表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/55

第51話 不自然

第二章も残すところあと8万字。

 

「夕刻、関所に施されていた「結界」が突如破られた」


 想定外の威力の魔術により関所に施していた結界が壁と共に消滅。直後の遠距離集中攻撃によって防備に付いていた兵や設備が瞬時に壊滅。砂埃が周囲を覆う中、敵兵が雪崩れ込んできた。


「完全な不意打ちでな、真っ先に入り込んだ足の速い部隊に魔術師が狙われた」


 その部隊の殲滅に兵を向かわせた直後に進入してきた主力の波を防げずに押しきられたそうだ。


「で、今後はどうするんだ?」

「基本的には防衛に徹する」


 想定を遥かに超えるような事態にはエンリケが決めるそうで、条件によっては敵陣に攻め入ることもあり得ると。


 現状は進入してきた敵兵の内、約千八百を俺が討ち取り、気絶していた二百程度を国軍が捕縛しており捕虜として隔離される。


 対してこちらの被害は関所に配備されていた兵百二十一人。上級・中級魔術師二十五人と護衛していた兵六十三人の合わせて二百九人が戦死。重軽傷者はその倍いる。

 ただ幸いなことに敵に連れ去られた者はいないので「捕虜」の引き渡しはかなり先になると。


「全体の一割近い魔術師をやられた」

「不味いのか?」

「ああ」


 剣と魔法の世界では遠距離攻撃が出来る兵は魔術師か弓兵のみ。特に「複数の敵」を標的にしうる能力をもつ中級以上の魔術師は貴重な存在。なので真っ先に狙われる。

 それは相手にも言えることでどこの国でも作戦の定石としており、機動性特化型の部隊を編成している。


「能力の有無はどうやって見分けているんだ?」


「探知魔法、ですね」


 代わりにルーシアが答える。


「その通り」


 なのでこちらも専門の別動隊が相手方の魔術師を探したが、


「片手の指程度しかいなかった」


 大将を討てればよし、討てなくても魔術師を減らせれば上々とでも思っていたのだろう。


「二十五人のために二千を当てる。所謂使い捨てか」

「兵も気の毒ですね」

「そうでもない」

「「?」」


 アラナート王国とパルミラル王国は戦争とは無縁と言える程の平和な国だが他国は違う。

 特に大陸中部から北側は常に戦乱が起きており、食うか食われるかの状態が続いている。


「殆どの国は侵略後の「略奪」を容認している」


 略奪の対象は物だけではないとエンリケは言う。

 その発言に対してルーシアがあからさまな嫌悪感を示す。


「敵国の人口は?」


 使い捨てを容認できるほどの国民がいると?


「アラナート王国の約二倍」

「で兵の数は三倍?」

「アラナート王国とは条件が違う」


 軍人を増やせば労働者が減ると生産力は落ち市場は縮小、必然的に税収は減ってゆく。だが侵略の脅威に備えるには軍事費は削れない。仕方なくインフラ整備などに回す予定だった予算を削ることに。

 こうして負のスパイラルに陥る。この程度は誰でも想像がつく。

 これはアラナート王国とパルミラル王国以外ではよく見られる光景。


 一方、アラナート王国も軍事予算を毎年増やしている点は同じ。

 だがウチは地理的に一面だけを守れば事足りるし、国自ら魔鉱石の売買で外貨を荒稼ぎしており、国内の経済に与える影響はほぼ皆無。逆に余剰分の利益を国内の経済や教育、福祉に充てているし、軍への投資(個々給金だけでなく地力の底上げや装備品の向上)にも使っている。


 そして最大の違いは服役制度。アラナート王国では(他国では当たり前の)徴兵制ではなく志願制を採用している。

 この違いで一番困るのは忠誠度。忠誠度によって勝敗が決まる場面が多々ある。

 それを補う簡単な手段として「略奪」を容認している。

 さらにもう一つ。


「向こうは徴兵制のメリットを生かし我が国の数倍、魔術師を確保している」


 入隊の条件をクリアした物は漏れなく適性検査を受ける。その際に魔術への適性が判明する。これが徴兵制のメリット。


「その不利を我々は「質」で補っていたのだが」


 一人減るだけでも戦力ダウンに繋がる。


「騎士団に応援を頼んでは?」


 アイツらは総じて魔法が使える。


「我ら国軍は「外敵から国を守る」のが役目。だが騎士団はそうではない。彼らには最後の砦として控えて貰わねばならぬ」


 国軍が突破された場合の保険として温存しておくべきだと。


「それに騎士団が動けば民が動揺する。動揺は王家への不信感に繋がる」

「成程」


 この忠誠心は大したもんだ。エンリケは先々代の王にかなりの恩義を受けたのかもしれないな。


「そう言えば開戦の口実は?」

「アラナート王が不誠実だと」

「……は?」


「真に受けるな。単なる被害妄想だ」


 と言うと大きくため息を吐いてから妄想と断じた理由を語ってくれた。


「……逆恨み、ですね」

「為政者としては落第だな」


 帝国を脅威と感じているなら素直に頭を下げて協力を願い出れば、エルアノーム(アイツ)なら快く…………いや()()()()()()()が情けなさすぎてアイツなら話も聞かないよな、って実際に話を蹴っているし。

 逆にエステリーナならコロっと騙されていたかもしれない。


「で相手にしていなかったんだが、最近強力な魔術師を手に入れたらしくてな」


 後がない状況でゲームチェンジャーとなる駒が手に入った。だから侵攻を決意したと。

 ただそのゲームチェンジャーの存在は友好国であるパルミラル王国から伝えられており、さらに「こちらで対処をするので相手にしないように」と言われていたので静観していたそうだ。


