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帰ってきてもファンタジー!?  作者: 月見ココア
修学旅行編 第二章「彼が行く先はこうなる」
272/286

式典の裏で5



「っ、は??」

「ぇ……っっ!?!?!」


カークとオルバンの戸惑いと驚きは、女の声に驚いた自分達へのものだった。

何せその女性がここにいるのは最初から(・・・・)知っていた(・・・・・)のだから。

そう、この部屋に集まっていたのは四人。カーク大統領、オルバン補佐官、

ナカムラ少年、そして彼の従者として昨日ねじ込まれたその女性。

オークライの件とは別の議題(厄介事)に関わると告げられ、拒否できなかった存在。

それゆえに忘れようなど無いはずの人物であった。


「……っ」


なのに何故この瞬間まで、認識はしていたのに意識が向かなかったのか。

適時飲み物を采配したのも、少年が乱した椅子を直したのも彼女であったのに。

同じような驚愕と困惑が背後にもあるのを気配で察しながら大統領はこれまでの

経験を総動員するような気概で固まっていた思考と顔を動かした。そこで初めて

カークは少年の斜め後ろに控えていた女性を視界の中心に置く事に成功する。


「あ、あなた、は……?」


美しくもどこか──どうしてか──存在感の薄い女性であった。

長身で水色系統の長髪を背に流し、その首辺りで簡素なリボンが纏めている。

聞こえた声には抑揚が無く、表情にも色は乏しく、どこか造り物じみた面差しは

だからこその美を誇っている。これが、なぜ、どうすれば、意識から消える?

