アイドル活動の女子
フジリナです。
あの某アイドルのアニメを想起させるかと思いますが、なにとぞよろしくお願いします。
季節の設定が夏になっているので、季節ネタの番外短編の2篇を、これからまた出していきたいと思います。
2025年7月24日
夕方に散歩に行くと、16歳ぐらいの女の子がベンチにうずくまっていたのを見た。夕方のセントラルパークは、ランニングや休息に勤しむ人たちが、夕方の残暑に苛まれる中、楽しんでいたのだ。
「あっつう…。」と僕。
僕は、近くのコーヒースタンドで購入した冷たいドリンクを女の子にやったのだ。
「どうしたの、お嬢ちゃん。何か悩みでもないかな。暑いからさ、中へ入ってゆっくり話そうよ。」僕は女の子が熱中症に倒れないか心配だったのだが、女の子は唐突に話し始めたのだ。
「わたしは、ネットアイドルをやっているんですよ。ちょうど、学校が夏休みなので、ゆっくり撮影ができるからいいんですけれど。」
「え、ネットアイドル…。」
僕は、こんな可愛い女の子が、ネットアイドルをやっているなんて思いもしなかったのだ。というか、学校に通っている子が、アイドル活動をやっているのなら、親御さんの許可をもらっているかどうかが心配だったのだ。
「お嬢ちゃん。ネットアイドルやっているのなら、パパとママに話している?」
「話しているわ、お兄ちゃん。わたしはね、なんで悩んでいたか、わかる?」
よくある16歳ぐらいの女の子に見られる悩みといったら、「ママのことがウザい、うるさい」とか、「学校の先生がうざくてしょうもない」とか、「ママやパパが、この学校に行けとか働けとかめちゃくちゃ口うるさく言ってくる」というものだろうな。
しかし、この子は違ったのだ。
「わたしね、ウソを付くことにはためらいがなくて、そのアンチに悩まされているの。」
ウソを付くことにためらいがなくて、アンチがうざいか…。誰にだって、アンチはいるんだけれども、それは少し自信過剰なんじゃないのか。思春期特有の、自己意識の肥大化というのはこういうことなのだろうか。大学の心理学の授業で、こう習ったのだ。
「アンチがウザいのはわかるけれど、ウソを付くのは良くない。ほら、オオカミ少年のお話さ、ママから聞かされなかったのかな。ウソを付くのが仕事だと言うけれど、そのウソの度合いによるよな。」
「わたしはね、17歳の、みんなや世界から慕われているアイドルだということなの!」
あまりに自意識過剰だな。
その子の動画投稿サイトの紹介ページと、登録者数を見てみたら、せいぜい1万人程度。まあ、歌い手としてはそこそこ人気はあるみたいだけれど、そこまで嘘を吐いたら、登録者がはなれていくだけだよ。
「視聴者さんを騙していたら、信用を無くしちゃうからさ。で、神様を信じてさ、神様に対して嘘を付くのはやめたほうがいいよ。」
「…お兄ちゃん」
「だから、神様を信じて、登録者の方に感謝して、アンチなんか気にしないでさ、ゆっくりアイドル活動を楽しんじゃいなよ。」
女の子は、僕のもとから離れていった。
夏の輝かしい日差しの中で、いかに子供時代が輝かしいかがわかったものだ。26歳の僕からすると、あまりに輝かしいのはなんでだろうか。30歳になると、一気に精神が老け込むのはなんでだろう。
高校時代の僕は、父親や学校の先生といった大人に反抗したり、友達との交流を楽しんだり、SNSでドリンクとセルフィーを楽しんだりしていたのだ。
輝かしかった夏の日々を。
フジリナです。
お話はどうでしたか?では、またお会いしましょう。




