貴人。

いや王族であった。


「ふふ」


鈴を転がすよう、とはよく言ったもの。

それだけで王都を囲む威圧的といってもいい無骨な城壁が目の前にあるという

小庭の風景が秀麗な庭園かという雰囲気を演出する────美姫がそこにいる。


───リリーシャ・アースガント


降り注ぐ太陽光を弾くように輝く金髪と宝石かと見紛う翡翠色の瞳を持つ彼女は

整った相貌も相成って、ただテーブルについて紅茶を楽しんでいるだけでじつに

絵になっていた。


「ルイス、腕をあげたわね」


「お褒めに預かり光栄です、リリーシャさま」


紅茶の采配をしたピンクブロンドの儚げな容姿のメイドは主人の言葉に仄かだが

喜色の笑みを返す。


「この菓子ともよく合うわ。

 味つけも揃えてきたのね、ハンナさすがの美味しさよ」


「ありがとうございます」


テーブルに並ぶ菓子類を手作りしたクリーム色の長髪を揺らしたメイドが

続けての称賛に素直な感謝を返す。そして一瞬だけルイスとハンナは視線を

交差させて喜びを共有し合う。ただその裏で美姫がいたずらな笑みを浮かべたのを彼女らは見逃した。


「け・れ・ど、わたくしの記憶が確かならこの系統の味が好みだったのは“彼”

 だった気がするのだけど?」


「「っ」」


ぴしり、とその指摘に固まる二人のメイド。

言い訳も出てこない所を見るに無意識だったのねと優雅に微笑む姫。

ここにいる事情のせいか“彼”を意識してしまっているのはどうやら自分だけ

ではないらしいと肯定的に受け取っているのだが、その背後に控えるメイド長(・・・・)

視線に二人は表情を変えないまでも冷や汗たっぷりであった。


「────リリーシャさま、お戯れはそこまでに」


そんな鋭き視線で部下()達を黙らせていた彼女から圧が消える。

代わりに周辺を警戒する意識が一段階上がったのを感じ取った。


「あら、もう時間かしら?」


その変化に事も無げに応じた彼女は音も立てずにカップをソーサーに置く。


「先に頂いておりましたが────どうぞ、歓迎しますわ」


美姫の目線は正面、誰も座っていない向かいの席を見る。

言葉を許しと取ったのか。その場、その空間にある『黒』が動いた。

城壁の影。テーブルの影。屋敷の影。ささやかな木々の影。それらの一部が

地面という平面で跳ね、動き、本体から離れた。分離した影は地面を走るように

同じ一点を目指す。美姫の向かい、その席へ。


「礼儀知らずな来訪を受け入れてくださり感謝します」


影が集まり、形を成す直前。文字通りの人型の影が言葉を発する。

それはまた美姫に負けず劣らずの穏やかな旋律を伴う美声であった。


「鬼人族コウヨウ家が(おさ)、カオル・コウヨウ。

 名高き魔法使いリリーシャ・アースガント殿の尊顔を拝見できて嬉しく思います」


影が形を持ち、色を纏った時そこにいたのはリリーシャとはまた違った美を

持つ者であった。地球は日本に伝わる着物、にどこか似た作りの和装を纏う

小柄な体躯。艶やかな黒い長髪と鮮血のような眼。額から伸びる小さな一本角が

何の邪魔にも影響も与えないどころかアクセントとなっている美貌が穏やかな

微笑を湛えてくるため、男女を超越した色香を漂わせてくる。

いっそ毒か何かというほどの輝きと蠱惑さであった。


「おや、わたくしが知るコウヨウ家の長と名前が違う気がしますが?」


「うふふ、シン殿から随分私達の話を聞いていらっしゃるようで。

 やはり皆さんを選んで良かった、彼が信用するなら信用できるというもの」


「……疑問の答えになっていませんよ、カオル・コウヨウさま?

