第47話 内緒話5
「起承転結」の内、次話までが「承」となり、その後は「転」に移行。以後、二章終了までの大半がバトル的な展開となります。
それと第二章終了までは主人公である山水君の視点で話が進みます。なので山水君の認知外で起きた事象に関しては(構成上、どうしても必要と感じた時を除き)省いております。
「魔法では……ない?」
「はい」
突然言われても、と二人で顔を見合わす。
「この世界の住人は皆、大なり小なり魔力があるので誤解しがちですが」
「なら俺も(いずれは)使えるように?」
魔力は不要なんだよな?
「山水様の(ジョブ)レベルは?」
「カンストしている」
「そう……ですか」
返答を聞き悩むシーラ。
「法則を理解されたらご納得いただけるのでは?」
そこに橋を渡り終えたルーシアが割り込む。
この世界でのスキルはレベルアップした際に自動的に習得するものと、レベルアップの際に「特定の条件」を満たすものの二通り。
前者はジョブ特有のスキルであり同職であれば誰でもが覚えられる。
後者は「特定の条件」を満たした状態でレベルアップすれば、通常なら入手できないスキルが手に入る。
その「決まり事」ならカンストした時点で新たなスキルは習得はできない。その程度は知っている。
それとも俺の知らない法則が? スキルと魔力に関連性がと?
「…………」
ルーシアの助言に対して反応しないシーラ。
ルーシアは「一般的な常識」を踏まえて助言してきたと思うがシーラへの助言にはなっていない。
何故かと言えばシルヴィアというチートな存在が俺に付いているのを知っているから。それを知っているからこその迷い。
「もしかしたら……でも魔力の無い山水様では無理なのでは。いやでもあのお方が関わっているのなら」
ブツブツと呟きだす。
あの方、という単語で俺の想像は当たっていたと確信する。なのでどういう結果に至るのか、期待しながら待つ。
「すいません。やはり断言はできません」
俺のためを思って断言しなかったのでは? と思える返答。
だがその気遣いは全く不要。この世界へは魔法への未練は一切断ち切ってきた。
それより魔力がないと身体強化が出来ないという方が気になる。
「色々と矛盾してないか?」
スキルの源は精神力で魔力は関係ない筈。その証拠として魔力のない俺でもスキルは使いこなせている。
……身体強化に限ってのこと?
「矛盾してません!」
フンフンと声を荒げて憤慨している。
そ、そうなの?
まあ俺の物理攻撃に関するステータスなら、身体強化を施したエステリーナよりも高い。なので現時点で必要性は感じられない。
「という訳でこれから講習会を開きます」
「講習会?」
「お連れの騎士の方々にもお声を掛けてあります」
「猶予もありませんのでこの後、直ぐにでも」
どうやら俺の返事待ちだったらしく、準備は整っているようだ。
今のやり取りで機嫌を損ねた訳ではないと一安心。
「俺、は?」
魔法は使えないが?
「山水様も是非参加を……あっ! で、でも……」
「?」
何だ?
「いえ、講習が終わる夕方まで、王都観光をされては?」
え? 追い出すの? それに観光と言われてもどこに行けば良いのか分からんよ。
「では案内をつけましょう。ルーシア」
「このルーシアに万事、お任せを」
見ずに言うとシーラに一礼をしながら答える。
その時、横を向いてお辞儀をしたからか「この人は着痩せするタイプ」と気付いてしまう。
「御要望には可能な限りお応えするように」
「心得ております」
「ではよしなに」
何か気になることでもあるのか、どこか元気のないミランダとその場で別れ、護衛四人が待つ談話室に移動する。
その際「講習会が終わる夕方まで戻りません」とシーラに告げられる。
「ここでやらないのか?」
「ダンジョンで行います」
王都内で魔法を「ぶっ放す」には制限が多すぎるので、周りに気にせずに行える「ダンジョン」にて実戦形式で行うらしい。なので談話室に付いたらすぐに皆の装備一式を【収納】から取り出すが直後「着替えますので」と部屋から追い出された。
ルーシアに連れられ一旦食堂に移動。着替えを終えるまで一服することに。
二十分ほどで「準備が整いました」と大使館付きのメイドさんが知らせてくれたので二人で玄関へ向かう。
外で待つこと数分。エステリーナと護衛の四人とシーラが騎乗しながら現れる。
見れば五人全員、騎士団の鎧と茶色いマント。シーラは上下一体型の長衣から上下に分かれた濃い灰色の作法衣に似た服を着ていた。
「怪我だけはしないように」
エステリーナやシーラが居るのだから怪我を負う可能性は低いとはいえゼロではない。
「今日は魔力の向上が目的です。なのでダンジョン入り口付近で済ませます」
「魔族は?」
第二階位の存在も不安材料の一つ。
「魔族が出没するエリアは深層の特定の場所。そこにさえ近寄らなければ襲ってきません」
微笑みながらシーラが答える、って!
