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魔女と哲人王子  作者: フジリナ


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死の国のかげ

フジリナです。

今回のお話は、子どもたちを救うお話です。死の国での冒険はどうなるのでしょうか。

 2025年7月16日夜

 僕は、ロッジを抜け出して、ヨランダとともにセントラルパークを散歩した。やはり、祖母の故郷の日本よりも、アメリカは夜は危ないので、かならず二人以上で歩くことを推奨されるのだ。やはり、夜とあってか、父親のかつての職業である保安官を思い出すように、パトカーの音が鳴り響いていたのだ。

「またさ、厄介な事件が起きているんじゃないの?」と僕。保安官だった頃、父はしょっちゅう、麻薬中毒者の取締りや、飲酒運転や、アメリカ特有のイキっている奴らを、取締をしていたのだ。

「アメリカは自由の国だから、何をやってもいいんだぁ!!俺様が法律だ!!」と、アメリカ特有のイキっている奴らは、「自分=王様」と勘違いして、犯罪行為を平気でやる迷惑な奴らが多いから、父はめちゃくちゃ苦労したそうだ。

 やはり、自己主張が強いお国柄故か、それとも、極端なイキリ方か。どっちともあり得る。

「ヨランダ。またパトカーが鳴っているね。」と僕はヨランダに声を掛ける。

「あなたのお父さん、よっぽど苦労したわね。で、カリフォルニアは、どうなのかしら?」

「ロサンゼルスは、いっときはめちゃくちゃ治安が悪かったけれど、だいぶマシになってきた。けれど、麻薬とか、飲酒運転とか、イキってる奴ら、いるよ。ニューヨークとはまるで大違い。田舎のほうが、閉鎖的で、知ってる人しかいないから、ああいう高揚感は、大陸ゆえにできるんだよ。」僕は、保安官だった頃の父親の話から、こう打ち明ける。あまりに多すぎるイキってる奴ら。どうしてこうなった、と僕は言いたいぐらいだ。

「ニューヨークでもさ、殺人事件とか、あとは銃撃とか平気であるから、ママが、あまり夜は外出してはダメと言ってたわよ。」

「そうだろうね。高校生の時でも、僕は母親に言われたんだ。」

 セントラルパークの林になっているところへと向かうと、池には、おびただしいほどの子どもの靴が落ちていたのだ。

「え…?」

 子どもの靴が落ちている。日本では、何を意味するかと言うと、「神隠し」や「行方不明」を意味するのだ。子どもが行方不明になるというのは、天狗にさらわれて、行方知らずになり、「神隠し」になることを言うのだ。

「ロバート、日本ではなんていうの、この現象…。」ヨランダは恐怖に慄いた。

「…神隠しっていうんだよ。おそらく、ここで、何らかの事件が起きたのだろう。」と僕。これまでの経験から、やはり、子どもが何者かによって殺害されたのか、それとも、なにかしらの理由で、いたずらをけしかけた妖精の仕業なのか。アメリカには確か、妖精の伝承はない。妖精となると、イギリスから来た魔女か、魔法使いが連れてきたに違いない。

 僕は、その調査を開始し始めた。何かあるに違いない。すると、地面には古代ギリシャ語で、何かが書かれていた。

 僕は、政治家の祖父にタルムードや原典版の聖書の購読をさせられたので、古代ギリシャ語はたいていはわかるのだ。

 地面にはこう書かれていた。


 子どもたちは、死の国へと連れて行った。

 そう、僕が欲しがっていた生贄のために。

 返してほしければ、ズブズブの無酸素の中でも

 池の中の死の国へと入るんだな。

 お前が死んでも知らないぞ。


 ハデス


「ハデスの仕業だったのか!」僕は憤った。「くそう、無垢でなんの罪のない子どもたちを、犠牲にするなんて!」

 あまりに身勝手な、神の傲慢だ。傲慢な神は、あまりに残酷で、罪なき人々を、生贄にしたがるものだ。生贄は、たいてい子どもや女性が選ばれるわけだから、より一層残酷性が増すのだ。

「…ヨランダ、その子達の靴から、近くの学校や幼稚園と、親御さんに連絡しておくれ。」

 僕は、小学校教師という彼女の役割を活かして、幼稚園や学校などに連絡するように伝えたのだ。

「わかったわ。…もしもし?はい、ニューヨーク、マンハッタン第一エレメンタリースクールのパークスと申しますが。ええ。セントラルパークの池に、子どもたちの靴とかが散乱してて、行方不明になっていて。え??親御さんから、行方不明届が出ているんですって?わかったわ。あの、近くに友人がいますので、探しに行くと言ってました。…」

 僕が慌てていると、盟主さまとレディ・クラリスがやってきた。

「盟主さま!おばあちゃん!」

「ロバート。彼らは、死の国へと生贄にされるために、連れて行かれたんだ。わたしが、死の国へのゲートを開けるので、待っていなさい。」

 盟主さまは、術を使って、池に死の国へのゲートを開けていった。

「あと、コレをお使いなさい。」とレディ・クラリスは、僕に素潜りに使う口枷を渡したのだ。この磯笛は、闇と水が混じった魔法の世界でも、肺への負担が軽減できるのだ。

「うん。」

 僕は、口枷を咥えて、死の国へと入っていった。

 死の国は、酸素が十分に行き渡らない深海のような世界で、死の妖精や死神が襲いかかってくるところだった。

 だが、口枷があるため、普段は出せないような魔法が出せる。

「水の中で、火が吹けるのか!」と僕。

 そして、子どもたちが死の国のパレスに閉じ込められているのを見て、一人ずつだが、救出することにしたのだ。

 その反面、呼吸をするために水面から這い上がることはある。

「ぷふぁあ!!」

 哺乳類への進化は、かつて太古の昔はお魚だったのが、両生類となって水面から這い上がり、やがて鳥類になるか、哺乳類になるというのを、本か何かで知ったことがあるのだ。

「人間って、やだな」

 こういうときに限って、海育ちなのに泳ぐのが苦手で金槌な僕が、駆り出されるのだ。

「ダイバーを呼べよぉ!」と僕。

「ダイバーはあなたしかいないわ。」とレディ・クラリス。

 そして、最後の一人を救出したところで、子どもたちの親が、子どもの帰りを待ちわびたかのように、抱きしめていたのだ!

「パパ、ママ!」

 僕は子どもたちを救うことができたのだ。

フジリナです。お話はどうでしたか?

では、また明日お会いしましょう。それでは。ツイッターにも載せておきますので、よろしくお願いします。

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