第4話 騎士と愛馬(1)
久しぶりの新規投稿なので上手く操作出来ない(T ^ T)
「火を消すのに適したスキルはないか?」
〈【破岩斬】は如何でしょう?】
「……まあいいか」
技名を聞いて効果が浮かぶ。
周辺に人は住んではいなさそうだし多少地形が変わっても誰も困らないか。
〈では目を閉じて私をお呼び下さい〉
言われた通りにする。
すると先程までいた【虚無の間】に意識だけ? 戻ったようで、正面には微笑? を浮かべたシルヴィアがいた。
「では儀式を始めます」
目を瞑る。すると今回は額ではなく右頬に温かい感触が。
「……終わりました」
「なあ、これをしないとスキルを覚え」
「はい」
途中で力強く遮られる。しかもなぜだか不機嫌そうな? 顔で。
気のせいだろと思いつつ、礼を言ってからもう一度目を瞑り現実世界へ。
手に入れたスキルを早速使うため、柄に手をやり地面を抉るイメージで横に刀を振り抜く。
すると高密度に圧縮された空気? が、刀の軌道にそって地面に到達。轟音とともに爆散し、津波さながら大量の土砂が全てを薙ぎ倒してゆく。
……大穴が開いちまった。
全てを消火してから騎士の下へ。
先程からピクリとも動かない騎士。
気を失っているからだろうか、(気配によれば)感情の起伏が見られない。
「おい、大丈夫か?」
肩を揺すりながら声を掛ける。
見れば先程看取った騎士のよりも数段豪華な鎧を身に着けている。
──この鎧……何か違和感が……
〈いくつか付与がなされていますね〉
「付与? 魔法が?」
〈はい。対物理防御、対魔法防御、ブレス無効、その他諸々〉
どうりで鎧は綺麗なんだ。中身も同じなら良いんだが。
「しかしその他諸々って。もしかして説明するのが面倒くさい程の数が?」
〈いえ、諸々に関しては山水様には無縁な情報なので〉
まあいいか。
〈それでその騎士ですが身に付けているアイテムの効果により、傷は癒されつつあります〉
「なら放置しても?」
〈現在、発動している効果は中級程度の【治癒】のみで完治までにはかなりの時間を要すかと〉
「目を覚ますのはいつ頃になる?」
〈約12時間後。目を覚しさえすれば、口から回復薬の接種が可能となり、取り敢えずは動けるようになりますが、仮に放置した場合、自力で飲めるようになるにはさらに半日を要します。それまでこの状態で放置するのは色々危険かと〉
「取り敢えずとはどの程度?」
〈尊厳が守れる程度、です〉
シルヴィアの言いたいことは直ぐに分かった。
放置なら約24時間。とてもではないがもたないだろう。
まあその程度の世話なら戦場では日常茶飯事で、俺からしてみれば些細なこと。
これも何かの「縁」だと思うし情報も得たい。恩を売ることにもなるし一石二鳥と考えよう。
よって自力で動けるようになるまでは付き合うことにする。ただし世話を易くするため鎧は外しておこう。
「だがな……」
ここには回復薬どころか水や食料すらない。
さらに食用となりそうな肉は逃げ出しているし、採れるのは山菜や木の実くらいだろう。ただそれらも生で食べるには勇気がいる。
そして何をするにも「飲める水」の確保は必須。世話をするにも水はいるのだ。
「先ずは場所を移そう」
先程よりも範囲を狭めて気配を探る。
この「気配を探る」の良いところは「自分を中心としたかなりの広範囲」が見れる点。
ほぼ全ての「動物の存在」を感じとれるので索敵にはとても便利。
但し欠点もあり、動物以外は探れないし、距離があればある程「ボヤけて」しまう。
早速、割と近い場所に馬と思しき動物の気配が3つ。それ以外は魔獣どころか小動物すらいなかった。
動かずにいる3つの気配に意識を集中させ情報を読み取る。すると馬の姿だけがくっきり見えてきた。
──騎馬、だな。
見えたのは「白と黒の世界」で黒い世界に馬のシルエットが3つ、白く浮き上がって見えている。
内1頭は立派な装具や体格から大事に扱われてきた騎馬と、残りの2頭は荷馬ではないかと。
──この騎士達の馬なのかもな。
移動をするため騎士を起こすと兜がポロリと外れ、中から金色の長い髪が現れた。
「……な、女か?」
鎧の中は二十代半ばと思しき目鼻立ちの整った気位の高そうな女だった。
「まいったな」
困っているのは「名を覚ました後の心配」で俺の善意が相手に伝わるかどうかの心配。
受け手の心情次第で「貴様!」と暴れたり、羞恥心から「くっ、殺せ」と自暴自虐になるかもしれない。
それでは情報を聞き出すという目的が達せれない。
迷ったら決断は先送りにする。
落ちていた剣を騎士の鞘に納め、脱げた兜を被せてから背負う。そこそこの重量を覚悟したが、予想に反して軽かった。
なので大した疲れも感じず目的地に辿り着く。
すると早速馬の嘶く声が聞こえてくる。
──こちらにもいるのか。
こちらの存在を知った上で、自分の存在を知らせて相手の出方をさぐる。これが出来るのは脚に自信がある馬の証。
俺が姿を見せると二頭は真横を向いたまま。残りの一頭である騎馬はこちらを向いて待っていた。
──こっちに興味津々。ってことは……
背中の騎士を見せる。すると警戒しながら寄って来た。コイツはかなり期待できる。
ある程度の距離まで来たところで止まる。そこがこの馬にとってのレッドライン。
その決まりを尊重さその場で騎士が見えるように向きを変えて馬に聞く。
「これはお前のご主人様かな?」
ブルブル!
鼻を鳴らしながら数度顔を振って即答する。
この馬はかなりの「当たり」だ。
「なら様子を見ていてくれ」
そう言ってから地面に寝かせて離れる。すると入れ替わりで鼻を鳴らしながら騎士に近づき匂いを嗅ぎだした。
その間にそばに止めてあった「幌馬車」に向かい、中を覗く。
「長期戦を覚悟していた?」
剣や弓といった予備の武具、食料や調理器具に医薬品。さらには野営装備がまるまる残されていた。
「……飲み水の残量だけが少ないな。ということは」
水は必需品。だが重量がある上にかさばるし日持ちもしないと難儀な荷物。なので補給の手段がある場合は現地調達を基本とし、多量には持ち歩かないのが鉄則。
これらのことからこの遠征隊は近くに川なり湧き水があるのを承知でこの地に来ている。
「シルヴィア」
〈ここの環境から付近に川が流れていると思われます〉
「飲める水?」
〈多分〉
「では今夜はそこで野営をしよう」
残りの二頭を呼ぶと来てくれた。この二頭に引かせるため、器具を馬と連結させる。
それから騎士を抱えて御者台に上がり、横にしてから残った騎馬を呼ぶ。
「水場は分かるよな? そこまで案内してくれ」
ヒヒーン!
竜とは違い話が通じたらしく先頭をきって歩き出した。
この騎馬は準主役級のキャラで名前もあります。以後色んな場面で活躍してくれる予定です。
本日の投稿はここまで。続きは明日以降、一話ずつ。