身に纏う衣服も特徴的だ。丈の長い黒のワンピースに白いエプロン、頭には

ホワイトブリム。整った相貌もあって美しく背筋を伸ばして佇む姿はいっそ

芸術品のような雰囲気を持つ。どこからどう見てもメイド(・・・)であるが。

だからどうしてこれを忘れていられるのかカークは自分の頭を疑う。


「……これは失礼を致しました」


内心の混乱が乗った視線をどう受け取ってか彼女は静かに謝罪を口にする。


「使用人ゆえ自己紹介は議題がこちらのコトに移ってから旦那様より、と

 考えていましたが私の配慮不足で無用な驚きを与えてしまったようで……

 よろしければご説明をさせて頂いても?」


「あ、ああ、頼むよ。

 どうやら自分達はあなたの存在を認識しながら忘れていたようだ」


おそらくその点に関する説明だろうが先程まで漂流地球人達の保護活動に

おける過去の失態を話していた身だ。その後これまた初接触の(・・・・)異世界人(・・・・)相手に

言葉足らずでの誤解は情けない。


「かしこまりました。

 あちらでは知られた話であるため失念しておりましたが高貴な方々に仕える

 使用人ほど自らの気配を周囲に埋没させる技術を高度に習得しております。

 今回もそのいつもの感覚で控えてしまいました…」


「え、つまり身分ある方々につく使用人限定とはいえ標準技能であると?」


「はい、これは我々の存在や視線を気にせず日々を過ごして頂くためであるのと

 そのお立場ゆえの危険───端的に申し上げれば対暗殺者へのカウンターも

 我々の仕事であるからです」


「…普段は主人の安寧のため。狙われた際は気取られない護衛として。

 主人の日々を守るのがファランディアでの一流使用人なわけか……道理で

 ナカムラくんから()王族付きのメイド、と云われた訳だ」


おそらくはそういった表現があちらにおける「気配のない使用人がいるが

驚かず、気にせず振る舞ってくれ」という気遣いのテンプレートなのだろう。

そう彼女はファランディア人。つい先日ガレストにやってきたという初来訪者。

これが歴史に残るかは今後次第ではあるが自分の大統領史も中々に波乱であると

カークはその血筋の因果に辟易とする。しかし『元』とは随分と便利な言葉を

使われたものだ、とも思う。おかげでその『元』の職場にこちらは何も

言えなくなってしまっている。現在交流も連絡手段も無いが未来はまだ不明。

転移拉致事件を思えば今後必要になってくるが暇を出された上にナカムラ少年の

従者(庇護下)は手が出せない。法的な意味での不法入()を問うのも保護を

兼ねた監視役をつけるのも彼とマスカレイドの不評を買ってまで行う価値と

必要性があるかと言えば、無い。どこまでを想定していたにせよ彼女の『元』

主人は強かであるようだ。


昨日教えられた情報によれば彼女はファランディアのさる大国(アースガント)の女王妹に

仕えていたメイドの一人。詳細はまだだがあちら側で異世界(こちら)に影響ある事件が

起こってしまったため次元転移(危険かつ一方通行だとか)でこちらへ単身

渡ってきたという。目的は帰還していたナカムラ少年との接触と情報提供。

及び事態解決への助力を求めて。そのため転移した先が地球ではなく未知の

世界だったのは想定外。尤も結果的にそのおかげで早期に彼と合流できたのは

僥倖であったとも。この場への同席は詳細を聞いた少年がガレスト政府と

情報共有すべきと判断したからだという。彼に一目置いてしまっている現在

それはもう厄介事であるのが決定的なのでじつは少し頭が痛いカークである。


「事前の説明や配慮が足りず申し訳ありません」


内容も分からぬ問題に気分だけを憂鬱にしながらも謝罪の言葉に意識を戻す。


「メイドたる私が先んじて補足するか気付くべき事柄でした。謝罪いたします」


抑揚のない声だが真摯さは伝わる言葉と共に腰を折って頭を下げるメイド。

その所作はこういった職種の者達を見慣れていない大統領をして洗練されたと

思わずにいられない丁寧さと美しさを兼ね備えていた。されどそれは見惚れる、

というよりあまりに自然で、意識して彼女を見ているはずのカークをして

“見流しそうになる”という何やらおかしな感覚を与えてくる。


「お?」


だからというべきか。視線を外すまいと注力した結果。

姿勢を元に戻すという動作に遅れる形でエプロンを内側から大きく盛り上げる

たわわな果実が存在感を訴えるように大きく揺────


「────大統領」

「っっ!?!?!?」


静かな声と穏やかな微笑みが真正面から叩きつけられ、背筋が震える。

カーク自身ですらどうしてその組み合わせで震えたのかが分からない。

ただ余計な所に視線を向けたら死ぬ、という謎の予感だけがあった。


「……ちっ、ステラ(・・・)、俺の反応ありきで遊ぶんじゃない」


「ふふ、申し訳ありません旦那様(・・・)


しかし即座に少年はこれまでの顔を崩すように舌打ちしながら斜め後ろのメイド

へと呆れた視線と声を向ける。ただ肝心のメイドは謝罪こそ口にしたがその声は

気持ち喜色に満ちているようにカークには聞こえた。どうやら発言通りの意図

以外にも少年(主人)のこの反応を引き出そうとした彼女(メイド)の遊びに巻き込まれたらしい。

単純な主従関係ではない、もっと親しい何かを感じる。


「大統領、自分も配慮が足りず申し訳ありません。

 私のメイドが──はいそこ喜ばない──失礼をしました……二重に。

 いえ、会談中に思考にふけってしまった点を含めて三重ですね」


「い、いや、構わないよ…ははっ」


話が主人に移ったからか。先程までと比べれば存在感はあるが気配が薄まった

メイドを視界の端に置いて少年の謝罪を笑って受け入れる。立場的には苦言を

呈するべきかもしれない扱いだが、その微笑ましさに笑みが勝ってしまった。


「大統領?」


大人びた、大人顔負けの姿を見せてきた少年の─おそらくは─素の表情が

垣間見えたからだろう。そういう(・・・・)感情があったのが勝手ながら一人の大人として

喜ばしく思えた。それはきっと話題だったあの人物のせいだろう。


「キミは、もしかしたら博士と気が合ったかもね。

 もしくは超絶的に合わないか、だろうけど……」


「それは……光栄というべきか冗談じゃないというべきか」


稀代の大天才との同族・同類扱いをここまで嫌そうな顔で受け取る人間も

そうはいまい。二択の後者に建前や謙遜も入らない辺り本音が分かりやすい。


「いえ、それより大統領はやはり博士と直接会ったことがあるんですね?

