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帰ってきてもファンタジー!?  作者: 月見ココア
修学旅行編 第二章「彼が行く先はこうなる」
232/292

オークライの長い一日3

「あら、その顔は何か厄介な報告でも?」


「ちっ、城田教諭、善処ではなく従ってもらいます!

 断るなら黙って座っていてください。何も期待しないので」


「あははっ、そう言われると張り切らざるを得ないわね!」


彼女のプライドを刺激し煽る言葉を残して遮音バリアを解除。

もう彼女には用はないとばかりに振り返ると思念通話で報告された厄介事に

対処するために指示を待つ一人のオペレータに「開け」と短く命じた。


「は、はい! セントラル4、正面モニターで開きます!」


フリーレの正面におよそ24インチ程度の空間モニターが開く。

そこに映るのは何かの建物の中と思われる暗がり。小さな光球だけを

灯りにして似た容貌の男女の生徒が並んでいた。これまた似たような

戸惑った表情を浮かべて。


『すいません、ドゥネージュ先生。

 無事セントラル4に到着し市長と会えたのですが、その……』


「話は聞いた。気にしなくていいセンバ。

 お前達は私の指示に従っただけだ」


直前までの城田への冷めた声色はどこへ消えたのか。

自然と労う口調になっていたのは言葉通りの意味だけか。

まさかのハズレを引かせてしまったことへの申し訳なさか。


セントラルとは市政の中心たる行政庁舎の呼称である。

だが円形が基本で、外敵(輝獣)に備えるために中心部であるほど

重要度が下がってしまうガレスト型都市の事情から行政機関は中層に

集中することになり、市政中枢の拠点ではあっても一か所のみにすると

偏った配置になってしまい反対側のエリアに住む住民が利用しづらく、

都市全体に目が届かない。またその一か所が被害を受けると全体が

機能不全に陥る危険があった。それを防ぐためにセントラルは一つの

都市にたいてい4つ存在している。主に内層中央駅から一番近い位置に

セントラル1を建設し、それを頂点に見立てて時計回りに、等間隔に

離れた立地でセントラル2、3、4と庁舎が作られている。機能や

役割に差はなく、周囲の環境で多少得意(慣れた)分野に差が出る程度だ。

どれも市政中枢機関といえるためか。市政のトップたる市長はどれかに

常駐しているわけではなく定期的に出勤庁舎を変えるのが慣わしになっている。

尤もそのせいでフリーレはオークライ市長とコンタクトを取るために

すべてのセントラル庁舎に貴重な人員を送る羽目になり、そして

4で当たり(ハズレ)を引いたらしい。


「ともかく代わってくれ、後は私が話す」


男女の双子が頷くと向こう側のモニター位置が変わり別の人物が映る。

比較的整った、されど装飾の少ない白い職員制服に役職を示すバッジ

だけを付けた50代前半と思われる女性だ。


『これはいったいどういうことですか!?

 なぜ部外者である、しかも学生が勝手に動いているのです!?

 ここはクトリアではなくオークライ! 私達の都市ですよ!!

 なんて非常識な!! これだから最近の若い連中は!!』


彼女は少ない光源の中でもはっきり怒り心頭。一目で頭に血が上ってると

解る表情で挨拶もないまま怒鳴りつけてきた。フリーレはただ思った。

これはハズレ中のハズレかもしれん。


「……失礼、どなたでしょうか?

 私はガレスト学園教師フリーレ・ドゥネージュ。

 現在有志による救助作業の指揮を取っている者です」


そう思っても通すべき筋を通さないのは後々問題になる。この女性が

指摘する通り、いま自分達は緊急時とはいえ勝手に救助作業をしている。

装備はあっても資格も勉強も経験も足りない学生たちが主になって、だ。

話が通じそうになくとも立場ある人間に報告しておかなければならない。

出来れば許可ないし緊急時ゆえの黙認の言質を得たい所であったが、

どうやら難しいようだと仏頂面の奥で頭を抱えていた。


『なっ!?』


返る驚きは、知れ渡っているフリーレの名か。それともこの女性が誰か

知らない体を取ったからか。背後の暗闇から薄ら聞こえるフリーレが

いることへの歓迎ないし喜ぶような声からすれば前者だろうか。


『ドゥネージュ家の剣聖ですって!?

