影の政府の大統領として
フジリナです。
会議の様子のお話です。
ロバートは、影の政府の大統領として、ピラミッド型の海上都市の議場へと向かい、円卓会議を行ったのだ。
ロバートが、影の政府の大統領として振る舞えるのは、哲人王子であるがゆえ。そして、このときの服装は、サファイアのタイタックに、黒のローブのような礼服に、金の首飾りに、白の手袋、そして至宝であるソロモンの杖を持っていたのだ。
「閣下。本日の議題は、世界の精神的な成長の滞りと、古代の叡智が失われつつある現状にございます。」と議員のひとり。
「さて、提言をなさる者は…。」
「わたくしから、提言いたします。」と律法系議員。「世界の精神的な成長の滞りと、古代の叡智の喪失についてですが、19世紀の産業革命からもはや200年以上経ちますが、その革命がもたらしたのは、永遠の豊かさではなく、物質的な豊かさを求めすぎてしまい、精神の壊死が始まっているとのことです。」
「そうなんだ…。やはりね、時の権力者や、実業家たちが、目先の欲望に走って、ブランドバッグや、腕時計、そしてダンスホールに逃げてしまうことがあるのだけれども。僕にとっては、これはもう、一時的な享楽そのものであって、長く続くものではないんだよ。だって、経験あるかも知れないけれど、夜に思いっきり遊んでも、やってくるのは、『終わった』という、虚しさだけなんだよ。夏フェスだとかで盛り上がったり、推し活をして帰った時の、虚しさ。僕はね、楽しいことはむしろ一瞬のうたかたで、苦しいことはずっと続くという考え方なんだ。やはり、精神の壊死というのは、一瞬のうたかたなのに、楽しいことにばかり逃げてしまい、最終的には滅んでしまうということなんだよね。」
僕の言葉に、議員たちは頷く。
「また、新入社員を食い物にする企業も出てきていますね。それもそのはず、高いカネを払わせてまで、会社をやめさせるというものです。」
「あー、出た。退職なんたらってやつだね。一時期話題になったけれど、とんでもないブラック企業だったという、傷口に塩を塗るようなものだったもんね。ブラック企業を辞めたいから、ブラック企業の退職代行に頼んじゃうという、そういう、傷口に塩をぬり、そして自堕落になるというの、聞いたことあるよ。でもね、美味しい思いをするのは、退職代行でもあるブラック企業と、辞めた先のブラック企業でもあるんだ。」
議員は頷いた。たしかに、辞めたい気持ちは僕もブラック企業で働いたことがあるからわかるのだが、やはり、あの時、退職代行を頼まなくて正解だった。あそこは、法外な値段を突きつけて、さらにドツボにハマるというもので、円満退職には至らず、かえって本人が任意同行されるという、皮肉なことになるのだ。それで、その退職代行なのだが、中にはとんでもないブラック企業の事業所もあるみたいなので、やはり安易には使わないほうがいいのかも知れない。
「それなので、より一層、若者はどうしたらいいのかを考える必要があります。」
「そうだな。」
僕は、会議が終わると、ため息をついた。そんなに窮屈な世の中になったのかと僕は思う。そして、誰かが犠牲になって、それで誰かが、その犠牲で美味しい思いをするという、歴史の繰り返しに終止符を打ちたいものだ。
また、お会いしましょう!