 妙に彼個人へ入れ込んでいるようなのが気になってましたが……」


「おや、バレていたかい……じつは判定装置整備の際に少し話をしてね。

 その内容から勝手にシンパシーを覚えて、勝手に入れ込んでたのさ」


「それは……何の話をしたか自分が聞いてもいい類でしょうか?」


「ああ、むしろナカムラくんにはぜひっ……だがまずはキミからだろう?

 まとまったらしい考えを教えてほしいね。どうも博士に関する話のようだし」


そう問えば一瞬、本当に一瞬瞳が揺れたのを正面のカークは認める。

果たしてそれはどのような感情からくるものか。即座に真剣な表情に変わった顔

からはそれ以上のものが見えてこない。


「調べてほしいことがあります、それも出来れば複数の方法で」


「…何をだい?」


「発見された遺体の年齢です」


「ん? いやだから彼は48で…」


「それは法医学的見地から出した数字ではない、そうでしょう?」


背後の補佐官に視線だけを送れば慌てたようにタブレット型フォスタで資料を

目で追うと数秒の後、小さく首を振った。検死ではそこまで調べられていないと

いう所作に、続きを聞くのに僅かな抵抗を覚えながら視線を少年に戻す。


「身元不明ならともかく、まず先に博士と断定されたため年齢を調べる必要が

 なかった。それはいいんです」


「何が、言いたいのかね?」


「検査結果が48歳前後であれば自分が深読みし過ぎただけでしょう。

 ですが、そうでなかった場合我々は覚悟を決めなくてはならないかと」


何の、とはカークもオルバンも聞けなかった。

遺体の年齢を問い、その上で覚悟を求めた時点で少年の深読み(考え)は読める。

読めて、しまう。


「キ、ミは……博士の死を疑っている、と?」


彼が生きている、その本来なら喜ばしいはずの可能性が冷や汗を呼ぶ。

紅茶で潤したはずの喉が渇いているような錯覚さえ感じて声が上ずった。

この状況でそれが成立するには最低でも誰の手が必要なのかが明白なゆえに。


「……ファランディアでかつて、こういう事件がありました」


少し迷う素振りは演技か本気か。少年はそういう語り口であらましを語る。

ある国で権威ある立場にあった学者が宗教及び倫理面で許されない禁忌の研究を

始めてしまった。周囲はこれに気付いたが既に学者は狂気に取りつかれ、説得は

不可能。万が一国外に話が漏れれば彼の立場上、国際的な批判を浴びる。

国の未来を憂いた彼らは学者の暗殺を画策するがそれは全て察知されていた。

しかし学者はこれを排除するのではなく利用するのを思いつく。俗世との関りを

研究の邪魔として切り捨てようと考えていた彼にはそれは都合が良かったのだ。

学者は自らそっくりの人形、それこそ解剖をしても気付かれない精度の生体人形

を作り出しこれを殺させて暗殺が成功したように装い、見事自らを死者にして

隠遁してみせたという。


「…………」


「まあそいつは別件で自分やマスカレイドと対立したので対処しましたが……

 いえ、そっちはいいでしょう。それよりも、分かりますよね?」


──よく、似ているでしょう?