 ご自身で無礼な訪問となっている自覚があるなら、こちらの問いに答えてほしいものですわ」


表情は微笑みのまま、少しばかり意識して声に不快を乗せたリリーシャ。

礼儀、という点では相手方は──承知の上のようだが──かなり失している。

何せ鬼人族コウヨウ家名義による先触れの手紙が届いたのは昨日だ。しかも

正規のルートではなく、この屋敷の前に半ば投げ入れられた状態で。仮にも

女王妹であり、王都東部城壁を守る任を受けている特級魔導士に、だ。

本来なら一考するに値しない振る舞いだが、シンイチから聞いていた家名と

手紙の文面が無視できないものであったために庭を開いたのである。


「これは失礼しました。

 代替わりしたばかりの若輩者ゆえ、どうか平にご容赦を」


「若輩者、ねぇ?」


最近その立場になった新しい長、という意味でなら適当ではある。

だが実年齢という意味で受け取るならその表現は微妙であった。

外見だけを見るなら相手は確かに若く、おそろしく美しい女性だ。

年齢は十代後半から二十代前半、といった所だがそもそもにして鬼人族は

見た目で年齢が分かりにくい種族。寿命は一般的なヒューマンの約二倍。

成長速度は十代前半までは同じなのだが、それ以降は二分の一になるとか。

しかも地球でいう所の東洋系統の顔つきなので比較的西洋的な顔つきが多い

アースガント人からすると余計に年齢が分かりにくい。だから、目の前の相手が

本当に若いかは判断が難しいのである。


「まあ、細かいことはいいわ。

 別にこれはあなたと親交を深めようという場ではなし」


「あらら、大国の姫君はやはり少数種族なんて興味はないですか」


「わたくしは、あなたと、と口にしたはずなのだけど?」


どうにも本題をはぐらかし、こちらをからかって遊んでいるような空気が

感じられるカオルにリリーシャは微笑を維持したまま苛立ちを漏らす。

それは半ば相手を威圧するがさすがに一族をまとめる長の家系か。

変わらぬ微笑に受け流されていた。これは面倒だと姫は手をあげる。


「ほう、これは」


感心の吐息は何に対してか。

音も気配もなく現れたメイド達が音もたてずにもてなしの飲食物が並んだ。

出されたのはカップに入った紅茶───ではなく湯呑に入った緑茶。

菓子皿に乗っているのは焼き菓子───ではなくおかきであった。


シンから(・・・・)色々と(・・・)教えられているんです。

 鬼人族の方の舌にはそれらが合うかと思いまして用意させましたの」


どうぞと促されたカオルは形の上で感謝を述べながらそれらを口にする。

表情に変化はないが礼儀として素直に食している時点で察しているのだろう。

昨日の今日でこれらが出てくる以上は無礼に対しても聞く耳は向けるという

態度であり、鬼人族に対して隔意も無いという意思表示にもなっているのを。


「……重ね重ねのご無礼、再度謝罪します。

 他意はなくただただ本当に時間が無かったもので」


「謝罪を受け取りましょう。そちらとしても交流のない国の、面識のない女王妹

 など信用できないでしょう……例え共通の知り合いがいたとしても」


鬼人族は宗教的な敵対種である魔族と外見の──それを伝える文面上の──

共通点があったことと世間に名が通っていない少数民族であることなどが

重なって長年世界中で冷遇・迫害されている種族だ。またそんな立場の弱さから

庇護を求めた時の権力者たちに都合よく扱われた歴史も持つ。大国の女王妹へ

にっこり愛想笑いで話し合えるだけこの長は理知的であろう。


「敵いませんね、これも大国の姫君の器量……いえシン殿の薫陶ですか?」


「さて、ズタボロにされ、足蹴にされ、罵倒されただけですよ」


「ぇ……………冗談に聞こえないのが怖いっ」


シンイチならやりかねない。そういうニュアンスの呟きであった。

まごうことなく事実なのでリリーシャ側は平然としたものである。

むしろ超然とした色香を放つ笑みを崩せて、してやったり、な心境だ。

ならば、ここで踏み込むべきだろう。


「ところでカオルさま、手紙に書かれていた話の詳細を聞きたいのですが?

 確かそう、ここ王都近郊で────(シン)に仇なす計画が動いているとか?」


「っ」


一瞬見せた怯みは空気が変わったのを感じ取れたと褒めるべきか。

そうなると読めていただろうに怯んでしまった失態と取るべきか。

さもありなん。自分達の足元でよくもまあと女王妹とメイド達が笑っている。

笑顔とは本来攻撃的な表情だとは誰の言葉か。


「せ、正確に述べるなら狙いはマスカレイドになります。

 あれだけ旅路を共にしたあなた方ならこの意味、お判りでしょう?」


「あら、尾行でもされていたのかしら?」


「我が家名に誓って、そのような無作法はしておりません。

 ただ、シン殿の動向を出来る限り把握しようと動いていたのは認めますが」


「ふふ、追っかけがいるなんて人気者ね」


影の言葉、嫌味に皮肉。短いながらもその応酬は笑顔で行われた。が。


「…そうでもしなければ彼から受けた大恩を返せるチャンスが無くて…」


「ああぁ…」


思わず、疲れた声色で出たらしいカオルの本音に。

思わず、リリーシャ達も納得の声をほぼ全員が洩らした。

同感という空気に湯呑に残っていた緑茶を一気に飲み干したカオルは吠える。


「っ、こっちがどれだけ助けられたか本当にわかってないんですからあの方は!