 そ、それならばなおのこと子供を使って何を勝手なことを!』


『市長、お待ちを、相手はあのっ』


『黙りなさい! 緊急時における指揮権は私に集約されます!

 そしてこの都市には充分なシステムと設備、部隊が用意されているわ!

 旅行者に助けてもらわずともオークライは自分達を自分達で守れます!

 部外者など邪魔なのです! それがかの十大貴族の一角でも私は

 断固抗議します! 最悪逮捕も辞しませんよ! それが嫌なら即刻、

 英雄願望に取りつかれた馬鹿な行動はやめて、指示に従いなさい!

 今のあなたはただの教師! 私が市長っ、ここのトップです!』


背後の─おそらく庁舎職員からの─制止を切り捨て、結局自己紹介すら

しないまま女性市長はひどい侮辱を受けたとばかりに顔を真っ赤にして

こちらを糾弾する。この考え自体(・・)は何も珍しくはない。どこの都市も

自らだけである程度の生活が成り立っている。自衛や治安維持の分野でもだ。

頻繁に他都市との交流や一般層の旅行等が行われるようになったのは

近年に入っての話でたいていの都市その中枢機関ではまだまだ独立独歩に

近い思想を持っている。法としても他都市所属の各種部隊は要請や許可が

無いと活動できない。そこを専門家でもない部外者が緊急時だからといって

勝手に活動しているのだから通常ならば学園側の責任問題であり、それこそ

逮捕者が出ても文句はいえまい。通常ならば(・・・・・)


「無論、それは重々。責任もいかようにも私が取ります。

 しかしオークライの防災機能、組織が全く動いていない現状、唯一

 動ける者達として傍観してる訳にはいきません。我々が動けば

 助かる命があるのです。そこはご理解を……」


『何を訳の分からないことを! うちはっ、オークライには十全な

 防災システムと充実した装備を持つ部隊が都市全土に配備

 されているんです! この事態に動いてないわけがないでしょうっ!

 教師風情がっ、馬鹿にして!!」


フリーレは一瞬何をいってるんだとちらりと市長の背後に映る女子生徒に

視線を向ける。気付いた彼女は小さく首を振った。どうやら報告のために

差し向けたこの姉弟の話をきちんと聞いてくれなかったらしい。

状況を証拠込みで説明しようとする前にこの市長が激昂した姿が、

これが初対面ながらありありと想像できた。まさかそこからとは、

と内心うんざりしながら彼女は手元の空間キーボードを叩いた。


「市長、これをご覧ください。

 うちの技術科生徒が放った偵察用ドローン達による空撮映像です」


通信用モニター周囲にそれらが撮影している映像が出るようにすれば

その行為に瞬間的に女性市長は沸騰したが、すぐに首を傾げた。


『だからっ、この非常時に何を勝手なっ!

 って、なんですかこれ? どれも画面が真っ黒で……ふんっ、

 所詮学生のドローンですね、撮影すらまともにできないなんて!』


「いいえ市長、それがリアルタイムの、通常視界のオークライです。

 今から暗視映像に切り替えますのでモニター隅に表示されている

 エリア名から状況を確認してください」


『いったい何のはな、し、を……え?

 なに、これ……どうしてどこもかしこも真っ暗で……これは事故?

 ここには火災が!? え、救助隊は? 警察は? 軍は?

 いったいなにをしているの!? どうしてどこにもいないのよ!?』


「何もできないのですよ、そちらでもフォスタや各種端末がダウン

 しているはずです。それがオークライ全土で起こっているのです。

 こちらの調べではフォトン炉心は全て停止状態、防災システムを

 含めた都市運営システムも破壊されておりどちらも再起動は難しいと」


『そ、そんなっ!?』


驚きの声は市長からだけではない。周囲の他職員たちからも届く。

どうやら市長ほどではないにしろ彼らはこの事態の規模を過少に

考えていたようだ。せいぜいがセントラル4周辺だけで起こった災害だと。

無理もない。彼らの情報収集の手段は失われている。現状把握すら

難しい状況。ましてや本来なら絶対に避けるために幾重にも、そして

徹底的に対策していたはずの都市運営システムの全域停止が真実だ。

起こりえないはずの事態。しかも個人所有のフォスタすら全てが

ダウンするなど想像の埒外。生徒達の派遣は情報不足を補う意味も

あったのだが認識の差が想定以上で話にもなっていなかったようだ。


「市長、ですので今は」


『あ、あぁ、うそよ! なんでよ!? どうしてこんなことにっ!?

