破〜3・前〜壊
マンネリ、イジメとやってきたわけですが、今回は、“臭い”です2つ以上の意味で臭いです
はじめまして、俺の名前は黒岩、破壊屋で一番まともな男だ。
歳は24
ちなみにリンとジンとユリは17だ。
霧川は……24。
俺とタメだ
今は夜の8時。
もう夏だな、蒸し暑いし、風がヌルイ
で、今俺はいつもの散歩道である、石段200段登った所にある、開けた所にいる。
まぁ、神社だ。
古いが独特な雰囲気が溢れてて、落ち着く
そんな中…ブン、ザッ…ブン、ザッ…
と心地いい風切り音がこの空間を支配している。
そして何ともこの空間に似つかわしく無い野郎が独り。
竹刀を握り、汗だらけになってやがる。
そうだ、今回の客はコイツだ。
この青草坊主が依頼人だ。
「ハァ…ハァ…」
夏の体育館、この言葉を聞いて、みんな何を思うだろ?
多分、“蒸し暑い”だろう。
だけど、そこに想像して欲しい。
厚い袴に胴着を着。さらに垂れ、小手、胴、面を装着した、剣道部を。
全員がきっと言うだろ。
マジ臭ッ!っと
そう、その通りだ。
この汗臭さたるは混沌たるものがある。
部室なんて、初めて入った時は息も出来ないくらいだった。
さて、俺は今中学3年生だ。
まぁ部活動の節目年…そして、受験戦争だ。
俺も、この夏の大会で引退だ。
延長なんてない。いや、出来ない
この三年間俺は俺なりに頑張ってきたつもりだ。
ま、凡人レベルじゃあ頑張っても、たかが知れてるわけで、昔からやってきた奴らには敵わない…
つまり負けが見えてるんだ。
しかも俺には、イヤな癖がある…
「円陣ー」
今日の練習のしめだ。
皆で円を組んで最後に素振る。
よし、今日も頑張れた。
「せいれーつ!」
部長が皆を整列させる。
三年は皆少し緊張気味だ、なぜって?
「よし、これから団体戦のメンバーを発表する。」
そう、今日は男子団体戦メンバー発表日だ。
…俺は“矢村”という単語が読まれる事は無いと分かってる。
だって、俺の名前だもん。
さっきも言ったが俺は俺なりに必死で努力してきた。
だけど
「先鋒…室井、次方…藤田、中堅…岡村、副将…田中、大将…三河
補欠…並木!以上だ」
な?俺は結局は匹夫な人間で、どんなに努力しても、ダメだった。
「他の男子は個人戦にかけてくれ、すまない、実力は皆同じくらいなんだが―――」
やめてくれよ!先生!!
そんな嘘つくなよ!!
「お疲れ様ー!」
防具をかたしているところに、岡村が話しかけてきた。
「お!頑張れよ、試合、中堅が要なんだからさ。」
そう大抵はなんでも中堅あたりに一番強い奴を置く事が多い。
大将は部長が断突で多いけどね。
「頑張るに決まってんじゃん。」
岡村は笑顔で返してきてくれた。
俺もそれだけで嬉しくなる。
「ただ、南中と当たったら一発だな、勝てるわけが無い。」
……………………………………南中、この学区域で、最強を冠する学校だ。アイツラはちっちゃい頃からやってて、中学からの俺達ではよほどの才能がないかぎり、勝てる相手じゃない。
ただ、分かってるよ、分かってるけど………
そんな事言うなよ。
今時間は8時、いつも通りの俺にいつも通りの場所。
ココは俺の練習場だ。
家から近くにあって、しかも人は滅多に来ない。
…ただ最近、若いお兄さんが煙草を吸いにくるけど、しかもいつも同じ時間に…
何しに来てんだろ?こんな神社に?
散歩かな?
ま、いいや。気付いた時には居なくなってるし…
俺はいつも通りの練習メニューを終える。
汗だくだくだ……
ふっと…今まで振っていた竹刀を見つめる。
―――俺…なにやってんだろ?―――
や、やべ!!また癖が!
抑えろ…俺!
俺は200段の石段を駆け降り、振りきるように家まで帰った。
「オラ!!しっかりやれ!!」
大会が近づくにつれ、練習が厳しさを増す。
ヤバいな…昨日俺寝れなかったんだよな…
さっきもも2年が一人倒れたし。
でも、倒れるわけにはいかないな、練習しなくちゃなんない
――――お前、何頑張ってんの?――――
あっ本当にヤバイ頭フラフラしてきた、熱いよこの中…
汗がでねぇ……
くっ!!!
黙れ俺!やれる!絶対やれる!!試合があるだろう?それに勝ちたいだろ!?
――――今まで散々負けてきて勝てるわけ無いじゃん――――
………カテルワケ、ナイ、かな?
バン!!
頭に走る衝撃。
視界が歪む
身体が無くなる感じ
意識が飛ぶ
アレ?
身体が軽い、防具をつけてないのか…
って、え?
