真夏の夜
フジリナです。
季節はもう冬なんですが、夏の話にしてしまってごめんなさい。
冬の短編を、これからあげるつもりですので、よろしくお願いします。
冬短編は、もうすぐあげますので、よろしくお願いします。
2025年7月28日
僕はこんな暑い中でも、外に出たかったのだ。ロックフェスといった、夏フェスに生きたかったのだが、
「こんな暑い中では、おまえは熱中症になってしまうから、暑いので、おうちピクニックをすることにしよう、ロバート」と盟主さまが提案してきたのだ。
「なんだよ、暑い中でも外に出たいんだよ!何を言ってるんだ、盟主さま」
ロッジの部屋には、いつしか「おうちピクニック」のセットが設けられていたのだ。それは、レジャーシートに、水筒、そしてピクニックバスケットに入れられた手作りのサンドイッチ。いつも僕が仕事帰りに食べていた、あのチェーン店のサンドイッチじゃない。
「オレは、あのサンドイッチがいい!」と僕は言った。
「いいや。オーガニックなサンドイッチのほうが、お前の健康にいいのだ。では、おうちピクニックを始めよう。それで、フリーメイソンの教義のビデオと、あとは英国の伝統の貴族のドラマと、王族のドラマを見たほうがいいぞ。」
タブレットには、伝統の貴族のドラマや、王族のドラマが配信されている、配信プラットフォームが映っていたのだ。
「オレはさ、アニメだとか、最近のドラマのほうがいいんだよ!」
「いいや。お前には、商業主義が極端な、アニメやドラマは毒なのだ。さあ、一緒にお勉強をしながら、ピクニックを始めよう。」
僕にとっての、厳しいおうちピクニックが始まったのだ。
だけど、最近のドラマとかアニメはどちらかと言うと、結構「売れるため」というのが極端で、それで、めちゃくちゃ中身がないのが目立つなと感じる。その中身の無さは、視聴率にも現れている。視聴率が取れるドラマであっても、ひどくくだらない内容だったり、論理よりも視聴者の感情によりそって、なおかつ感情的な表現が多くて、主人公を含めた登場人物たちが、ひどく情緒不安定気味なのだ。
「ある意味、こういうドラマのほうが、落ち着くんだよな…。」
僕はある意味、納得できたのかもしれない。
その内容はと言うと、とてもドラマチックで、貴族の紳士と淑女の恋模様が展開されていたのだ。1920年代の美しい淑女が、紳士のもとにやってくると、泣き腫らした目で、紳士のもとに来たのだ。
「あなた。出征してて、寂しかったのよ。いつ帰ってくるのか、わからないまま…。」
第一次世界大戦か。もしかすると、盟主さまも、レディ・クラリスも、そのような気持ちになったのかもしれない。いつ、主人や男の友人、若い息子、男兄弟が帰ってくるのか、わからないまま、不安に苛まれてきたのだろう。その帰りを待つなんて、もし第三次世界大戦が起きたとしたら、オレもヨランダも出征するし、それで、18歳未満の子どもたちはどうなってしまうのかと思うと心配になるのだ。
「悪かったね、エイミー。おまえがうんと、つらい思いをさせてしまって、ごめん。オレは、国のために奉仕してただけだ。」と紳士。
「あなたの帰りを待ってたのよ!私の気持ち、あなたにはわからないでしょうよ!」
淑女の気持ちが爆発するのだ。そこまでつらいとは、やはり、ヨランダを置いて、出征することになったら、オレの帰りを待って、爆発してしまうのかもしれない。
「すまなかった、エイミー。やってきたのだから。」
「やってきた?なにを?国のためと言うより、私の心に尽くしてちょうだいよ!」
「エイミー、待て!」
「あなたには私の気持ちなんかわからないもの!」
エイミーの目には涙が浮かんでいて、男の薄情さに絶望してしまったのだ…。
「もう、知らないわ!」
「エイミー、待ってくれ。オレは、国のためと言ってたが、おまえがずっと帰りを待っていて、生きて帰ってこれれば、お前と再び会えるのを、待っていたんだ…。」
二人は愛し合って、口づけをしたのだ…。
「あなた…」
その様子を見て、僕はエイミーの愛情と、男の薄情さに失望してしまったのだ。
「…エイミー…。かわいそうに。オレがもっと尽くすのなら、いいんだけれど。…エイミー、愛してると言うのに。」と僕はあまりにエイミーに共感してしまったのだ。
「エイミーの感情の豊かさにひかれたのだろう、ロバート」
「そうだよ。あんなに薄情な、男で嫌なやつなんだけれど、生きて帰って、その人と再び会えるのを楽しみにしていたのは、よかったのかもしれないね。」
僕は、盟主さまにそういったのだが、盟主さまはじっと僕の方を向いたのだ。
「ロバート。おまえは、私の気持ちがわからないのかな…」
え?なんのこと?と僕は思った。盟主さまって、もっと淡々としていて、それかつ、信頼できる師匠だと思っていたのだ。
「なんのことですか…?」
「どうして私の気持ちをわかってくれないのか?おまえのほうが、エイミーではなくて、男の方なんじゃないのか?」
盟主さまの目には深い悲しみがこもっていたのだ。
「そこまで、あなたは俺のことを愛してるんですか…。」
「…ロバート…。なんておまえは薄情なんだ。それが、現代っ子の薄情さなのか…?」
盟主さまが、オレに対して、そこまで愛情を抱いていたのか…。
「女性を愛するのが普通じゃないんですか?」
「哲人王子を愛するのと、異性を愛するのとはちがうのだ、ロバート。そう…」
盟主さまはそう言うと、僕を抱きしめて、口づけをした…。
「ロバート…私はおまえのことが好きなんだ。そう、私は真理に到達したときには、愛情でさえも、忘れていたはずなのだ。愛情は、疾うの昔、真理に到達した、1910年以降、忘れていたはずなのに…。」
盟主様はそう言うと、より一層抱きしめる力を強くした。
「忘れていたのに、どうして何だ…。かわいいロバート…。」
その日の夜、僕は、星の見えるベランダにて、盟主さまと話をしていたのだ。
「ねえ、盟主さま。どうして、僕のことを気にかけているの?」
「そうだな。わたしはただ、おまえが可愛いだけなのだ。」
「そうなの?ただそれだけなの、盟主さま。」
僕にとっては、ただの親子愛だとか、友達同士が急に仲良くなるやつだと思っていたのだ。急に仲良くなって、カップルのような、とても親密でラブラブになったようなものだと思っていたのだ。
「それでさ、夏だからさ。夏の夜ってさ、生暖かい感じがするんだよね。どちらかというと、なんか…」
でも、言葉に出来ないような生暖かい感覚。それが、夏の夜であり、ノスタルジアと、多くの国で、夏祭りが行われ、特にリゾートのある南国の、街の中を思い浮かべるような感覚だ。
やはり、蒸し暑くて、少し照れる夜だった。
フジリナです。
ロバートと盟主の交流はいかがでしたか?年齢的に、27歳は大人で、大人として扱われるべきですが、盟主さまにとっては、子どもなんです。
じゃあ、またお会いしましょう。