 私はちゃんとやってたのにっ! オークライ全域なんて!?

 やっとここまで上り詰めたのに! こんなことで足を引っ張られて!!』


「し、市長?」


現状を認識してもらい、最低でも黙認。出来れば協力体制をと

話を続けたかったフリーレだがモニター向こうの市長は少ない光源の

中でも解るほど蒼白の顔と常軌を逸した表情で喚き散らしていた。


『お、落ち着いてください市長! 今ならまだ!』


『うるさい! こんなのどうしたって私の責任問題じゃないの!!

 私は何も悪くないのにっ! せっかく手に入れた市長の座が!

 くそ、どいつもこいつも無能共が! 足を引っ張って!!

 システム担当は誰だ!? 炉心管理は!? お前かっ、お前かぁ!』


『ひっ、ち、違いま、がっ!?』


『私じゃありません市長! 気を確かに、きゃあっ!?』


宥めようと近寄った職員達を怒鳴りつけ、責任転嫁と八つ当たりの

できる相手を探すように次々と詰め寄っていく姿は正気ではない。

遠地にいるフリーレはポーカーフェイスを気取っていたが胸中では

最悪のハズレを引いたと。泣き叫びたいのはこっちだと涙目であった。

だからあたふたと狼狽える女子生徒の隣に弟がいないのに気付くのが

僅かに遅れた。


『お前達がっ、っ、なにっ!?』

『おっと失礼、とにかく暴力はいけないですよ市長?』


突然市長の背後から外骨格を纏った腕が伸び、彼女を羽交い絞めにする。

極めて柔らかな声と欠片も傷つけない繊細な挙動であったが冷静さを

完全に無くした市長は根本的なパワーの差など知ったことかと

そのまま暴れる。が。


『離しなさいっ! 力尽くで従えようだなんてこの野蛮じっ、うっ!?!

 ぁ、あ……────』


その手足が急に糸でも切れたように落ちた。


『おや、どうしましたか? あれれ、気を失ったみたいですね。

 どうも興奮し過ぎてしまったようです。どうしましょうか?』


『よ、陽介、あんた……』


それをあっけらかんとバイザー越しの笑顔で語る陽介()だが、

誰が見ても彼が何らかのスキルを用いて意識を刈り取ったのは明白だった。

それでも誤魔化す態度の彼に陽子()は少々の苦笑いを浮かべたが、

即座に仕方ないとばかりに首を振る。


『まあしょうがないか。

 誰か、市長を横に出来る場所へ運んでくれませんか?

