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破壊屋  作者: 全力疾走
11/11

破〜4・後〜壊

すみません、更新遅れました、まぁアレです、カルシウムがきっと足りなかったんです、階段から落ちたぐらいで右手親指がポキンといくなんて…

人生で初めての骨折でした…それともう一つ、今回は長いです、完全なる計画ミスです


真っ暗な部屋の中で、しばらく目を閉じていると、また俺の意識は旅立った。もう身体中痛いし、泣き疲れたし。


あ、黒岩さんもう立ち直ったかな?あの人タフだからな…






――――――――――――――


「ふー、まあ、なんだ?何処から話ししようか?アケミ?」


形勢逆転した感じで、黒岩が霧川の部屋のソファーに座り、霧川はソレを見上げる形で正座している。


「いや、あの、今回は、リンが…」

シドロモドロ、目線は泳ぐ。


「ほー、俺もリンから話し聞いたが、お前は俺になにをしたんだっけ?」

黒岩は、今回結構マジで怒ってる、なんにせん2日で、少なくとも二回は意識が無くなってるわけで、その原因全て霧川の秘孔突きで、しかも、オチが勘違いと来たもんだから、もう色んな意味で感無量なわけだ。


「いや、その、ごめんね…いやでもね、でもね、アンタがあんな…」


「女々しいな、まだ言うか?俺が聞きたいのはそんな言い訳じゃない」

優しく、諭すようにゆっくりと黒岩は言い切った


「…………………………………ごめんなさい。」

くっそ、今回は私が悪いから仕方がない、素直に謝ろう………謝るけど、黒岩……何さりげなく私の頭なでてんの?

主従関係、狂ってないか!?


「さ、てと…俺身体中痛いんだけど?コレはどう責任取る?」

まだ責任取るの!?

いや、私が悪いんだから仕方がない、か……クッソ、今回は少しやりすぎたな。


「な、何をやればいいの、…でしょうか?」

何か気持ち敬語になるわね

悔しいけど、コイツこういう時だけ威圧感半端無いのよね………将来、いいパパさんになりそう。


「あー、湿布を張ってくれ、で、俺が眠れるように歌でも歌って張ってくれ。」


私…歌って苦手なんだけど……。


「あ、お前歌苦手だったな、仕方ない、じゃあ、これ以上無いくらい優しく張ってくれ」

…………こう言うのもなんだけど、コイツ本当に心広いな、普通、もっと私に仕返すでしょ?

それこそ、恥辱に満ちた、服のサイズの‘L’が抜けた奴とか…



…………………………………まあ、いいや。


「ん?何ニヤケてるんだ?今日は疲れてるんだから、早い所張ってくれ。」



アキラは言った、優しく張れと、……よぅし、分かった。張ってやる、これ以上無いくらい優しく張ってやる、アキラは心広いから、こんな甘いけど、私は私の満足する罪滅ぼしをしよう。


「じゃあお望み通り、優しく、ね…?」


昨日の不幸を忘れられるくらい、幸せにしてやる。









―――――――――――――――――


…コ…………コン


暗い暗い真っ暗な空間にいる俺、何か聞こえてくるが、意識はまだこの暗闇を望んでる。

……………………ガさッ………

何か冷たい物が身体に当たる、止めて、くすぐったい


……………今度は髪を撫でられてる感じがする。


!!!!!!?


顔に、冷たい物がぁぁ!


ようやく、意識がパチッと帰って来た


「…………お、おはよう。」


目の前にはユリちゃんがいた、手には湿布を持ってる


「お、おはよう…あ、あのね、ジン君何かうなされてて、それに身体中あざだらけで。」

あーそうか、破壊屋にも、ちゃんと女の子はいたんだなー。


「うん、ありがとう」

クソッ、目を瞑るな俺!ひょっとしたら、コレで女性恐怖症が治せるかもしれないんだぞ!

頑張って起きろ!