そんな続く声が聞こえた気がした。

一見すると何も似ていなく聞こえる話。共通点といえば優秀な学者の死か。

だがもう一歩踏み込んで考察すればその学者が知識だけでなく高度な技術力を

持っているのが窺える。肝はそこだった。ああ、どうして思い至らなかった。


話の学者も彼の博士、どちらも自らの死の偽装を簡単に行える能力がある。


途中でこちらが察して言葉をなくしていたのを気付いていただろうに最後に

わざわざ追い打ちとは痛み入るよ。


「だ、だがっ、こちらの遺体は間違いなく本物だとっ…」


「博士の技術力なら、あるいは当人の協力があれば生体情報としては同一人物の

 死体を用意するのは可能では?」


「っ…」


そうまさにそこなのだ。

クオン・クルフォードだから生じてしまうその疑念を見逃していた。

彼ならばその外見からDNAに指紋、虹彩等の個人識別に使える部分が全て

同一な偽遺体を確かに用意できる。オリジナルの情報は当然本人が所持し、

複製できる技術と知識も彼にはある。


「確認に、遺体の年齢を選んだ訳は?」


「そこだけはおそらく複製しきれてないと考えるからです。

 検視官が所感でキレイだと残すぐらい致命傷以外何も無い(・・・・)遺体であるのなら、

 積み重ねた年月までは再現していない……50年近く生きた体にその時間が

 蓄積されてないとでも?」


「ぁ…くっ、まさか十代に指摘されるとは!

 確かにいくら博士でもケガや病気と無縁な人生だったとは思えない。

 加齢による何らかの負荷(キズ)の痕跡が体に無い方がおかしい、か」


「あとは隔絶的な能力を持つ人物の暗殺とその入れ替わりの難しさ。

 政府が唯一把握している自宅に遺体を隠すという不可解さ。

 そもそも最大の犯行証拠である死体を丁寧に残しておく不自然さ等から

 発見させるために用意したもの、という作為性を感じています」


「…………」


本人の企てなら暗殺・入れ替わりの難易度は無視できる。

自宅保存は死の偽装を画策するなら博士の場合は逆にそこしかない。

遺体を残した点には一応博士の生体情報を実物として残しておきたい、という

言い訳があるといえばある。彼が自らの痕跡をいかにして消していたかが不明な

以上データでそれらを残すのはそのナニカに消される可能性があるからだ。

尤もそれなら自宅ではない場所で保管する。こんな事態になった時点で

その言い訳は説得力が弱い。


「とはいえ、これらは所詮状況証拠。あとは…」


「ふぅ、分かっているよ。実際に調べてその結果を持って、だな。

 正直心境としては複雑だが、そこまで示されて再調査を認めないほど蒙昧な

 大統領ではないつもりだ……オルバンくん」


「はい、即座に手配いたします。遺体の年齢推定はもちろん。

 クローニング技術が使われた痕跡も同時に調べましょう。

 偽装されている可能性も考えてどちらも思いつく限りの方法で」


「頼むよ」


「お願いします」


タブレット(フォスタ)を操作しながら頷くオルバンだが同時にこうも説明する。

情報規制を徹底させながら必要な人員と機材を揃え、再鑑定をするには少し

時間が欲しいと。


「どれぐらい必要だい?」


「1時間前後は欲しいです」


「そんなにかい?」

「たったそれだけ?」


同時に口からこぼれ出た反する感想に見合う大統領と少年。

そして察し合った感覚の違いに互いに微苦笑を浮かべる。ガレストで主立って

使われる各種端末による調査やスキャンは余程膨大なデータを読み込まない限り

結果が出るまで長くとも数秒程度。それに慣れ切っていたカークとそれが日常に

存在しなかった時代の地球(日本)での生活が長い少年とでは時間感覚に差があるのは

当然であったか。先人たちの失態と先程の説明不足をまるで笑えない話だ。


「あぁ……さて、突如出来た1時間だが、結果次第ではそれ以上かな?