 出来ればお疲れの市長がゆっっっくりと眠れるように静かで、

 安全のために簡単には外に出れない部屋があれば、そこで』


そうして弟に負けず劣らずの満面の笑みを浮かべながら一見すると

まともそうな言葉で、だが暗に「中の音が漏れない部屋に閉じ込めろ」と

告げていた。その意図は充分に、そして納得と共に周囲に受け入れられる。


『は、はい』


『一階会議室とかどうだ? 防音で、扉は手動式だし鍵もかかる』


『机とか一応ベッドにもなるな……積めば封鎖もできるし』


『監視っ、じゃなくて介護に何人かつけとかないと』


『腕力なら自信が! い、いえ、運ぶためですよ!?』


『私も暴徒鎮圧術、もとい医療の心得があります!』


などと相談し合いながら集まった男女混じった複数の職員達は陽介から

意識の無い市長を預かると奥へと運んでいった。その際彼から追従するよう

自分達にセットされた光球(ライト)のスキルに、その気遣いに感謝しながら。

ただ、そのスムーズさから市長の人望は推して知るべし、である。

本音の感謝は別のところにあったのだろう。そして彼らを見送った後、

小さくハイタッチする双子にモニター越しのフリーレはぼそりと呟く。


「…………確かに妹弟(きょうだい)だよ、お前達は」


今更ながら妙に納得させられる対応に小気味よさを覚えればいいのか。

それとも一教師として問題行動を注意すべきか悩ましいところである。

あるいは、自分達には無い兄弟らしさを持つ彼らを羨ましがればいいのか。

しかしその思惟は代わりとばかりにモニターに映り込んできた人物に

脳の片隅に追いやられる。


『失礼、ドゥネージュ教諭及びガレスト学園の有志の方々。

 私はセントラル4代表の第四副市長パウエルです。協力に感謝します。

 市長のことは申し訳ありません。平時においては問題の、その、

 少ないお方なのですが……』


何度か市長の暴走を諌めようとしていた老齢の男性が小さく頭を下げる。

発言の濁された部分から推察すれば市長は平時から問題のある人物で

あったらしいが今はそこを追求すべきではない。フリーレからすれば

興味もない。だが切り込み所ではあった。


「いえ、有事、平時では必要とされる人材に違いがあります。

 そういうことですので、お互い何も見なかった聞かなかった、

 そうですね?」


『……はい、市長は学園の方々が来る前にお倒れになっていました』


そういうことになる、という言質に頷き合う両者。これにより市長の

問題発言・行動、そしてそれを─分類としては─暴力的な手段で止めた

生徒達の行動も無かった(・・・・)という事になり、それが周知される事に。

例え後々市長が騒いでも他の職員達が無かったといえばそれは通らない。

先程の騒ぎと反応を見ればこの場で市長に味方する職員はいないだろう。

一方、庇われたと察したのかモニター隅で陽介が小さく頭を下げていた。

若干の苦笑と申し訳なさの混じる表情は造形としてはまるで似てないが

どこかその兄(シンイチ)を感じさせ、市長のアレぐあいに疲れた心が少し落ち着く。


『以後は私がここの責任者として対応させていただきます』


「よろしくお願いします。

 今更ですが、勝手な判断で動いて申し訳ありません。

 緊急時と人命重視ゆえでありそれ以外の他意はないと明言します」


『いえ、素早い動きと適切な対応、市民に代わり重ねて感謝します。

 立場上、手放しで褒められませんが協力するよう各所に……あっ、

 そうか、どこもかしこも端末が死んでいるのでしたね。どうすれば!?』


『それについてはこちらを。

 全機能をアンロックした学園のフォスタです』


『自分達はこれを届けるのも任務でした。予備機ですので好きにお使いください』


「現在、他のセントラル庁舎、中央駅付近の警察、消防、病院にも

 配置してありますので情報の共有と指揮系統の確立を」


『なんとっ! 助かります!』


「あと確約はできないのですが、こちらの技術班の言葉を信じるなら

 今から15分から20分程でそれらの施設内のフォスタや端末が

 一時的に復旧します。あくまで強引な復旧らしく今日一日までしか

 動作を保障できませんが」


『充分です。いまはその今日一日が重要でしょう。

 それを念頭に各所と足並みを揃え、準備を進めさせてもらいます!

 それまでは申し訳ありませんがあなた方に頼らせていただきたい』


「もちろん、全力を尽くさせてもらいます。

 では、何かあればこちらまで連絡を……センバたちは正規の救助隊か

 警察が駆けつけるまでセントラル4に留まって庁舎と職員の護衛と

 手伝いを。今は想定外の非常時下だ、誰もが我を失う可能性がある。

 火事場泥棒的に悪事を働く者も出ないとは限らん。

 力持つ者として目を光らせておけ」


『了解しました!』

『任せてください!』


双子の力強い返事に頷いてセントラル4との通信を切った。

途端にどっしりとした何か重たい荷物でも背負わされたような

感覚に襲われ溜め息と共にイスに座り込む。軍人時代にも偶に見かけた

有事の際にとかく味方の足を引っ張るのだけが得意な人間はただただ

厄介であり接しているだけで何かが削り取られたような錯覚に陥る。

端的にいえば、疲れた。形の上でお互いの失点扱いで取引に使ったが

彼が市長を物理的に止めてくれなければどれだけ時間を無駄にしたことか。


「おつかれさまー!」


表情や言葉に出せない感謝に浸っていたフリーレの背後に

気遣う発言で神経を逆撫ですることに成功した人物が現れる。

途端に千羽妹弟のおかげでまだ残っていた穏やかさが瞳から消えた。


「…………なんですか、城田教諭?