「あっ寝てて、いいよ、私が張るから。」


え?いいの?俺、寝ていいの?……あ、意識がまたボンヤリしてきた。


「う、ん、ありがとう」

……ユリちゃんの髪がカーテンみたいにすらーと垂れてる、シャンプーの匂いがユリちゃんが動く度にしてくる……あーなんでだろう、普通は興奮する所なんだろうけど、すんごく、俺リラックスしてきた…


幸せってこんな感じなのか?




すー…すー…すー

と優しいリズムで聞こえてくるのはジン君の寝息だ。


「寝ちゃった…」

私はそう呟き、ジン君が起きないように優しく髪を撫でた。



「起きないよね?」


と自問自答、答えは都合良いものに決まってる


でも、私はその答えを信じて、そっとジン君の額にキスをした。

唇は、きっとまだ早いと思ったから、保留にしておこう。


「おやすみなさい。」

そう言って私は部屋からそっと出た。


今気付いたけど、私、顔真っ赤だ……









――――――――――――――


おはようございます。

只今AM8:00です


昨日は臨死体験をアンビリバボーしたので、やけに今日の朝日が綺麗に見えます。



ああ、生きてるなぁ、俺。


昨日、夢見心地でユリちゃんと会った覚えがある、夢じゃ無いかと思ったけど、身体に張られた湿布が夢じゃないと教えてくれてる。後でお礼言っておこう。


「さて、仕事しますか」


昨日の惨事は忘れよう、きっとそれが明日の笑顔に繋がると信じて。


「あっ、ジン君おはよう。ごめんね。私勘違いしてたみたい、許してね?」


そう、例え目の前に、悪びれる様子も反省の色も浮かべず


笑顔で文字面だけ整え、これで充分だろ?と胸を張る悪魔がいたとしても…


俺は許そう。

「まあ、……………気にするな、誰にでも勘違いは有る。」

よし、よく耐えた、偉いぞ、俺!!


「ハハハ、どうした?ジン君?何か今日優しいね、良かったー、やっぱしジンはそうじゃないと…」


そういい、リンはパソコンを操作し始める。

ん?

ちょっと待て。お前、今、何を編集してるんだ??


…待て待て待て待て待て待て、ちょっと待て。

リン

お前

ソレ




「昨日の俺の写真じゃねぇかぁ!!!!!」

前言撤回、コイツだけはきっとコイツだけは倒さないといけない。

霧川さん、ちゃんと写真のデータ消しといてよ…


「うっさい!怒鳴るな!騒ぐな!そして動くな!」


そうリンは言いパソコンを操作する。


「もし、少しでも動けば、お前のこの写真を全世界に配信する!嫌なら、動くな、そして分かったなら、頷け」

コイツ…何処まで、卑怯なんだ、でも落ち着け、ここで怒れば俺は今後きっとビクビクしながら生きなきゃいけない、そんなの嫌だ。

だから、今は怒らず、後で写真を消してから怒ればいい


俺はゆっくりと頷いた。

「よし…流石物わかりがいいね…じゃあこれから私が言う事をやれ。」


…………あまりにお前理不尽じゃない?


「一つ…お前は犬権を承諾する

一つ…犬権に、1日2回の拒否権を与える

一つ…私は謝らない

一つ…お前は私に上記の事以外なら一つだけ、なんでも命令できる」



………………………………コイツ、なんで、こんなに素直じゃないんだろう。


素直に謝りゃ許してやるのに、憎まれ口と反省を混ぜ合わせて誤魔化すなんて、どんだけ照れ屋なんだ?




まあ、いい敢えてココは言わないでおこう。

「一つ…か。」


リンは相当恥ずかしいのかソッポ向いてる


あ、そういや、ちょうどいい奴があった。

「…よし、じゃあ…」

「ちょっ、ちょっと待って!」


「………なんだよ?」

「私、あの、その、イヤラシイ事は嫌だからね!」


コイツの中では、俺は常時発情中なのか?


