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長月朔人はリープする  作者: taniko


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1話 まさか


 “九月一日(木) 文化祭まであと十日!”と黒板の隅が主張している。


 朝ホームルームで担任が何か話しているが、高一の文化祭の出し物なんて誰も期待していないだろう。クラスは浮かれているが、俺には関係ない。俺の役は草。劇の背景で立っているだけの草。セリフなし。やる気もなし。

 そんなことを考えながらノートに突っ伏そうとして、妙な落書きを見つけた。


『十日で オトせ』


 意味が分からない。しかも自分の字によく似ている。寝ぼけていたのだろうか?


「さくと〜。コラ、長月朔人〜」


 担任から注意を受け、俺は渋々姿勢を正した。


 ――十日後。文化祭当日。つつがなく体育館での演劇披露が終わった、カーテンコールの、その時。


「みんな、聞いて!」


 声の主は花房咲良。主役を演じたままの格好だ。

 成績優秀、容姿端麗、人当たりも良い。誰もが憧れる、中学時代から有名な高嶺の花だった。

 その咲良が、大勢の前で草――いや、俺をステージ中央まで引いてきた。そして頭を下げて言った。


「好きです!わたしと付き合って!」


 頭が真っ白になった。当然と言うのもなんだが、俺は人生で一度も女子に告白されたことなんてない。

「あっ、ぺっ、えっ、も、もつぃろん!」

 声がひっくり返ったが、こんな夢のようなチャンスが、もう二度と俺のこの平凡な人生に訪れるわけがない。光の速さで受けた。


 ――次の瞬間。 爆笑が、起きた。


 咲良まで腹を抱えて笑っている。“マジで受けたよ。やばっ。身の程知らずすぎて草”……そんな声が飛び交う。一体、何が起きたのか分からない。

 ただ、笑われているのが俺だということだけは分かった。目の前が暗くなる。


 「――!!?」


 “九月一日(木) 文化祭まであと十日!”と黒板の隅が主張している。教室だ。


(これは……夢か?)


 何がなんだかよくは分からないが、時間は待ってくれない。混乱したまま文化祭までの十日を過ごしていった。もともと同じような繰り返しの日々だったので、そこまで違和感はなかった。


「――好きです!わたしと付き合って!」

 そしてまた“その時”が来た。

(正夢ってあるんだ!)

「もちろん!」

 今度はカッコよく受ける俺!

 ――そして、会場は大爆笑。暗転が終わると、教室。そして、黒板には九月一日の文字が――


「…………これ、マジ?」

 担任の声に紛れて独りごちる。タイムリープのようなものにハマったとか……? そんな、まさか。


『十日でオトせ』


 まさか……まさか。喋ったこともない咲良を?

 あの、ハナブサ サクラを?


リレー小説企画用に書きました。

気が向いたら続きを書くかもしれないので、ここに保管。

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