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魔女と哲人王子  作者: フジリナ


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豚と胡椒

フジリナです。

このお話は、『不思議の国のアリス』の第6章である『豚と胡椒』が元ネタになっています。それで、イギリスの夏の、古城の庭の風景とかを思い浮かべてみてください。その様子を、頭の中で想像してみたら、癒やされると思います。コッツウォルズは、あの『ハリー・ポッター』の世界のモチーフになった建物群で有名です。ホグズミードかもしれませんが。

2025年8月2日

 僕は、アメリカから、レディ・クラリスのイングランドにあるお城に向かった。その際に、お城の中から、がっしゃんがらがらという音がしてきて、何があったんだと思ったのだ。8月になっても、イングランドはとても涼しくて、カリフォルニアの乾燥した夏、日本の猛暑とはぜんぜん違うのだ。

 僕はおそるおそる、お城の扉を開けて、開けたリビングに向かうと、そこは胡椒が漂っていて、目が痒くなるのと、くしゃみを何度もするぐらいだったのだ。

「これは、胡椒の入れ過ぎだよ!」僕はそう言わざるを得なくて、くしゃみをするどころか、目までも痒くなってしまったのだ…。

「目が痒い…。」

 僕の前には、あまりに胡椒をふっかけられているのか、レディ・クラリスは時折くしゃみをして、しかめっ面をしていたのだ。あの、アリスの公爵夫人のようだったのだ。レディ・クラリスは、男の子の赤ちゃんを抱っこしていて、赤ちゃんは、ぎゃああああああと大泣きしていて、時折くしゃみをしながら、くしゃみと泣いているのを繰り返していて、何に泣いているのかもわからなくなっていたのだ。

(絶対、赤ちゃんは胡椒で泣いてるんだろうな。)

 僕は呆れながら、見つめていた。

 アンティークなソファーで、赤ちゃんをあやしているレディ・クラリスの後ろで、レディ・クラリスの姉の、エリザベス1世と、メアリ1世が言い争いをしていて、様々な調理器具――――火箸やソースパン(小型のラーメン鍋)、泡だて器やまな板など―――が雨あられで飛んでいたのだ。

「お姉様、なんてことをしたのよ!こんな新教徒いじめをしてきて!最低な女だわ!」とエリザベス1世。

「あなたこそ、なんてことをしてきたのよ!!最低でしかないわ!!」とメアリ1世。「わたくしはただ、フェリペ様のおそばにいたかっただけなのよ!この恥知らず!」

 雨あられで調理器具で、大喧嘩をしているようでは、どうしようもないので、僕は原因を探ることにしたのだ。

「さあて〜!娘たちのために、新大陸料理を作るぞ!!」と意気揚々と宣言するのは、恰幅が良くて、巨体の、大男がいたのだ。中世の装いで、なにやら鍋にトマトとか、胡椒、そしてじゃがいもが詰め込まれていた。そして、ビーツとか、にんじんが追加される。

「これ、トマトとじゃがいもが、アンデスの方で取れるから、新大陸料理と言うけど…。ただの胡椒がたくっさん入っている、ボルシチじゃないか!」と僕はツッコミ。「ボルシチ作って、何がしたいんだ??」

 何かが煮詰まる匂いがしたので、キッチンから離れることに。

 レディ・クラリスは、あまりに胡椒の中にいたので、テイッシュの詰め物をして、目はほぼ痒くなって充血しているため、嫌そうに僕に赤ちゃんをぽーんと渡した。

「ねえ、おばあちゃん、眼科行こうよ。あとは耳鼻咽喉科か。」

 普通なら傷害罪で、病院に行ったほうがいいレベルだ。

「これは、耳鼻咽喉科よ、ロバート」レディ・クラリスは、NHS(イギリスの医療サービスで、日本で言う国立病院機構)の医師として意見する。

「一旦、病院行こう、おばあちゃん」

 そして、赤ちゃんを抱っこして外に連れ出す。外は曇り空で、マウンテンパーカーを羽織らないといけないぐらい、すこし肌寒い。バラが植わってあって、石造りのバードパスがあるのと、森が広がる庭の向こうと、蝶々が飛んでいるお庭なのだ。

 その赤ちゃんだが、うんとバタバタしてて落ち着きがないのだ。

「ちょっと!落ち着いてよっ、赤たん!」と僕。赤ちゃんをどうにか大人しくさせるため、少しねじって、両腕を回らせて、ちょっとかわいそうだけど、押さえつけたのだ。

「おばあちゃん…。もしかして、身寄りのない赤ちゃんを、一時的に預けているんじゃないの?それで、なんだけれど――」

 僕がそう言うと、ぶうぶうと豚の鳴き声がしてきた。え?豚なの、この子。豚さんがもともとの姿だったりして。

「おまえがもし、豚なら、正直に答えろよ。素直に言え!」と僕は吠えるが、赤ちゃんはぶう!と鳴いた。泣いたのなら、普通なら涙があるはずだ。のぞいてみたら、涙はない。やはり…。

 人間の鼻と言うよりかは、豚の鼻で、くりっとした小さなお目々だ。やはり、どう見ても見間違えようがないや、やはりどこから見ても豚だった。

 豚と言えども、レディ・クラリスの領地の中にある養豚農家のおじさんの育てている豚さんだったのだ。この豚は、コッツウォルズの農家さんで育てられていている子豚なのだろう。

「あとで、おじさんに豚さんを返してもらうわ。かわいそうだけど」僕はそう言うと、少し離れたコッツウォルズの、森の中にある集落にいる、養豚農家のおじさんに、豚さんを返した。

「豚さん、バイバイ」

 僕はそう言うと、自転車で帰ったのだ。

フジリナです。

いかがでしたか?このお話を、読んでみて、少しでも楽しんでいただけるとありがたいです。

では、また。

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