身体を起こす。
「アラ、まだ寝てて、君、熱中症で倒れたの」
アレは保険の先生だ。
ココは……保険室か……
「心配だったのよー、貴方、倒れる時、面を、思いっきり貰ったみたいで、頭の方に何かあったらどうしようかと思ってたの…」
そうか、俺倒れたんだ…
ガララッ
ドアが開く音と共に剣道部顧問の先生が入って来た
「ああ、丁度今目が覚めたみたいですよ」
「あ、ありがとうございます。おう、矢村、大丈夫か?」
俺は頷いた
「アレだ、無理するな、最後だと思う気持ちは分かる、けど、そんな無理するな、な?そんなに頑張ってケガしたらつまらないぞ。」
ツマラナイ?
今頑張らないでいつ頑張るの?
最後なんでしょ?
先生、俺は戦力外ってことですか?
―――――な?辞めちまえよ、お前は努力したって、人並みなんだよ、限界なんだよ――――
………………………
俺は黙って、目を閉じた。
今は、PM6:30だ、あのあと、俺はまた寝ちゃったみたいで、気付いたら、こんな時間だった。
この時間は夏とはいえ、暗い。その暗さが俺の中にも広がっていった。
いつからだろう、この変な癖ができたのは…
“無意味”
試合結果や試験勉強、それらがどんなに努力しても反映されなかった
それでいつからか、俺は熱くなってやればやるほど、必死になればなっただけ。
折れ安くなっちゃったんだ
つまり…最後まで続けられないんだ。
一番肝心な最後まで辿り着け無いんだ。
どうせ、ダメだから、とかそんなんじゃない…途中まで必死に信じてやってきたのに、自分自身に限界を言い渡すんだ。
今もう7時だ、今日は練習いいや…
あんな事あったし、今日は休もう…
「切り返し!!始めぇ!!!」
今日も体育館には剣道部の声が響く
だけどソコに、俺はいない。
顧問の先生に
「今日は大事をとって休みます。」って伝えたんだ。
ま、当然だよね。
昨日の今日で練習なんかやりたくない
空はまだ明るく太陽はまだ高い
久しぶりだな、この時間……
あーーなんかこういうのっていいなー
あんな死にかける事なんで今まで俺やってたんだろ?
馬鹿じゃない?
よし、今日は帰ったら勉強しよ。
そうだよ…勉強しなきゃ。
俺はもう三年生なんだから!
当然、今日も練習しなくていいや。
それより頑張らないといけない事があるんだから!!
意味も無く、走りだし、家に帰った。
机に座って、さぁやるぞ!!
…………………………………………10分後、漫画を読んでる俺がいた。
集中しようとするとまるで出来ないんだ。
やっぱり頭打ったのかな?
頭ん中蘇るのは剣道をやっていた時の事だけ。
なんでだ…?無意味じゃん?
個人戦だってどうせ、すぐ負けるし
団体戦だって、みんな南中には勝てないさ。
ハハ、馬鹿らしい、負けるって分かってるのになんで、あんなに必死にやってんだろ?
今は、他にやる事あるだろうが……
俺も馬鹿だったよな、あんなのやるより勉強やってりゃ良かった。
ふーー
溜め息がでるな……
ダンッ!!!!
思いっきり、机を殴ってた、すんごく、胸が気持ち悪くて、すんごく何かにムカついてる。
俺は次の日学校を休んだ、別に体調はどこも悪くないけど
何故か知らないが、罪悪感に襲われたからだ
頭が痛い、胸が苦しい、なにもかも、見るもの全てムカつく……、
そんな中、
今日一日、家の中のあらゆる物にやつあたった、拳はもう血だらけ…
チクショーなんなんだよ!
ベッドを蹴る
足の小指が変な方に曲がる
「ってぇーーー!!!」
本当に痛い!その辺を転がり回る
ハァ…ハァ…ハハハ、ハハハ!
何やってんだろ俺…
ふと顔を上げる
竹刀が机の横に立掛けてあった
今まで素振りに使ってたやつだ…試合に使おうと家においておいたんだけど……
俺は竹刀を握った。
「お前のせいだ……」
そう呟いて窓の外へぶん投げた。
気持ち悪いんだよ!!チクショーーなんなんだよ、ふざけんな!!!
何回も何回も机を殴った。
痛みなんて、感じ無かった。
「うん?」
道端に竹刀が落ちてる
広い上げて見てみると
「……なんだコレ?」
竹刀の柄の根本辺りは真っ黒だ
これは土なんかじゃなくて…
「血、か…」
はっ、やるじゃねぇか、竹刀の柄真っ黒にするほど、血豆だらけになっても、さらに振り続けてたのかよ……
最近、見かけないから心配してたけど
間違いないこれはあの坊主の竹刀だ。
あの神社の匂いが染み付いてる
上を見上げると窓は空いていた、そこから、何回も
「チクショー!」とか何かを叩く音が聞こえる……どうやら、運悪く落下したって訳じゃないみたいだな…
煙草に火を着ける……
「いいねぇ…」
俺は雑食のジンや、気まぐれ屋なリンとは違う
ちゃんとやる仕事は選んでる。
つまりおれはこの手の青臭い問題が大好物なわけだ。
「さて、お仕事ができたな……」
煙草を捨てて、ニヤリと笑う、竹刀は預かっておく。
大丈夫だ
テメェの青臭い悩みなんか
ぶち壊してやるからよ。