表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰ってきてもファンタジー!?  作者: 月見ココア
修学旅行編 第二章「彼が行く先はこうなる」
229/286

居住都市オークライ

こっからは短い話を、小刻みに、いく、予定……予定










───光が消えた



   そして



   光が落ちる───




いったいどれだけの者がそれを見ていたのだろうか。

灯りという灯りから光が失われた暗闇の中で戸惑い、慌てる人々。

数瞬前まであった当たり前の一つが消えただけで世界は簡単に乱れた。

それをあざ笑うように、祝福するように、裁くように、光が落ちる。


それはまさに圧倒的であった


言葉通りの閃光であった


救命の声も


嘆きの叫びも


不明の怒りも


破滅の恐れも


生まれる前から殺すような一瞬(悪意)であった


けれど




“知るかボケ”




そんな声は誰も耳にしていない


実際、その地の誰もそんな言葉を発していなかった


それでもその決定(殺意)に“否”と


お前がどけ、と


振り上げられたその(かいな)は人々の目に光より焼きついた




「あはははははっっ、君って本当になんでも出てくるねぇ!!」




快楽(狂気)に笑う女も見惚れるほどに







─────────────────────────



後に「巨神事変」とガレスト史に刻まれる一連の騒乱にして争乱は

この時期のガレストを語るうえで避けて通れない大事件であるが、

始まりはいつであったか、は意見が別れている。


直接的に「巨神事変」といえる最終的に起こった事件の始まりか。

その要因となった事態が起こった頃か。首謀者たちが暗躍し始めた時か。

解決の立役者たちがガレストに訪れた時か。他にも諸説あるが一般的には

地下鉄路線上、歓迎都市シーブ、士官学院都市トリヴァーに続く都市

『オークライ』で起こった事態から、というのが通説である。



─────────────────────────




 ここオークライは規模としては歓迎都市シーブ以上の大都市だが

中身としてはこれといって特徴のない一般的な居住都市である。

対輝獣の軍基地や都市警察の存在。外層、中層、内層(中央部とも)