「お、おい危ないぞ!」
シーラが跨っている馬は何と紅蓮だった。
「山水様、大丈夫ですよ」
サリーを連れたミランダが玄関の扉から姿を現す。
「その子はシーラを拒みません」
然様ですか、と紅蓮を見ると……フンを鼻を鳴らしてミランダから目を背けた。
「では山水、行ってくる」
「気をつけてな。皆を頼むぞ」
折角の休みが訓練になったからか、はたまた第三階位と戦う羽目になったからか、姫達とは対照的に意気消沈していた四人。
そんな一行を見送ると今度は厩務員が二頭の馬を連れてくる。
「お? お前らか」
ブルン! ×2
いつもは馬車を引いてくれる帝王達だが、鞍一式を付けているところを見るに乗せてくれるらしい。
「いいのか?」
フン! ×2
「では参りましょう」
長いスカートなんて何のその。見事なフォームで馬に跨るメイドさん。俺も負けじと乗ると。
「そういえばマリアンヌは?」
「副宰相様は今日一日は王城に居られるかと」
等と雑談しながら王都の長閑な風景を眺めていた所、エステリーナとシーラの気配が突然消えた。
なので最後にいたであろう場所を「読む」とエルフの警備兵? が守る木製の重圧な扉を護衛の四人が入るところであった。
「一つ聞いていいか?」
「はい、どうぞ」
扉の特徴を伝える。
「それはダンジョンの入口ですね」
ダンジョンに入ると気配が探れない?
「気配……ですか? 私には」
分からない、と謝られた。その代わりにとこの国のダンジョンの仕組みと、シーラがダンジョンに入る理由を教えてくれた。
この国のダンジョンは先日教えられた通り、多くの精霊によって結界が維持されており、その中心となっているのはルーナで、スタンピードが起きないよう自身も定期的にダンジョンに入っては間引くなど、ごく最近まで精力的に動いてくれていた。
「ルーナが間引く?」
「ルーナ様は特別でして」
シーラ並みの魔法を行使出来るそうだ。
だがごく最近、正確には二十年程前のある日、パルミラル王城で起きた事件を境にダンジョン内の様相が一変。
大精霊であるルーナも巻き込まれてダンジョンの特定の場所に封じ込まれてしまったらしい。
「封じ込まれた? 誰に」
「…………」
答えたくないらしい。
「では質問を変えよう。シーラが目指す場所はルーナがいる場所だよな?」
「はい。その場所で行く手を阻んでいるのが第二階位の魔族なのです」
成程。取り敢えず納得。
「ならその魔族を討伐すれば封印が?」
「魔族はルーナ様が封じられている「モノ」が期限を迎えるまで見守っているだけです」
「期限? 見守る?」
「はい。なので魔族を殺しても封印は解けません」
「封印の役目は?」
「ルーナ様の力を封じるのが目的です」
ダンジョン全体を覆う結界の大半はルーナの力によるもの。そのルーナの力が封じられてからかなりの期間が過ぎており、そろそろ限界がきているそうだ。
「どうしたら封印を解けるんだ?」
「封印を施した、その者の命を絶てば」
「その者とは俺の宿敵、だよな?」
小さく頷く。
それで俺に行動を促してきたのか。
「なら俺が目的を果たせば?」
「そうなのですが……それではシーラ様のお命が」
「はい?」
どうしてここでシーラの名が? と思っていたところルーシアの雰囲気が変わり真剣な面持ちとなる。
「実は姫殿下の御身は呪いに蝕まれておりまして」
また呪いか!
「どんな呪いなんだ?」
「……運命を共にする、死の呪い。あのお方が死ぬとシーラ様も道連れになる呪いです」
ん?
「あのお方? 雷明ではないのか?」
「はい、あのお方とはシーラ様の兄であられるザーム様です」
「ザーム? 確か兄は死んだと?」
「まだ死んではおりません」
んん?
「もしや雷明とザームは連んでいるのか?」
「はい」
「……では隙を見て雷明だけを討てば」
「そうはいきません」
「何故?」
俺なら出来ると思うが?
「ザーム様のお身体は雷明に乗っ取られ、今や一心同体。雷明のみを滅するのは不可能かと」
「……マジか」
それで繋がった。人族の姿でない者が奴の気配をしていたこと、そして一瞬で姿を消したことが。
それとミランダの様子がおかしかったことも。
「ではルーナを見捨てたら?」
「ダンジョンを覆う結界が崩壊。特異点より内側にいる、ルーナ様でも手に負えない大量の魔獣がこの国だけでなく大陸中に解き放されてしまいます」
数が多い? 確かに物量で迫られたら俺でも捌ききれない。
だがここでアイツの言葉が引っ掛かる。
<ルーナ様を殺して>
今の説明とは矛盾する願い。
だいぶ事情が分かってきたが、まだ俺の知らない何かがあるのだろうか?
投稿前のチェックに疲れた(T . T)
第二章の結末がほぼ決まった。なのでストーリーを進めたいので講習の中身は第三章に先延ばし。