「…大丈夫だ、そういう事ならお前は対象外だ。」


「良かった〜、私、アンタはてっきり、誰にでも発情するのかと…」


「…………………、よし、じゃあ…」


俺は財布からビニール袋を出した。


「コレ、手伝え。」


中は紙切れの山。


「……………メンドーー」


その数ざっと、700枚くらい?

俺も正直やりたくなかったけど、ちょうどいい、コイツにもやらせよう。


「期限は今日の五時、それまでにこの写真パズルを完成させよ。」

これを解けば、何とか手掛りがつかめるだろう…だって、あの人、なんか、隠してる気がするんだもん







―――――――――――――


学校の帰り道を、依頼人、那美がフラフラと歩いている、手にはバックを、心には影を

影には横幅を持たせて


「カウセリング…か」

正直な話し、ジン君のような子供ができるとは思わない、最近はカウセリングにカッコイイとか、好奇な目が向けられている。時代が時代だし、仕方ない気もするが、実際、カウセリングや心理職関係の仕事をやる人自身が、ウツや心の病にかかる事は多いと聞いてる。

かくいう私もきっとそうなんだろう、私はただただ、良い先生になろうと、必死になって頑張ってた。生徒の悩みに真っ正面から向かって行った。ソレが、ハッピーエンドに繋がると信じて。

でも、世の中そんなドラマみたいな結末は待ってはいなかった。


どんなに親身になって相談に乗っても、必ず壁がある、‘自分、他人’という…いや、なくちゃいけないんだけど、その壁の向こうにみんな本当の気持ちを隠してる。

例え苦しいと、助けを求めて、相談をして来てくれる生徒でさえも、少なからず隠してる。


私はソレを聞き出そうと必死になってた…、

早く助けなきゃって焦ったのかもしれない、いや、私は問題を解決できる先生なんだ、と自己満足に浸りたかっただけなのかもしれない


まあ、今となっては分かるはずないんだけど。

だけど、一つだけ、たった一つだけハッキリしている事は…私は失敗した。




―――――――――――――


「……………誰?」

完成した写真パズルを前にジンは呟いた。


「いや、今回の依頼人でしょ?那美さん」


リンが教える。

「それより、これ誰?」


「いや、依頼人の那美さんだろ?」


今度はジンが教える。

『………………』


「変わったな…」

「うん、変わったね」

写真は全部で、5枚ある


一枚目…那美さんが映ってるまだ痩せていた頃だ

二枚目…女生徒と一緒に映ってる

三枚目…また同じ生徒と映ってる

四枚目…那美さん一人だ…少し肥り初めて何故か、悲しそうな顔をしてる。

五枚目…かなり太った、今に近いな…


この女生徒、気になるな。

「この女生徒、誰?」分かるわけないと分かっているけど、リンに聞いてみる。


「…………この子、ひょっとしたら。」


「えっ!?知ってんの?」

予想外な返答に流石に驚いた。


「いや、那美さんの学校で、自殺者が確か去年一人…女の子でいたと思う。」


「…自殺者?」


マジか、まさかここまでシリアスになるとは思わなかった。


今、pm3:00…もう学校に問い合わせる時間も無いし、素直に話してくれるとは思えない、仕方ない、今日は切札無しで挑むか、………ん?…待てよ…………………………………………。




―――――――――――――

さて、今日からジン君が私のカウセラーだ、そうは言っても、私はきっと自分の奥底をさらけださないでしょうね…


破壊屋…って名前に惹かれたのだって、本当はこの奥底にある物を壊したい、って思ったからなのに、いざ向かい会った時に出てきたのは、馬鹿げた嘘と道化の仮面、きっと私は臆病者になったのね。…フフ、ひょっとしてこのブヨブヨのお肉も本当の私を守るための鎧だったりして…