さらに中央の穴(センターホール)等の構造も他都市と何も変わらない。都市規模の大きさと

民間人の多さゆえ軍もそれに準じた大規模なものであるがただの都市だ。

堅牢なドームに囲まれ、高さが一定の建造物が等しく均等に並んで

一般階級の人間が住民の大多数を占める、人々が生活するだけの都市。

当然といえば当然の役割だが、それ以上の機能も役割も持ってないのが

このオークライであった。


とはいえ、そういった都市の方がある意味地球との交流の影響が顕著で

異世界からもたらされた文化、知識、商品、等が元からガレストに

あったそれらと混ざりやすい環境といえる。生活に根差した物品や道具

というものは地球側の方が種類や製作ノウハウが優れていたからだ。

高い技術力や汎用性の高いエネルギーがあっても物資不足やフォトン枯渇

問題を抱えるガレストではそれらは多用できない現実がある。日々の

ちょっとした不満や問題点を解決するのに地球製の日常用品は大いに

活躍の場があった。また地球側から見て、かなり文化や生活様式が

異なる社会ゆえそれらに合わせた別ラインでの商品開発が急務となり

地球向け・ガレスト向けで別個に人材や生産ラインが求められた結果

世界レベルで研究・開発・販売といった様々な分野での雇用増進がなされ、

高い経済効果を与えていた。無論その流れに全ての人間が乗れた訳ではないが、

それはいつの時代、どこの世界の、ナニに、であっても同じであろう。


そういった観点でいえばシンイチ少年が表において一番見たかった

ガレスト社会、異世界交流の結果を受けたガレスト都市はこの

オークライのような都市であったのだろう。


だから彼らも面白がって観光をしていた(・・・・)のだ。

トリヴァーにおける実地体験学習・最終日に起こった『突発的事態対応訓練』

という名の元帥のお遊びによる混乱で翌日の予定が流れた影響で早めに

次の予定地への移動が決まった。そして発生した隙間時間を乗換駅となる

オークライでの自由行動として活用することに。そこにはフリーレからの

─本来必要のない─お詫びという意味もあったが、暗殺未遂事件に

見え隠れする伝説の男(オルティス)の狙いがガレスト学園である可能性から、生徒達を

遊ばせられる最後のタイミングが今しかないと考えたのである。

事件直後という一番仕掛けにくい時期と元帥がまだ駆けつけられる圏内に

いる事実は安全と見たのだ。尤もシンイチ(マスカレイド)が警戒しているからこそ

出来たことであり、今後は例年以上に生徒達の動向を徹底的に管理した

修学日程となってしまうことへの前払いのお詫びでもあった。


とはいってもそんな裏事情は引率教師達すら聞かされておらず、事情を

知るシンイチが思い悩むフリーレに与えた『それっぽい言い訳』で彼女は

周囲を説得してこの自由行動時間は誕生した。そしてそうなったからには

楽しむのが彼でもある。


そうしてシンイチは切り揃えられたような建物が並ぶ色味の薄い街並みを

眺めながら日常に根差す店々をレジャーのように楽しんでいく。

それは地球的・ガレスト的・その複合で三様並ぶクトリアとはまた別の

光景であり、構造であり、シンイチはその違いをまさに観光し楽しんでいた。

例えばよく知るコンビニチェーン店に並ぶガレスト特有商品、その

ラインナップに目を丸くさせ。


「ああ、なーる。日々の掃除とかはこういうのが求められるのか」


一般武器ショップに並ぶ武装の程度や種類から何事かを考察し。


「つまり逆をいえばこれぐらいは一般人に持たせなきゃダメなわけか」


ガレスト産の作物を地球人のコックが料理する店で軽食を味わう。


「やっべ、見た目と味が一致しなくて面白い! しかもうまい!」


それらをゴラドタクシーを足にして見て回る。


「大丈夫、何もしないから。ふふふ」

「ブオブオッ!?」

「お客さん!?」


ガレスト人やこれが初めての訪問でもない者達からすれば

見慣れたモノでしかなかったがそれを少年は呆れるほど面白がった。

尤もいくらか彼と付き合いがある者達だ。シンイチの視線が街並みだけ

でなくそこに住む“人”にも向いているのは察していた。独立した部分と

混ざった部分が同居─混同ではない─していたクトリアとも地球のコピー

といえたシーブとも違ってオークライの人波や様子はおとなしいものだ。

しかしそれは『活気がない』とイコールではない。


「地球の、特に日本の方にはびっくりされるのですがガレストでは

 就業時間がきっかり決まっていて都市行政府ごとに管理されています。

 働き過ぎも休み過ぎもあり得ません。それでいて仕事によっては交代制

 もあるので途中の仕事は次の方が引き継がれます……まあ人間がやること

 ですので全部がうまくいってるとは言い切れませんが」


違反するか徹底し過ぎたかで問題となることが度々あるのだと令嬢は

苦笑しつつも自分も気をつけなくてはと語る。現在はちょうど多くが

働きに出ている昼間という時間ゆえに人気が少ないのだろうと。


「特にこういう普通の都市(・・・・・)だと日用品の生産業とか何かの

 マシーンの部品とか作ってる工場が一番盛んだからねぇ」


現在絶賛生産中なのだろうとは狐耳娘の談だ。

だからかオークライを闊歩する人影はこれまでの都市で一番少ないが、

観光客がメインのシーブの騒がしさ。士官学院生と軍関係者が

多いトリヴァーの厳粛さとはまるで違う、見えない部分での

活気が都市全体で息づいている。今、街並みを彩る人々は

極端に幼いか年老いた者を除けば休日中か交代待ちの者達である。


「これも意外に思われますが本人がなろうとするか、よっぽどの

 問題を抱えていない限り無職にもなれません。どうも技術力が

 高いから単純労働は機械に代行させていると思われてますが

 全体的にはそうでない部分が多いのです」


「ステータスの恩恵で地球人より身体が強いのもあるけど、

 そもそもフォトンが枯渇するから始めた異世界交流だしねー。

 重要度が下がるごとに使用制限が厳しくなっていくんだよ」


そここそがガレスト社会が抱える歪みか特色か。はたまた因果か。

全ての原動力となるエネルギー・フォトンの将来的な不安定さから、

その技術力の高さと相反する形で単純労働が多く需要もある。

ひとり、ひとりが地球人より頑強で健康的に働ける期間が長いのも

それに拍車をかけている。地球との交流で物資不足の部分が

少なからず解消されているのも大きいだろう。ガレスト人の生活は

交流前よりは遥かに安定し豊かになっているが彼らの世界を支える

フォトンの恩恵は一般の人々からは徐々に遠ざかっていた。誰もが

スキル仕様の端末を持つ世界で、日常スキルと呼ばれる力がありながら

その便利さを彼らは多用できない。出来るのは一部の富裕層か日常に

割ける時間が少ない戦士階級だ。地球由来の日常便利グッズの需要が

高いのはそういう背景からでありスキルの多様な使い方が

生まれなかった(広まらなかった)理由でもあった。


「けどライフラインは保障されてるからいわば、生活環境は

 整えてやるからびしびし働けー、ってのは言い過ぎかにゃ?」


「あ、あの、余暇をどう過ごすかは自由ですからね!

 管理してるのはあくまでその期間だけですからね!?

 社会全体がブラックのような誤解を招く言い方はやめてください!」


「ハハハッ、でも色んな違いはあっても確かにここは街だ。

 ニンゲンが暮らしている、生きている場所だ……うん、やっと

 ガレストに来た気がしてきた。そうか、こういう場所か」


彼の声は違いを認めつつもどこか何も変わらないとでもいうような安堵がある。

文化・歴史・技術等の背景が異なっていても同じ人型の知的生命体の営みは

大きくは変わらない。日々働き、糧を得て、衣食住を整え、友と遊び、

愛を囁き、家庭を作り、子を育む。


無論それが絶対ではないが、人間が心を手に入れた動物といえる以上は

これが基本となる。なってしまう。そこから意図してか意図せずともか、

はみ出す者もいるがそれを許容しつつも世界的な脅威や問題点を盾に

役割・仕事・余暇も与えて動かすこの社会構造はある意味では

理想の一つであろう。尤も。


「まあ、人的資源を遊ばせておく余裕がないだけだろうけど」


効率的に無駄なく使ってやるぜ。という意気込み(企み)も感じた。

じつに人間臭い。うまくやったな。とはシンイチ少年の談である。


「そ、それはそうなんでしょうけど……」


「お前は本当に身も蓋も無いよな」


これには一部地球人たちから呆れ顔。

生粋のガレスト人たちは苦笑いでノーコメントであった。

尤も彼・彼女らの顔には“こいつらしい”と書かれていたが。

そうして彼らも面白がって観光をしていた(・・・・)のだ。



──────────光が消えるまで



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 次回がすごく気になる終わりかた 小刻み更新期待して待ってます。 [一言] あけましておめでとうございます。 お体に気をつけてください。 応援してます。
[気になる点] 改行するなら30字ごとにしてもらえませんかねぇ?正直読みづらい。
[一言] 更新ありがとうございます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