表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

第44話 謎の称号

 前話で「特異点」と記載しましたが「極点」のことではありません。(現代で例えるならレッドライン)

 詳しくは第三章で説明しますが、ダンジョン内のある地点から奥を指します。

 チュンチュンチュン。


「……もう朝か」


 小鳥の囀りで目を覚ます。


 胸元に重みと温もりを感じたので目を向けると芸術と呼ぶに相応しいシーラの寝顔が。


 ……こんなにも容易く()()()()()()とは。


 ヤームの言った通りだった。こうなるとヤームの言葉の真実味が増してくる。


 ……しかしどんな事情を抱えているのやら。


 この子はまだ二十歳そこそこ。人族なら独り立ちしている年齢だが、長寿のエルフとしてはまだ成人になり立ての若人といえる。

 他種族ゆえ、価値観も違うのだから自分に相応しい相手をじっくり選んでも、と思うのだが……特別な事情があるのだろう。


 ……でもな、こんな姿を見せられたら聞き難いわな。


 あどけなさが残る寝顔。安心しきっているのか、無防備な裸体を俺に預けながら寝る姿を見て、疑念よりも庇護欲が刺激される。

 気付けば美しい白い髪の頭を優しく撫でていた。




 昨日パルミラル王国の王族一行(と言っても王・妃・シーラの三人)とエルフ族の重鎮が揃って大使館に来られた。

 出迎えたその場でヤームに言った「婚姻の条件」をシーラ本人に確かめたところ、笑顔で『幾久しく変わらぬ愛を』と日本風の礼節に沿った挨拶で返された。


 どこでその挨拶の仕方を知ったのか?


 ルーナに対して疑念が益々深まるが、相反するようにシーラに親しみの情が湧いてくる。


 その後は大使館の裏庭にて簡素ながらも「エルフ様式」に沿った婚姻の儀とパーティーがミランダ主導で執り行われた。


 そこで定番の誓いの口付け。


 エステリーナが見ていることもあり、後ろめたさを感じつつも口付けを行うと……驚くことにその場で心が()()()()()()()()のだ。


 繋がった。条件を満たした。つまりどこに居ようが距離や障害物に関係無く、シーラの気配を読める状態になった。

 これはエステリーナと同じ土俵に上がったことを意味する。


 そしてもう一つの事実。


 ……真意は兎も角、俺に対して()()()()()()()を持っている。それを()()()()()()()()()


 特別好意を抱くようなイベントは起きていない。ならば別の要因。

 思い当たる節は一つだけ。だが今は調べようがない。

 宴も(たけなわ)に入った頃、さり気なく近寄ってきたヤームが『約束の品だよ』と皆には分からないように【エルフの秘宝】が入った小箱を手渡してきたが、今は鑑定役とコミュニケーションが取れない。なので用途を聞いたところ『後で巫女様に聞いて』とニヤケ顔ではぐらかされる。


 巫女様、つまりシルヴィアに聞けと。

 どんな効果があるか分からない物など使う気が起きない。

 ヤームが見ている目の前でその場で【収納】に放り込むと彼は満足そうに笑みをこぼした。


 そしてパーティが終わるとパルミラル王国一行はシーラと「付き人」の二人を残し早々に引き上げた。


 結局、意図せず三人目の妻を娶ることになった。

 家格的にはエルアノーム(国王)>シーラ(継承権第一位の王女)>エステリーナ(侯爵)となり、平民出の俺からしたら雲の上の存在ばかり。

 とはいえエステリーナとの約束もあるし、俺的にも誰か一人を特別扱いする気は無い。とはいえ全員立場ある者達ばかり。


 そこで一番の年長者であり、最も気心の知れたエステリーナが「諸々の調整」を買って出てくれた。

 で早速俺の意向を汲んでか? 俺の知らぬ間にエステリーナとシーラの密談? が行われたらしく、気付いた時には離れの客室にシーラ共々押し込まれていた。


 そして予定調和のように今に至る。




 ここで日課の「気配」を探るが反応なし。


 因みにマリアンヌとエステリーナの二人だが、昨晩だけサリーらがいる従者用の個室で休んだ。


「……ん、おはよう……ございます?」


 撫でられているのに気が付いたのか、目を開けた先には俺の顔が。

 暫しの間、焦点の合わない瞳で俺を見た後、微睡(まどろみ)から解放されたらしく、白い肌を真っ赤にさせ両手で顔を覆ってしまう。


「ああ、おはよう」

「さ、え? も、申し訳ございません!」

「ん? 何が?」

「何分にも初めてなもので、お見苦しい姿をお見せしてしまい」


 昨晩のことかな?