ずいぶん、頼りない鎧だなぁー




――――ピンポーン


今、PM5:00だ、本当に時間ぴったりね。


「ハイハーイ」


また、私は仮面を被る………結局、私は私を変えられないのでしょう…。


ドアを開けて、ホラ、ピエロ顔、顔に笑顔を張り付ける。


「…こんちはー、破壊屋お待ちッス、…アナタの鎧、壊しに来ました。」


ジン君が笑って言った。

私は自分の笑顔が氷付きはがれるのを感じた。






―――――――――――――――


「……………私の鎧って?一体なんですか?あ、脂肪の事をかっこよく言ってくださったんですか?」


リビングで初めて会った時のように向かい合い座っている。


「いやいや、貴方の鎧はそんなブヨブヨとして壊れ安い代物じゃあないでしょ?」


……………何故か、親に嘘がばれ、怒られた時に感じた恐怖感と似たものに、身体が縛られる


「…何の、事かしら?」


嫌だ、この奥底を見せるのは絶対嫌だ!


「…貴方は俺に脂肪を破壊して下さい、と言いました。だから俺は貴方の脂肪を破壊します、…ただ、ダイエットや食事制限では貴方の脂肪はきっと落とせません。何故なら…それが貴方の鎧になっているから。」


「………言ってる意味が分からないわ、アナタさっき脂肪は鎧じゃないって言ったじゃない!」


「…ええ、脂肪ソレ自体は鎧でもなんでも有りません、俺が鎧って言ったのは、貴方の意思そのものの事です。つまり、《太ったままでいたい》いやむしろ、《太りたい》という願望の事です。」





