精神的な迷宮
フジリナです。
精神的な迷宮というのは、反発していた青年でもあるロバートは、やがて試練に苛まれていきます。
では、お楽しみください。
2025年8月23日
僕は、フリーメイソンを退会して、盟主様の庇護から離れて、そのうえで、植物園で働くことにしたのだ。
「盟主さま。もう、あなたの精神的な虐待にはもう懲り懲りです。あなたは、僕のことをわかっちゃいない。」
「落ち着きなさい、ロバート。私は、お前を育てるつもりだったのだ。」
盟主さまは、支配的な口調で迫ってきた。
「あんたは、僕の気持ちなんかわかってない!もう、あんたとは会いたくない!オレは、自立して、働きながら、小説家になってやるんだから!」
僕は荷造りをして、スーツケースを持って出ていったのだ。
ニューヨークの、ブルックリン植物園に就職できた僕は、個々の世界中の、植物たちと触れ合うことにしたのだ。シダ植物、そしてヤシの木や、南国の花である、ハイビスカスや食虫植物のハナヒゲウツボなどの植物と触れ合っていたのだ。
温室では、傷ついた僕の心を癒やすように、蝶々たちが飛び交い、僕にも寄ってきたのだ。
「君、どうしたの?」と蝶々に話しかける僕。蝶々は、翅を開いたり閉じたりして、返事をしたかのようだったのだ。
「ふふ」
僕は、そんな蝶々を見て、「おかえり」と言って、自由に羽ばたかせた。植物園の園長は、そんな内省的で、人見知りの激しい僕を見て、
「水やりをしてくれるのはありがたいよ。おかげで、とても植物園がきれいで、きっちりと管理されて、整った印象だと、お客様から大好評だよ。」
にこやかにそう言っていた。そんな僕の優しさと、気持ちを尊重してくれる植物園の園長。いままでの、パワハラの波と、そして僕を利用して自分たちの都合のいいように扱う、邪悪なエリートの大人はいない。
「後で、面談をしてもらおう。」と植物園の園長は言ってくれた。
…
「つらかっただろう。」と、ベンチの隣に座る植物園の園長。ベンチに座っている僕は、少し涙ぐんでいたのだ。
「どうしたんだ、全く人に言いづらいのだろう。大丈夫、ゆっくりでいいから。」と植物園の園長。
「それはね、僕は、フリーメイソンの構成員でしたが、それが、僕にだけ、試練と称した精神的な虐待を受けていたんだ。僕の素質を使って、世界を支配しろと言い出してきて。僕をなんだと思っているんだ。本当に…」
僕はぐすっと涙を流しながら、園長に打ち明けたのだ。
「…本当に、よく我慢したんだね、ロバートくん。」と園長は僕の頭を撫でたのだ。
「普通に過ごしていただけで、うっ…うっ…。普通の日々を過ごしていたかっただけなのに、陰謀に巻き込まれるなんて」
「大丈夫だよ、ロバートくん」
…
僕は、次の日も植物に霧吹きを当てて水やりなどの仕事をしていると、フリーメイソンの会員の二人の男が、やってきた。
「…王子殿下。お待ちしておりました。」
「オレは、ただ単に普通になりたいだけだ。なんで、押し付けてくるんだよ!」と僕は怒鳴りつけて、二人の男を脅してきた。
「あなたは、王子なのです。我ら兄弟の共同体にとって、必要不可欠な後継者なのです。」
「なのに、なんで僕なんだ!僕はただの、アジア系アメリカ人の男なんだ!…お前らなんかに、話す用はない!」
「いい加減、自覚を持ちなさい、王子!」
僕は、植物園中を逃げ回った。なんで、盟主のお気に入りと言うだけで、王子扱いされて、特別扱いされて、世の中から隔離されて、幽閉された。それぐらいしか、もうそういう感覚しかないのだ。
「王子殿下は、自覚が足りぬ。盟主閣下の後継者で、哲人王、すなわち千年に一度しか顕現して、降臨する真理の魔法使いの候補だというのに。」と会員の一人。
「ええ、本人は、なぜ真理の光を放ち、その知性を活かせるというのに。世界を支配して、王として顕現できる権利があると言うのに。」ともう一人の会員。
「なぜなのやら。哲人王子の自覚が足りぬものだ。ハハ。」
僕は、そんな大人たちから嘲笑されるたびに、利用されているだけだったのか、ただ大人の道具として祭り上げられていたんだなと思っていたのだ。
すると、迷宮の中に迷い込み、ブルックリンの植物園で働いている僕がいる世界は、やはり…僕の精神的な世界、無意識での願望だったのだ。盟主さまは、そういうことを知っている前提での…。試練を仕掛けていたのだ。
「ロバートよ。お前の願望は普通に過ごすことだった。」と盟主さま。
迷宮の世界はいつしか、反転した摩天楼の世界へと変化した。
「普通に過ごすことは、変わりはないんだ!何が言いたいんだ、クソ盟主!」と強がる僕。
「では、質問をしよう。―――おまえは、その知性を用いて、何をして世界に捧げたいのだ?」と盟主さま。
「――――小説を書いて、みんなを喜ばせるためだ!」僕は心から叫んだ。
「その小説を書きたいという、内なる動機が、秘密の扉に閉ざされているようだ。それを聞きたいのだ。」と盟主さま。
「なんで、そういうことを聞くんだ!オレはただ…。」
と僕は言うと、奈落の底へと落ちていった…。
「哲人王となるには、まだ早いようだ。…今日の試練はここまで。さあ、目を覚ましなさい。」
僕は目を覚まして、鏡を見ていたら、涙を流していたのだった…。
いかがでしたか?
では、またお会いしましょう。