 夕食までにはキミを帰したいと思っていたんだが……」


誤魔化す意味と予定の確認の意味を込めて話題を変える。既に式典は終了済み。

現在は教師・生徒の代表陣が政府高官らと懇親会もどきの顔合わせ。

そして今後のスケジュール調整の話し合いが行われているはずだ。

続く形で軽い取材やインタビューも。それらに関わらない教師・生徒は彼らが

カラガルに到着から専用に貸切っているホテルへ戻っている最中だろう。

昨日までの予定ではこれに合わせて少年も戻すつもりであったが、どうやら

難しいらしい。


「そこはお気遣いなく。

 大統領にご予定が無ければ自分はこのまま続けても構いません……あぁ、

 しかし一つお願いが」


「ん、なにかね?」


落ち着いた表情でさりげなく呟いたようなその言葉に、だが彼はここぞとばかり

に子供のような──実年齢よりも幼いほどの──笑顔と共に無邪気なお願いを

口にする。


「夕食は奢ってくれません? 出来れば大統領クラスの豪華なディナーで!」


一瞬虚を突かれる。

それは素のワガママか子供らしさの演出か。


「ふっ、食文化の本家にはまだ負けるがガレスト独自の食材をふんだんに使った

 フルコースを振る舞わせよう。なに、味付けは日本人好みにさせるよ」


どちらにせよ乗っかるのが大人か。

少年はカークの返事に柔らかな笑みで応え、だが後半視線だけを斜め後ろへ。


「はい、お気遣い感謝します───いま俺らは招かれた側だぞ?」


「何も言っていませんが旦那様?」


「圧かけてきておいて何を…」


メイドと意味ありげな視線と会話の応酬をしていた。

何か約束でもあったのだろうかと疑問が視線に乗ってしまったか。

目敏く気付いた少年は静かに首を振った。


「お気になさらず。ただこの場の全員分をお願いしたいと。

 うちのメイドにはガレストの食材と料理を覚えてもらいたいので」


「……もちろんお好みのものがあればいつでも再現してみせます」


心なしか斜め後ろのメイドさんの表情が明るくなったような。

表情は微塵も変わっていないので勘違いだろうかと内心混乱するカークを

知ってか知らずか少年は何も聞くなとばかりの笑顔で圧をかけてきた。


「ところで大統領、突然出来た1時間ですが夕食には遠く、休憩するにも

 内容が内容ゆえに落ち着きません」


「あ、ああ、そうだね、なら有効に使わせてもらおうか。

 まだまだすり合わせたい話や報告が必要な情報はあるからね……お互いに」


「ええ」


表面的にはそれに狼狽えることなく、ある意味話題を戻すカーク。

いくらか横道に逸れてしまったがそこがこの会談の本当の主題である。

オークライでの事件。違法地下施設。転移拉致事件。それらに関する捜査方針や

役割分担、連絡手段の構築、そして現時点での情報交換。元よりそれが本題で

あったためか意見や情報はスムーズに交差した。尤もガレスト側からのそれらは

ほとんど(・・・・)確認や想定内の報告に終始し、逆にマスカレイド側からのそれらは

大いに政府側を驚愕させることになる。バランスの悪い交換に見えるが、

法や組織に縛られない速度と方法での活動が可能なマスカレイドと土地勘と

人手が圧倒的に勝るガレスト政府が手を組むメリットを双方が認識しているため

不平不満が出ることも無かった。

そしてそんな1時間はあっという間に過ぎていき────




「どうやら我々は不可能に挑戦する覚悟を決めなくてはならないようです」




────オルバン補佐官のそんな発言が全てを表していた。



「これは、まーた徹夜かな」


「夜食はこちらが奢りますよ大統領」


心中お察しする、とでもいうような顔で気遣う少年のそれに涙が出そう。

まだ話し合ってもいない未知の異世界(ファランディア)の件もあるというのに博士の偽装死がほぼ

確定的。果たしてそれは彼が主犯なのか協力者なのか。自発的だったのか

仕方なしだったのか。そしてあの何世代も先の技術を使っているかのような

天才をどう追えばいいというのか。山積みに増えていく問題、難題を前に

眠れない夜が増えそうだと疲れ切ったため息を隠す事なく吐き出したのだった。




余談だが、その後少年がメイドに用意させた夜食は大統領の疲れた胃と心に染みる優しい味であったとか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大統領の格が高くて好きです というかステラさんいる!?!?ステラさん好きなので嬉しい [一言] 最新話に追いつきました! これからも更新を楽しみに待ってます…!
[良い点] ステラ合流嬉しい [気になる点] いつ合流したんだろ 再会エピソードはこれからやると思うけど
[良い点] うぉぉステラさん合流!すごく楽しみにしてました!これからの更新が今まで以上に楽しみです!
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