税金
昔々、水が豊富で緑あふれる国がありました。人々は自由に水を使い、作物を育て、平和に暮らしていました。ある日、王様は隣の国へ遊びに行きました。
隣の国はたくさんの道路や橋がありとても便利で人々も賑わっていました。どうして君の国はこんなに豊かなんだい?王様は隣の国の王様に尋ねました。「国民から少しだけ税金をもらうのさ、そのお金で国を豊かにするんだ」
王様は国にかえり早速「水使用税」を導入しました。「資源を使いすぎないように適切な負担が必要だ」と誇らしげに語りました。次に「土地保有税」を課し、「誰かが広い土地を独り占めしないようにしないと」と胸を張りました。
「このお金で道路や橋を作って国をもっと豊かにしよう」
道路や橋ができてとても便利になりました。
もっとたくさん道路と橋が必要だと感じた王様は「農業収穫税」を追加しました。「豊作は国の繁栄、だから少し分けてもらおう」と笑顔で述べました。続いて「食料消費税」「井戸維持税」など、次々と税を課しました。
人々は働いても働いても納税に追われ、苦しみました。作物を育てる農民たちは倒れ、商人たちは店を閉じ、街は静まり返っていました。
やがて、王様はひとりぼっちになりました。税収で溢れていたはずの金庫は空っぽになり、誰も税を払う人がいなくなり街には、誰も使わない道路と橋が寂しく残っていました。王様はため息をつきながらつぶやきました。
「たくさんの税を集めたのに、どうして私の国はこんなに寂しいのだろう?」
その時、王様は初めて気づきました。国を豊かにするのは税金ではなく、生き生きと暮らす人々だったことに。