「ウチもただ指を咥えていたわけではない」


 いずれ訪れるであろう帝国の脅威に備えて、


「切り札を用意した」

「切り札?」

「ああ。まだ床に伏す前の陛下の指示で開発していたものでな」


 とその武器を見せてくれた。


「これは……火縄銃(種子島)?」

「知っているのか?」

「似たような物なら一度」


 堺の商人が売り込みに来ていたのを遠巻きに覗き見した。

 そう、似たような物なら見たことがあるが各所が微妙に違う。


「どう使うんだ?」

「おい」

「は!」


 一人の兵が歩み出て説明と試射をして見せる。


「ほう。火薬ではなく雷属性の魔鉱石を使って鉄の弾を打ち出すと?」


 パシュと小さな音がしただけで反動もなくとても静か。


「火薬とは?」


 逆に質問された。

「ボイラー」はあるのに火薬は存在しない?

 まあ魔法があるからこそ、思考がその発想に傾かないだけかも。


「火を点けると爆発する粉だ」


 確か木炭と硫黄ともう一つ……忘れた。


「そうか。機会があったら軍の技術者と会ってくれ」

「一向に構わんぞ」


 国のためになるなら。ただしシルヴィアと話せるようになってからだが。


「でコレはまだ五百()と数が少なくてな」


 なので余程の事態にならない限りは秘匿しておきたいと。

 因みに数が揃っていないのは銃身の加工と耐久性、さらに「燃費の向上」に手間取り開発に時間を要したのと、生産を始めた所、剣と同じく一つ一つを手作りしているせいか精度にバラツキが生じてしまい数を揃えるのに難儀しているとのこと。

 その辺りの解決手段はシルヴィアに聞こう。


「これはエステリーナ(姫様)には話さんでくれ」


 教えていないらしい。

 理由を聞くと「貴殿と同じ」と言われた。

 一瞬「何のこと?」と思い首を傾げたところ「『俺が斬る』と言っていたそうだな」と城突入時の会話を持ち出された。それを聞いて「ああなるほど」と納得しつつ「案外お喋りだな」とエステリーナの評価を()()()()する。


「ただな、コレとて万能ではない」


 欠点があると? 

 火縄銃の弾とは違って貫通力は高そうだが、厚みのある装甲や防御魔法でなら防げそうな印象。

 ただ火縄銃のように「弾込め」「撃った後の清掃」の行程の内、時間を要する清掃はいらない。

 要は使い方次第で評価が変わると思うが。


「いやそちらではない。単に速度の問題。この程度の速さなら苦なく叩き落とせる」


 そっちか。

 確かに「今の俺」なら後方からでも余裕で避ける自信がある。


「では暫くは敵の出方待ち?」

「そうだ」


 大凡の状況を把握した。

 ここで疑問が一つ。


「……何故このタイミングを選んだんだ?」

「魔族から旦那様を遠避けようとしているのでは?」


俺の呟きにルーシアが反応。


「ダンジョンに入れないのにか?」

「では魔族ではなくダンジョンから遠ざけようと」


「わざわざ自分の位置を教えてまで?」

「それも不自然ですね。我々にとっては好都合ですか」


 俺がザームごと奴を切り捨てる道を選ぶかもしれない。奴ならその米粒程の可能性も当然考慮に入れている筈。


 違和感、というより妙な胸騒ぎがしてくる。


 ……リナは大丈夫だろうか。


 これだけ離れていたら、いざという時は駆けつけられない。だがこの機会を見逃すわけにもいかない。


 ……兎も角、今は奴に集中しないと。よし!


「では俺は俺の役割を果たそう」

「「?」」

「エンリケ、敵陣に忍び込む隙はあるか?」

「単独でか?」


 頷こうとしたところ「私も参ります」とルーシアに割り込まれた。


「ところで今更だがそちらのお嬢さんは?」

「シーラ様専属のメイドをしておりますルーシアです」

「ほう。ならば婚姻は済ませたのだな?」


 やはり知っていたか。

 まああの会見の場にいたのだ。知っていてもおかしくはない。


「では山水殿が敵の魔術師を?」

「ああ、任せてくれ」


 力強く頷いてみせる。


「……山水、いや婿殿。一つ条件を吞んでくれ」

「何を?」

「必ず五体満足で戻れ」

「そのつもりだが」

「そうではない。今この場で神に誓え。それくらいの意気込みを示せ」

「なぜ?」


「姫や陛下が悲しむ姿は見るに忍びない」


 そういうことか。


「ではシルヴィア(神の巫女)に誓おう。必ず生きて戻ると」


「しかと聞いた。では案内を付ける」


 と俺を見ながら頷いたのでこちらも頷く。

 そして一呼吸間を置くと、いきなり「男同士のハグ」をしてきた。


「姫と陛下、そしてこの国の全ての民の安寧を貴殿に託す」


年季の籠った低音の声。


「……任せろ」


 妙な胸騒ぎを拭えぬまま返事をし、その場を後にした。





 尚、俺は奴との決着がついた後にこの言葉を「英雄エンリケの最後の言葉」としてエステリーナやエルアノーム、それと彼の愛する妻や二人の子に伝えることになる。





 因みにエステリーナの実力ですがパルミラル王国に着くまでは「上の下」です(雷系のみ/アラナート王国基準)←これでシーラの実力の程が分かるかと。




 再発した3時間/日の睡眠障害からやっと復帰!千円程度の「ある物」を試したら嘘のように改善した!

 早く人間になりたい!……ではなく第三章のスローライフに移りたい!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