「…どういう事?」

何が言いたいの…この子は…


「貴方の過去を調べさせていただきました。」


「………!!!」

まさか…そんな、たった1日で…。


「貴方は素晴らしい先生だ、生徒の悩みに全力で挑んで、戦って、勉強以外にも大切な事を教えていた。」


「…………素晴らしい?、馬鹿言わないで、私は一人の生徒も…救えなかった。」


大原オオハラ ナミさん…の事ですか?」


驚いた、本当に1日で、ここまで…


「……ええ、そうよ。私は彼女を救えなかった。私は彼女を助ける機会なんていくらでもあった、なのに私はソレに気付けなかった。」






――――――――――――――


「先生相談があるんだけど?」

波さんと初めて面と向かい会って話した時は、波さんから話しかけてくれたの


「ん?何、改まって…あ、出席日数ならまだ平気よ、ただ倫理が少し危ないかも。」


「あー…あの先生私苦手なんだよー」

彼女はとても明るくて、そうね、カワイイって言うべき生徒だったの。


「ソレよりね先生、私ね、最近、勉強がダメダメになってきたのだー」


始めはこんなたわいもない相談だった。

でも、先生と私って同じ名前だよね、って私達名前が一緒だったの、それもあったのか波さんは良く私の事を信頼してくれて、私も彼女をまるで妹のように思えたの。


そうなってから、相談の内容も急速に親密な物になっていった。


好きな異性

家族との問題

ああ、あと電車内の痴漢撃退法も真剣に考えたわね。


そんなある日彼女からこんな相談があったの

「先生、私…痩せたいんだけど、どうしたらいい?」


波さんはそんなに太っている子じゃなかった、ただ何と言うかぽっちゃりした感じの子だったの


「そんな事気にしないの、今が育ち盛りなんだから」

私はまた高校生によくある悩みだって思っていたの、だけど


「先生やっぱし私痩せたい!!」


「今週から食事制限してるの。」


「…あ〜、最近貧血多いの…」


波さんは真剣そのものだったの、願望とかそういう事じゃなくて、本気で痩せたい、って思っていたの


だから、目に見て波さんが弱っていくのが分かったわ。


当然私は止めるように、勧めた、これ以上やると拒食症にかかるかもしれないからって、だけど波さんは聞かなかった


「大丈夫だよ〜、私もう1ヶ月で3kg痩せられたし、ブイブイ」


なんて言って波さんは笑いながらピースをしていたけど、身体はダルそうだった。

「ね、先生って太ってた事ある?」


いつだったか、波さんが私に聞いてきた事があった。


「う〜ん、無かったかしらね、というか波さん…ダイエットはやめなさい、貴方体育の時倒れたってきいてるわよ。」


もう、この時には波さんの体調はとても悪い物になっていたの。

だから、私は助けてあげなくちゃって思って

「波さん、なんでそんなに痩せようとするの?」


直接に聞いてみたの。

「え…だってスリムだと美人じゃん。」


「波さんは充分カワイイわよ?」


「チッチッチッ…甘いな、先生、人間上を目指す生き物なのサ。」


「ふー…なら、無理しないでね?」


「大丈夫、大丈夫!」


そういって彼女は次の日から学校を休みだしたの。


一週間、学校に出てこなくて、流石に何かあったのか、って思って波さんのお宅に電話をしたの。



「もしもし、大原さんのお宅でしょうか?」

「ハイ、そうですが」

電話に出たのは波さんのお母さんだったわ、

「私、波さんの担任をやらしていただいてる…」


「ああ!先生!那美先生ですか?」


「え?ハイそうです。あの、波さんの事についてなんですが…」


「ええ、うちの子まだダイエットなんかしていて、ほとんどなにも食べていないんです。だから学校にもダルくて行けない〜とか言って行かないんです。

……

お願いします、先生貴方から何か言ってあげて下さい、波はアナタの事をよく楽しそうに話していましたから、きっと、アナタからなら、波も聞いてくれると思うんです。」


私もコレは少し強く言わないといけないって思ったの、しかも両親からも頼まれたわけだし、ダイエットを辞めさせようと、それしか考え無かったの


本当に波さんが単純な理由で痩せたいって思ってるんだって信じて…。



「波さん?」


「あ…先生?」


「そうよ、アナタどうしたの?」


「え?う〜ん少し頑張り過ぎちゃったみたい」


「波さん、ダイエットなんかやめなさい、そんな事で体壊したら大変よ?

それに学校に来るのが今の貴方のやるべき事でしょ?」


「…………………“なんか”って“そんな事”って、……先生、私頑張ってるんだよ?」

……受話器の向こうから濁った声が返ってきた、私はそれが電話特有の濁りじゃない事には気付いていた、けど、もう一押しだ、ダイエットを辞めさせるんだ、しか考え無かった私はソレを無視した。

「波さん、貴方が今、頑張る事はきっと、違う事よ?

部活だったり勉強だったり、たくさん頑張る事はあるはずよ?だから、ダイエットなんて、やめなさい。」


彼女は泣いていた。

無視出来ないくらいに泣いていた。


「先生、私…なんで、やっぱり私は無理なの?

先生…私、私…………………?」


最後は泣き声で何を言っているか分からなかったわ、その時は…


「波さん…ねぇ、アレ?」


もうその時には電話は切れていたの、掛けなおしても出るのはご両親だけ、波さんは出なかったの


そして、それから3日後


彼女は死んだ。



自殺だった、睡眠薬の大量摂取で両親も気付か無かったらしい



理由は分からなかった

だけど、私には波さんの自殺を辞めさせるチャンスはきっといくらでもあったと思う、だから波さんのお葬式は足が重かったわ。


もちろんご両親に合わせる顔なんて私には無かった、私自身、悔しくて悲しくて、顔なんて合わせられなかったけどね。


そんな私に波さんのご両親は優しく、貴方のせいではありません、と言ってくれた。

そして私に、波さんが書いた私宛ての手紙を渡した


「中身は見ていません、ですが、波はいつも貴方の事を親しそうに話しておりました…

先生、ありがとうございました…」


波さんが私の事を?


