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魔女と哲人王子  作者: フジリナ


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母校に忍び込む

フジリナです。

ロバートの子供時代の記憶です。子供時代のロバートは、イエローのスクールバスには乗らずに、彼は政治家の祖父の影響で、運転手付きの黒塗りの車に乗っていました。本来ならば、私立に通わせるべきだったのでしょうが、家の教育の影響で、公立の小学校・中学校・高校に通っていたのです。

2025年8月13日

 僕は、カリフォルニア、サンフランシスコに里帰りした。ツイン・ピークスの大きな屋敷に帰ると、メイドや執事たち、家族が出迎えてくれたが、それどころじゃなかったのだ。僕は、あのサンフランシスコ第一エレメンタリースクールにて、学校の子供達の怪談となっているのを、調査するために、わざわざそこに向かったのだ。「子どもたちが怖がっていたからな。」

 僕は、資産家で政治家の祖父を持っていながらも、公立の小学校に通い、様々な境遇の子どもたちと、触れ合ったのだ。僕の小学校からの幼馴染に、ミスティとアンディがいるのだ。ミスティは、小学校では、しっかり者で、常に成績優秀の女子。たるんでいる男子の仕切りたガールだ。で、アンディは、メジャーリーガー志望(現在はメジャーリーグのチームの運営事務局で働いている)だった、やんちゃな野球少年だった男で、ミスティに怒られながらも、宿題をこなしたり、あとはオレとともに悪巧みしたりして、小学生だった頃は、随分悪巧みしたものだ。

 サンフランシスコ第一エレメンタリースクールへ。もちろん、祖父の秘書さんの助力で、夜中に学校に行くのを許可してもらえたのだ。

「秘書さんのおかげだぞ。アンディ、コレ以上やらかすんじゃね―ぞ」と釘を刺す僕。

「わかってるよ、ボビー。こんなところなれているんだぞ。」といつものように調子に乗るアンディ。

「何よ!散々高校生の頃、お父さんお母さんと先生に怒られたくせに!」とバシッとたたくミスティ。

 その噂のもととなっているのは、5年1組の教室なのだ。教室にはバカでかい女性の人形があって、教師のような出で立ちだったのだ。

「おばあちゃん!?」と僕。「おばあちゃん、こんにちは。」

「おばあちゃんって、あの、ミセス・クラリスだよな?」とアンディ。「ガキの頃に遊びに来たんだけど、ミセス・クラリスはうんと美しくて、しかも、うんと優しい感じのお姉様だったな…。」

 赤くなるアンディ。おい、レディ・クラリスは結婚してるんだぞ。

「アンディ!!」しびれを切らしたミスティは、背中を叩く。

「ごめん…。」

 その大きな人形というのは、やはりレディ・クラリスの面影はあったものの、どこか恐ろしげな出で立ちだったのだ。

「おばあちゃん…ではなさそうだな。」と僕。「帰ったら、後で電話するぞ。」

 僕達三人は、恐怖の学校から脱出することにしたのだ。廊下を出ると、やはり夜の学校で、先生たちはとっくに退勤しているのか、真っ暗闇に包まれていたのだ。

「日本の怪談を紹介する本でさ、なんだっけ―――音楽家の肖像画がニヤニヤ笑うとか。チェシャー猫みたいにさ、笑うんだよ。で、トイレに花子さんがいたりして。」とアンディ。どこでこういう情報を得たんだ、アンディ。

「何よ、こんな情報なんか知るわけないでしょ。おばけなんかいないわよ。夜中の学校では、いかに先生たちが居残って対応してるかさ、わかんないの!?」

「まあまあ、ミスティ。」

 すると、不気味な音楽とともに、僕達に襲いかかってくる!!

「逃げるぞ!!」と僕。大の大人が、学校に忍び込むなんて、たとえ卒業生であっても、普通に考えたら、住居外建築物侵入罪だ。

「おいおい、ミセス・クラリスはあんなんだったのかよ!?」

「知らねーぞ、アンディ!散々クリス先生(1年生からの担任の先生)から怒られてばっかりのくせに!」

「どうしてなのよ!!あんた、怒られても知らないし、つかまってもしらないわよ!」とミスティ。

「ミスティ、落ち着きなって!」

 そして、僕はミスティを落ち着かせた。

「アンディ、アンタのこと世話焼いてるんだから」と泣きながら言うミスティ。

「ごめんよ、ミスティ」


 座って逃げていった先は、カフェテリアだった。カフェテリアでは、ミスティが野菜を食べて食堂のおばちゃんから褒められたのに、アンディはチーズバーガーばっかりてんこもりにして、めちゃくちゃ先生にも、食堂のおばちゃんから、「好き嫌いしない!」って叱られてたっけ。

 でも、皮肉なことに、褒められることが多いミスティは、いまは研修医だが、めちゃくちゃストレスフルで、怒られっぱなしだったアンディは、うんと自己肯定感が高めなのだ。

「アンディ。研修医でね。」とミスティは泣きそうになるのだが、

「もし、おれが具合悪くなったら、オレの体調見てくれよな…。」とミスティの肩にそっと触れる。

「…アンタ、意外とイケメンじゃない、アンディ」

 それで、

「ボビー。ここにも、エネミーいそうだわ。」とミスティ。

「また来てる!!」と僕。「もうさ、ここから出よう!あのさ、間に合わない!これねえ、わかったんだよ。先生から聞いたら、『不審者撃退用警戒装置』だったみたいで、子どもがうっかり忍び込んできたら、追い出すようにできるシステムを込めた、ロボットみたいだ!」

「なんで大掛かりなのを作るんだよ!?どっかのヒーロー漫画じゃねーんだから!!」とアンディ。

 全くそのとおりだ。アメリカのコミックという、表面的なデカさにとらわれるものほど、大衆向けすぎるものはない。それを、シリコンバレーが作るわけない。どうせ、アメリカンアーミーだろう。

「やばいな、これは逃げないとダメっぽい」

 そして、学校から脱出すると、イエローのスクールバスの迷路になっていたのだ…。

「スクールバスがあんなんなるとは思わなかったぞ!」とアンディ。

「ちっくしょおおおお!!なんでだよ、スクールバスはおもちゃのミニカーじゃないから!」と僕。ホラーゲームとかで、車のバリケードで、迷路になっているのは見たことがあるが、あれが小学校だったら、子どもたちが乗れないじゃないか。

「なんだこれは!!子どもたちどうするんだよ!」と僕。

 気がつくと、僕達は迷路から抜け出せたのだ。

「はあっ…。なんとか生き残れたぞ。で、あのロボットなんだったんだ…!?」と僕。「きっとさ、あまりに夜中に忍び込む子どもたちがいるから、その対策で先生たちが急きょアメリカンアーミーに頼んだのかな…。」

 サンフランシスコ第一エレメンタリースクールはよっぽど、悪ガキが多いんだろうな。

いかがでしたか?

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