「シーラ」

「は、はい?」

「初めは皆同じ」

「そう……なのですか?」


 指の間からタンポポ色をした金色の瞳が俺を覗き見ている。


「ああ、次第に慣れると思う、というかその辺りはリナに聞いてくれ。それより昨日も言ったが言葉遣い」


 身内となるのだから、様付けだけでなく口調を改めてくれと昨晩お願いしておいた。


「で、でも」

「直ぐにとは言わない。追々で構わないから慣れてくれ」

「……はい」

「で身体はどうだ?」

「え、どうって? ……えーーとあれ? なんだか腰が」


 この辺りは人族もエルフ族も変わらないようだ。


「もう少し横になっていた方がいい」


 そう言ってからベットを降りる。

 シーラにとって昨晩は人生に一回限りの記念すべき初夜。事前にサリーの忠告、さらにエステリーナから女性の扱い方を聞き入れ、ダンジョンに潜る理由や俺に掛けた術、さらには「気」を操ったり「内緒話」が出来る件は触れずに()()()()


「ど、何処へ?」

「日課の素振りをしてくる。ついでにルーシアに声を掛けておくから」


 ルーシアならシーラの体調に応じて回復魔法を掛けてくれるだろう。


 ルーシアとは若草色の髪の六十六歳(人族で言えば二十代前半)のエルフでセシリア風の美人さん。

 彼女はシーラ専属のメイド兼教師として幼少期から教育や作法、さらには身の回りのお世話をしてきた。

 今後も専属の立場を変える気はないらしく輿入れの際にもシーラと共にアラナート王国に行くのだと自ら志願しついてきた。


 その意気込みはこちらとしても有り難かった。

 シーラ一人をアラナート王国に連れて行けば心細い思いをさせてしまうかもしれない。受け入れると決めた以上、悲しい思いはさせたくはない。

なので快く受け入れた。


 そのルーシアだが(気配によれば)昨晩から離れに続く本邸の通路の前で「寝ずの番」をしている。今でもソワソワしているようなので、早めにシーラと会わせて安心させてあげたい。


 廊下に出て本邸へ。長い通路を抜けた先では白い長衣を着たルーシアが待っていた。


「おはよう」

「あ、おはようございます。姫様……シーラ様は?」

「先程起きた。まだベットの中にいる」


「そうですか。それで……シーラ様は……その……無事に……お役目を?」


 不安そうに聞いてくる。

 なので一言だけ。


「ああ」


 大きくゆっくりと頷いてみせる。


「そうですか、それは……良かった」


 安堵した様子。


「後は任せてもいいか?」


 後、とは部屋の片付けを言っているのではない。ハウスキーピングに関してはミランダの管轄。


「勿論です、お任せを!」


 意味が通じたらしく、()()()()()()()を頼むと頼もしい返事が。

 客室に小走りで向かう後ろ姿を見送ってからサリーが待つ裏庭へ。


 一心不乱に素振りをしているサリーを見て昨日の会話を思い出す。



 ◇


『ルーナ様』


『何故ルーナを?』


『……言ったら師匠は必ず固辞し他の道を模索する。それでは()()()()()()()の願いは叶わない。だから言えない』


 正直、ルーナには良い印象は微塵も無い。神を名乗る資格すらないと思うほどに。

 その理由はアラナート王国やエステリーナやエルアノームへの仕打ち。


 どうしてあの二人に「先を見通す能力」を使わなかったのか?

 忠告でもしてくれていれば苦しまずに済んだかもしれない。


 ただルーナも精霊であり神ではない。神でない以上、万能ではない。

 そしてこの世界の精霊は各々の判断で、各々が出来る範囲で人々に恵みを与えている。

 なので生み出すだけで人に力は貸さない神よりかはマシなのかもしれないが、もし知っていて黙っていたのなら斬るのに躊躇はしない。


 ……もしかしたらサリーも同じ理由なのかも。


 エステリーナの幸福を第一に考えているサリーにはルーナの行為は許せるものでは無いだろう。


 そこに現れたのが俺。

 長いとは言えない期間、俺の性格を見極めた上で出した嘆願(結論)


 その俺の性格から、理由を教えれば固辞、つまり拒否される可能性が高いので言いたく無いと。


 俺も喜んで協力したいところだが……この提案の真意が読めない。そこを解消しとかないと後々後悔しそうな気がする。


『つまり理由も知らずに消せと?』


『知らない方がいい』


 言えない、ではなく知らない方がいいと。


『…………一つ教えてくれ』


『?』


『誰の得になる? ルーナを斬って』


 仮にも神と崇められる精霊を消すのだ。それに見合った「結果」が欲しい。


『一番は師匠』


 即答。

 俺? 何故()()()()


『……受ける、その前にもう一つ』

『?』

『そもそも俺に精霊を斬れるのか?』


 そこが肝心なところ。


『実体が無い存在の精霊には干渉する(すべ)はない。ないが師匠の腕と刀ならやれる』


 ふーーむ。まあなんとかなるか。



「分かった」



 ()()()()()()()()()()()



 ◇


「おはよう」

「うす」


 黙々と素振りをしていたサリーに声を掛けると手を止めずに返事をした。


「よし、昨日の続きをするか」

「ちょっと待った」

「どうした?」


「今朝起きたら新しいスキルに目覚めた」

「へーー、でどんな?」

「分からない、というか見たことのない文字? で読めない」

「読めない? 共通語ではないのか?」

「そう、こんな文字」


 と木刀を使って地面に書いていく。


「……天魔伏滅」

「てんまふくめつ? どんな意味?」


「天は神、魔は多分だが悪魔。その両方を滅するという意味だ」


「んーーよく分からん」


「サリー」


「?」


「お前、今のジョブは?」


「ジョブ? えーーとジョブは変わらないが【称号】が付いてる。 えーと称号名は【半蔵】と。はんぞう?」


 半蔵? どこかで聞いた名…………名だよな? て忍びで唯一、名が知られていたあの伊賀の人か⁈


 うーん、まっいっか。次回はシーラ先生による「魔法講座編」です。

 魔法のプロフェッショナルが知識だけでなく、個々の魔力の底上げも行う予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