 今更復旧に失敗したとかいうのならさすがの私もこの場でブレードの

 試し切りをしたくなってしまうので言わないでくださいよ?」


「これはマジなトーンですねぇ、KYな私でもわかるレベル!

 まあでも、そっちはちゃんとやってるから安心してよ。

 この程度も出来ないと思われると癪だし……あと十数分はかかるけど」


「それは朗報です」


「けど残念ながら悪い報告もあるわよ、聞く?」


「……地球ではそういう時まず、いい話と悪い話があると言うものでは?」


「そういうセオリー興味ないから!」


「ぐっ、わかりました。なんですか悪い報告というのは?」


感情としてはこれ以上の厄介話など聞きたくはないが、彼女は

良くも悪くも天才。自分達では気付けない何かに気付いたとしても

不思議ではない以上、その悪い話を聞かない選択肢はないのだ。


「うん、お疲れで休んでるところになんだけど……そこの教師、限界よ?」


「え、あ……サトウ先生!?」


言われて彼女が指差した方向を見れば、先程から半分采配を任せていた

同僚教師の女性が机に突っ伏す形で半ば以上、否、完全に倒れていた。


「お、お気を確かに!?」


「あ、うぅ……ごめんなさいドゥネージュ先生。

 わた、わたし……もう、無理ぃ……きゅうぅっ?!」


慌てて駆け寄って抱え上げたがいつもの闊達とした笑顔はなく、朦朧

とした様子で焦点の合ってない瞳をぐるぐる回しながら彼女は意識を手放した。

フリーレが当初から請け負っていた半分でも、仮にもガレスト学園に

就職できる程の教師であっても、佐藤教諭に殺到した情報量は規格外で

処理しきれなかったのだ。むしろなまじ優秀で多少は処理できて

しまったがためにこうなったともいえる。


「すいません先生! お、お前達、全部私に戻せ!

 それと誰でもいいからサトウ先生を横にできるところへ!」


「はい!」


「ふふ、一般教師にしては頑張ったじゃない。お疲れさま~!」


一人の生徒に担がれていく彼女を余所に、労う言葉をおちょくる意図で

使う城田にフリーレは過去類を見ない不愉快さを感じる。復帰が遅れた

自らへの苛立ちも合わさって鋭く城田を睨みつけた。が。


「っ、あなたも気付いていたならもっと早くに!」


「で、ここからが悪い想像の話なんだけど……」


「は?」


「元軍人のドゥネージュ女教師としてどう思うかしら?

 この事態を引き起こした犯人にとって、この状況は是か非か?」


「っっ!?」


虚をつくように発せられた疑問は、無視できないものだった。

目の前の事態。災害にあって動けない人々。

ある助力のおかげでそちらだけに注意を向けられているがゆえに、

失念していたその事実。彼女が暴いた事実と最初に放たれた都市を

壊滅させられる攻撃。犯人の狙いがなんであれ、だがそれは防がれた。

そして余波による被害も偶然いた学園生徒達の即席救助隊で最小限に

抑えられている。犯人側からすれば想定外であったろう結果。

だが果たして、それはここの壊滅を狙った者からはどう見えるのか。


「テロリストの心境なんて興味ないけど、そろそろ()の頃合いじゃない?」


悪辣な、そうなればいいのにとさえ言ってるような微笑みに息を呑む。

否定の言葉が出てこない。最悪にもフリーレも同意見であるからだ。

そしてその予言は報せと共に形となった。


「え、なに!? もう一度どうぞ!? どうしたの、返事を!?」


「っ、どうした!?」


「先生、パデュエール班からの救援要請が途中で切れました!

 班の誰とも通信が繋がりません! 応答してください、誰か!?」


「ほら、来た!」


やっぱりだと呵呵大笑する女を意識して無視しながらフリーレは

ここから動けない、動くわけにはいかない自分に身体を震わせながらも

呼びかけの続行と周辺から救援や偵察に向かわせられる班やドローンを

探すように命じた。それしか、できることがなかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] パデュエールの連絡が途絶えたのは展開によってはシンイチくん激おこ案件になるんじゃ。
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 敵の目的が何か不気味⋯⋯
[良い点] 更新感謝です! [一言] やっぱりナカムラの姉弟!!このほんのちょっとのカレを思わせる彼らの行動や言動が微笑ましくてそれでもすれ違いを感じてちょっと泣ける
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