ふっと波さんの笑顔が蘇る。


涙が止まらなかった。

その後、私は家に帰り、服も着替えず、波さんからの手紙をの封を開けた、中には手紙と波さんが撮った私の写真が一枚、私と波さんが二人で写ったのが二枚入ってた



――――――――――――

那美先生へ




きっと先生がこの手紙を読んでいる時には、私はこの世にいないかと思います。

先生は私が死んだ理由が分からないでしょう。

う〜ん、私も色々と考えたんだ、この理由を知って、先生が苦しむんじゃないか…とかさ、でも分からないまま、モヤモヤされるのも嫌だし、先生…アナタだけに全てをお話しします。


あのね、先生…私ね先生の事憧れてたんだよ、もう本当に純粋に“こんな人になりたい”って思ってた。

優しくて、誰にでも正面からぶつかって行って、だけど冗談の分かってくれる、そんな先生にスッゴイスッゴイ憧れてたんだ。


私…先生に少しでも近づきたくて、先生のマネ結構してたんだ。

だけどあんまりうまくいかなかった

先生みたいに優しく強くなんて成れなかった。

今度はその理由を考えた、どうやったら先生みたいになれるか…本当に真剣に考えたの、そしたら、一つだけ思い浮かんだ。


“まず外見から先生に似よう”って、だから私はダイエットを始めたの。


でも私、体力無くてさー直ぐに体調崩しちゃった。

それでも頑張り続けたら先生から直接に注意されちゃった…


結構…ヘコンだよ。


そしたらなんか急に何もやる気が起きなくなっちゃって、学校も面倒で食べ物は体が受け付けなかった


アハハ、変な話しだよねー

私先生みたいに成りたかっただけなのにね。

そんな時だったの先生から電話が来たのは。

先生が私に“ダイエットなんか”とか“そんな事”って言った時、私ね、先生に

「お前なんかが私を目指すんじゃない」

って言われた気がして、本当にショックだったんだ。


先生からみたら本当にクダナイ事かもしれないけど、私は真剣だった、お願いだから、先生この事実だけは理解してね?


う〜んとね、もっと先生と話ししたかったけど、…ごめんなさい。

私もう、なんか…ヘへ、疲れちゃった。


涙は本当に枯れたし。

先生の言ってた通り拒食症になっちゃったし。


ごめんなさい、やっぱり先生の言う事聞いてれば良かったね。


だけど最後コレだけは言わせて


先生、私先生の事大好きです


それから、この手紙を読んでもお願いだから、今のままの先生でいて、私がこの手紙を書いた理由は先生に私の本当の事を知って欲しかったのと、先生に今のままでいてもらうために書きました


なんか…先生のせいみたいな言い方になっちゃった、本当に最後まで私できそこないだね。

は〜、次に生まれてくる事がもし可能なら、先生、また笑顔でアナタと会いたいな…。


じゃあ先生、私そろそろ眠くなってきちゃたから、もう寝るね。



それじゃあ、おやすみなさい。



波より


―――――――――――――――――


ああ、全て納得いったわ、全てが繋がったわ、そうだったのね


あの時の聞き取れ無かった電話の声


今になってようやく、聞けた、“私じゃ、先生にはなれないの?”


波さん、私は貴方の死を悲しむ資格なんて無かった

波さん、貴方はもう私に近づけない、だから今度は私が貴方に近づいて行くわ。それが今の私に出来る、きっと唯一の償いだから…




―――――――――――――――


「……………………」

「分かる?ジン君?私は生徒一人その気持ちを理解出来ず、死にまで追いやったのよ。」

「……………」


「だから、ね、ごめんなさい、今回の依頼はキャンセルで、コレは私の償いだから…」


あの写真は私が波さんに近づいていく証明写真。

きっと、終わりは無いでしょうね。


「…………貴方は、また波さんを裏切るつもりですか?」


「…………………何の事?」


「貴方が太ろうとしているのは、そんな綺麗な気持ちからでは無いでしょ?」



「………………いいえ、今の気持ちに嘘は無いわ」


「信心に波さんに償いをしたいと考えているなら、貴方は昔の貴方のままでいなければならないはずです、ソレが波さんが望んだ事なんだから。」


「じゃあ、逆に聞くけど、一体私は何のために太ろうとしているの?」


「…………貴方は波さんを殺したと考えています、だから貴方は貴方じゃなくなろうとした、波さんに近づくなんて理由にかこつけて」


「……そんな、まさか!」


「人は髪型一つ変えただけで大分イメージが変わるものです、特に女性は、だから貴方は鏡に映る自分の姿をまるで別人にした…そのための脂肪です。」


……まさか、私が?