 私や叔父上は命を救われ、排他的になり過ぎていた先代の長は心を解された。

 一族としても当時の隠れ里に迫った危機への対処に助言・助力してくださり、

 迫害と流浪の歴史の中で方々に散った同胞達と合流させてもくれたのです!

 さらに新しい住処の選定や伝手の無かった種族同盟との橋渡しまで!」


「なんて徹底的……いかにもシンのやり口だこと」


「はい、それとやはり種族同盟とも繋がりがありましたか、あの男」


種族同盟───正確には少数種族扶助同盟。

ファランディアに存在する少数民族への理不尽な扱いや差別・迫害を減らし、

その地位向上を目指す世界的な扶助組織である。10年ほど前に力はあるが最も

少数とされる竜人族を中心に複数の少数種族によって立ち上げられたものだが

国際的に認められ、影響力を持つようになったのは2年近く前からである。

じつに怪しい。


「最初から見返り目的だ、なんていうから何かと思えばオロル鉱石の加工って!

 確かに私達でないと無理な加工でしたよ!? あれっぽっちのオロル鉱石を

 爪状にして尚且つ彼の指に違和感なく一体化させるなんて技術!

 我ら鬼人族以外は持ってないでしょうけど!」


それだけって、あれだけやっておいてそれだけって!

どういうことだと行き場の無い感情をテーブルに何度も叩きつけるカオル。

もはや登場時に見せた落ち着きや色香は残念なほど皆無になっており、

マナー上でも問題行動をしているのだが見守る者達の視線はかなり暖かい。

──めっちゃ気持ちわかる


「シンは自分の手先が不器用なのもあってか。

 その手の技術を高く買う傾向がありますからね。

 それだけやってようやく釣り合う、と本気で考えていたのかもしれません」


「我らが先祖より受け継いだものを評価されて嬉しい気持ちはありますが

 これはさすがに高値が過ぎましょう」


力無くそうこぼすカオルの表情はまさに複雑なものであった。

立場が弱く、迫害を受けてきた種族だけに団結心と自分達の技への誇りと自信は

強い。だがそれとて上限がある。あれだけの恩を受けて求められたのがいくら

自慢の技術によるものとはいえオーダーメイドの武装一つだ。大恩を受けた側と

してはあまりにも対価が釣り合わず、感謝の行き場が迷子であった。


「なんでしたらこちらはなんでも……ええ、なんでも(・・・・)して差し上げるつもりでしたのに」


困った方です、とその美貌が儚げに微笑んだかと思えば意味深な呟き。

明らかな匂わしと流し目が伝える「叶うなら今すぐでも」といわんばかりの熱。

挑発であると。先程の威圧の意趣返しであると。誰もが理解してなお、その場の

空気が格段に冷える。


「……ステラ?」


そこへ静かに、そして新たに注がれたのは二杯目の紅茶。

無言の「冷静に」という意思表示に訝しむリリーシャの隣に立ったメイド長は

客人であるカオルを見据えながらもその意識を控える部下達(妹たち)に向けた。


「気付かないとは嘆かわしい、お前達も落ち着きなさい。

 ……心配せずともあの男(シン)は男色家ではありませんよ」


「は?」

「へ?」


いま彼女はなんと言った。

言葉は聞こえた。意味も分かる。だが女のプライド的な何かが理解を拒む。

この、いっそ毒のような、美貌と色香、を放つ。この場に男性がいなくて

良かったと自然と思ってしまう彼女は─────彼?


「うふふ、バレちゃった。てへっ」


なんてことだ。この美貌で愛らしさまで併せ持つか。


「じゃ、ない!! うそっ、カオルさまは、えっと、これで……男性?」


「生憎、女性だと言った覚えはねえな」


「っ!?」


ふっと全身から力を抜くような仕草をした途端カオルの印象が変わる。

男口調にしてみせただけではない。女性的な佇まいをやめただけでガラリと。

それでもまだ中性的な美形であるのは変わらないがさすがに男性だと分かる。

唖然とする彼女達をしてやったりな顔で眺めたカオルであったが、すぐに

その表情を消して頭を下げる。


「リリーシャさま、そしてメイドの方々、申し訳ない。

 後追いで把握していたとはいえあなた方の心情までは調査できない。だから

 皆にとって彼がどういう人物であるのか直に揺さぶって確かめたかったのだ」


「……試された、というわけですか?」


「ええ、内容が内容でしたので……ですが文句なしです。

 全員が(・・・)あんな熱い視線で私を敵視してきたのですから」


「色々思う所はありますが、まず……ふふ、全員、なのね?」


「………なんでしょうか姫様?」


男性であると見抜いていて熱く敵視していたのかと含みのある顔で笑う美姫。

控えているメイド()達は「姉さんが一番冷静ではなかったのでは?」と訝し気な

視線を送っていたが当人は知らぬ存ぜぬと静かな表情だ。


「ははっ、さしずめ体が男であろうとそこはそれと警戒された感じかな?