「貴方自身は気付いてないかもしれませんが、いや気付いていない振りをしているだけかもしれませんが、逃げてるんですよ」


「…………………」


「最初に言いました、貴方の脂肪を破壊します…と、そして契約書には今の貴方には戻れないとあったはずです」


「…じゃあ、私は一体何をすれば良いって言うのよ!!」


「逃げないでください、貴方は貴方の役目をやり続けてください、波さんは貴方に何を望みましたか?

波さんの本当の気持ちに気付いてあげられなかった事を償ないたいなら、波さんの本当の気持ちに応えてあげるべきではないんですか?」


「私は……私……は………」


波さん…私、逃げてたの?

貴方の気持ちに気付いて上げられなかっただけでなく、気付いたら今度は逃げてたの?


「……フフ、私って最悪な女ね……」


「いや、人間ほとんどそんな物ですよ、かく言う波さんもきっとそうだったんだと思います。」


「………やっぱり私達似ていたのね。」


ジン君がカバンから何かを出してる。


「…ええ、きっと似ていたんだと思いますよ、………コレを」


ジン君が封筒を出してくる。


「何?コレは?」


中には写真が入ってる、5枚ある。


「これ……」


「ええ、失礼かと思ったんですけどあの掃除した時に。」


中には前にビリビリに破り棄てた写真があった、そっか、やっぱり私は逃げてたんだ。


「…次にコレを」


「え?コレは?」


「見ての通り、カメラです、インスタントの」


「何をしろというの?私に?」


「ハハハ、今度はちゃんと波さんに近づいて貰おうと思いまして…痩せていく写真を撮って頂きたいんですよ。」



「………………」


「そのためにバラバラになった写真を綺麗に戻しました。」


「……フフ……ハァーー、貴方はスゴいわね、まさか私自身、気付いていない所まで潜り込んでくるなんて、しかも物の見事に破壊までしてくれて。」


「まぁ、ソレが仕事ですから。」


ジン君は何処か照れたように目線を外しながら言った、うん、確かに少し臭いセリフだったかも


「さて、俺の仕事はここまでッスよ、後は貴方しだい、と言ってもやる事なんて一つしかないですけどね」


「……分かりました、痩せます、痩せて波さんの気持ちに応えます。」


「了解です、なら週一で写真送って下さい。ソレでお金はこちらに送って下さい。」


ジン君が住所が書かれた紙を渡してきた。


金額は、1,5000円、まぁ、安い物ね。


「じゃあ俺はコレで………負けないでくださいね?」


「……ええ、もう逃げないわ、絶対。」


ジン君は満足そうに笑って帰って行った。




……波さん、ようやく本当に貴方の気持ち聞き取れたわ


外には月が光って、珍しいくらい沢山の星が見えてた






後日談


さてさて、今日も仕事は上手くいきました。しかし、まぁ…今回、影ながら尽力して頂いた方に湿布のお礼も込めて何か、プレゼントしたいと思ってます


え?何処で協力してくれたか?

ああ、言ってませんでしたね、ほら俺が波さんの情報を手に入れる時に困ったでしょ?


その時にユリちゃんに頼んで、ハッキングしてもらったんだ。


なんか学校のパソコンってまだセキュリティが甘い部分があるらしくて、以外と簡単に出来るらしい。


さて、プレゼントと言っても何が良いだろう?


う〜ん…

黒岩さんなら確か霧川さんに花とかよくあげてるけど。

何か違う気がするし…

ユリちゃんの好きな物………ぬいぐるみ…はちょいとなんか俺が買いにくいような……


あっ、そうだ。


ココはアクセサリー系でいくかな。


うん、ソレで行こう


ネックレスは高いし、イヤリングはユリちゃん穴無いし、ココは指輪で良いかな?










その後、ユリちゃんに指輪をあげたら、なぜか、リンに俺の写真を公開されて消すのに半月もかかろうとは、今の俺に知るよしもない。



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