 確かにそこにある想いが本物ならシン殿は真剣に考えてくださるだろうから

 警戒もやむなしか」


「…カオルさま?」


「おっと、生憎と私の好みは女性ですよ。

 そうでなければコロっといきそうな気持ちは分かりますけどね。

 あれだけ助けられた上にこの女装癖(趣味)を最初からずっと普通に受け入れて

 接してくれてたのに気付いた時は人が人に惚れる瞬間とはこういうことかと」


「ほう?」


「あ、いやこれも失言か!? あくまで人として、です!

 私は美しく着飾った自分で可愛い奥さん娶って愛でるのが夢なので!」


にっこり笑顔でそんな願望を口にするカオルは東洋顔もあってか少年のよう。

そこに嘘偽りや隠し事がある気配は無かった。だからメイド達は手にしていた

刃物をそっと戻すのであった。彼の冷や汗はひどかったとだけ記そう。


「ふぅ────けどこれで、ようやく安心して話せます」


されど彼もまた新任とはいえ一族の長か。

一瞬でここに訪れた時と変わらぬ表情と空気感を取り戻して微笑む。

勝手に試された側としてはせめて一言モノ申したいと姫は呆れたような半眼で

目に毒のような美貌を湛える“彼”を見据える。


「かなり回り道させられた気もしますが?」


時間が無いのではなかったのか。という嫌味と共に。


「そこは本当に申し訳なく……ただ政治的にややこしい部分もあり、協力者に

 成りえるあなた方がどれだけ本気で動いてくれるかが読めなかったのです。

 どうかご理解頂きたい」


「ふぅ、シンが関わる案件はこれだから…ふふ」


「リリーシャさま?」


自分達とシンイチの関係を解っていて接触しておきながら協力してくれるかに

疑問が出る政治を挟んだ企み。キナ臭い、あるいはシンイチ風にいうのなら、

面倒くささを感じる語りに、されど姫は笑う。それに懐かしさを覚えるほどに

どうやら毒されていたらしい。


「……母上と同じ顔をする」


「ん?」


「い、いえ、回り道をした分の取返しをこれからしたいと考えておりました」


「つまり?」


「この先は移動しながらが最善かと」


誰の試しのせいかという言葉は誰の口にも、胸中に出てこなかった。

何故なら彼の言葉は端的にふたつの事実を告げていたからだ。

それは王都近郊ながら現場は彼女達が転移で行けない場所である。

それは時間的猶予がなく、コト、がまさに現在進行中である、と。


「出かける準備はしていたから構わないわ。

 ですがせめて、どこで、誰が相手か、は教えてくださいません?」


対処する、それ自体はシンイチ絡みである時点で否は無い。

しかしながら最低限それらを先に知っておかなければ打つべき手を、その順番を

間違える可能性はある。カオルもそれは承知しているのか素直に頷く。


「はい、それはもちろん。

 まず場所はここ王都から見て南東にあるオドロック渓谷。

 そこで昨年発見された古代遺跡が目的地だと我らは見ています」


「あの新進気鋭の考古学者ローが発見したという?

 確か古代技術の装置が多数見つかったから封鎖中で、転移のマーキングも

 安全上の理由で一時的に解除されたから向かうには足がいるのは分かるけど

 あそこに価値ある物があるかどうかはまだ分かっては……っ、まさか!?」


彼女の知識の中には、調査を待たずに先んじて発見された遺物の詳細を

把握できるかもしれないある組織の存在があった。その閃きに対面のカオルは

称賛の笑みを向ける。


「さすがです、ええ、ご推察通り相手はリーモア教会です。

 奴らはなぜか古代技術への造詣が深い。オドロックの遺跡で発見された装置の

 正体を解っていて目指しているかと……マスカレイド(シン殿)の血を持って」


「っ!? 出ます! ステラ、各所に通達! フラウ、一番速い車を!」


「かしこまりましたっ」


「ただちに!」


未知の遺物が多く残る地に持ち込まれる、文字通りの彼の血肉。

その組み合わせの不吉さは即座の出立を彼女に決意させるに充分だった。


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― 新着の感想 ―
なんというか……カオル君は中々に罪深い性癖してるなぁ(笑)
[気になる点] 口調大分違うけど「迫る聖なる手」の忍者君かな? どっちにしろちゃんと話が伝わったようで何より。 ところで「ロー」って主人公の事だよねコレ。 (「さあ、特別試験の始まりだ」及び「加減を…
[一言] 更新待ってました!ありがとうございます!
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